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お嬢様は追放されました!  作者: 大天使ミコエル


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104/109

104 食べられてしまうかと思いましたわ

 食事を終え、棟梁の演説を聞いた後、女性たちは村へと戻る。

 男たちの邪魔をしてはいけない、なんて言いながら。


 アセリアも例外ではなく、ハルムが仕事で呼ばれ、橋の方へ行ってしまったところでスックと立ち上がり、女性たちの陰に隠れた。

 そして、自分の家ではなく、女性の陰に隠れたまま、村の方へと戻って行った。


 道すがら、アセリアは自分の両手を見て、自分の手がそこについていることを確かめた。

 ……ありますわね。


「どうしたの?アセリアちゃん」


 ドキッとする。

 手は下へ下ろす。

 どこにも触れないように。大事なものを抱えるみたいに。


「手、手が、食べられてしまったんじゃないかと思いましたの」

 言いながらも、顔の熱が上がっていくのを感じる。


 思い出す。

 ハルムと食事をしたことを。

 サンドイッチを口へ運ぶ度、腕にハルムの手が触れて。手の甲にハルムの手が触れた。

 そして口元にその手を寄せて、持っていたサンドイッチにかぶりついたのだ。

 かぶりつく度に、指が口元に触れそうになって。


 そして。


 そして、ハルムはアセリアの指には触れないように、慎重にサンドイッチを食べた。


 かぶりついてくるくせに。


 そして最後に、ハルムは試すような瞳を、こちらへ向けたのだ。


 なんで……。

 なんであんな…………。


 手を覗き込んだのはミラだった。

 相変わらず猫みたいなニヤリ顔で、

「ちゃんとついてるよ〜」

 なんて言ってくる。


「そのようですわね」


「ごめんね、アセリアちゃん」

 そう言ったのはウィンリーだ。

「『あーん』して食べさせなきゃいけないなんて、嘘なの」


「……え?」

 アセリアが、まじまじとウィンリーの顔を見つめる。

「嘘ですの?」


「そう。みんな調子を合わせてくれてただけ。あれは、仲がいい恋人とか夫婦がすることだから」


 それを聞いたアセリアの顔が、みるみる赤くなっていく。


「そうですの?」


 それはそうだと思う。

 あんなこと、そうそう出来るものではない。

 例えば、ただの知り合いのバルドとか。いや、ウィンリーが相手でも微妙な気持ちのなる気がする。

 じゃあ、ハルムはどうだっただろう。


 いいえ。

 ハルムはもともと家族のようなものですもの。嫌な気分などそうそう出るものではありませんわ。実際、冗談とはいえ、ウィンリーだって父親にやっていたじゃありませんの。


「その話、内緒にしていただけませんこと?」


 思いの外小さな声になったその言葉は、それでもウィンリー、ミラ、ベラの耳に届いた。


 ちょっと笑いながら、ウィンリーが言う。

「いいよ。じゃあ、あたしたち、明日も乗ってあげる」


 そんな風に女性たちは、翌日もサンドイッチ作りの約束をした。

 アセリアはまたあれをするのかと、もう一度、手がついていることを確かめた。

しばらくサンドイッチ作りは続きそうですね。

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