102 サンドイッチをいただきましょう(1)
「これで燻しは最後です」
「丸太が右だな?」
「はい!お願いします」
橋の作業をする中で、川のせせらぎに混じって、遠くからざわめきが聞こえた。
女性たちの話し声だ。
何事かと男たちが顔を上げる。
それは、ハルムも例外ではなかった。
村の方からやって来るのは、確かに女性たちだった。
アセリアがいる。
それに、村の見知った女性たち。
穏やかに談笑しているところを見ると、緊急性は認められない。
それぞれが手にバスケットを持っている。
食事か?
その答えは、すぐに判明した。
ウィンリーが手を振って、
「ご飯よー!」
なんて言ったおかげだ。
それにしたってどうしてこんな大勢で。
そう思いつつも、ソワソワしてしまうのは、アセリアまでもが参加しているからで。
誰のだよ、なんて思う。
俺の、だよな。
俺ので、あってくれ。
空を仰ぎ、息を吸う。
「ハルム」
視線を下げ、そこにいたのはアセリアだった。
安心と同時に、心臓が高鳴る。
いや、そりゃそうだろ。
俺は、こいつの執事なんだから。
「お嬢様。珍しいですね、こんなところまで」
「ええ。お昼を持ってまいりましたわ」
「私の、ですか」
思わず、確認してしまう。
「ええ、もちろん」
その怪訝な顔は、俺しかありえないと言っているようで。
腕の中に、閉じ込めてしまいたくなる。
そして、そこここで食事が始まった。
地面に座り、少人数ごとにバスケットを囲む。
俺の前にはアセリアがいる。
どこも、大抵は二人組。
親子もいるが、ほとんどは恋人同士や夫婦で、そのことも少なからず俺を興奮させた。
「開けますね」
「……ええ」
少し心配そうな顔。
バスケットの上にかかっていた白い布をめくると、中にあったのはサンドイッチ、パン、それに深い器に入っているジャムだった。
そして、サンドイッチは具がなさそうなものや具がはみ出しているものが並んでいた。
これは……どう見たって……。
「ふっ」
嬉しくなって、笑ってしまう。
これはどう見ても、アセリアの手作りだ。
「な、笑わないでくださいませ」
そういわれることで、サンドイッチの作り手が確定する。
「お嬢様が作ってくださったんですね」
「ええ、みんなで作りましたの」
「美味しそうですね。嬉しいです」
そう。実際に、ハルムはこれ以上ないほど喜んでいた。
アセリアが、食事を作る相手が、自分であることを噛みしめる。
そして、
「いただきます」
と手を伸ばした瞬間、近くに居たウィンリーが、
「違う違う!」
と遮ってきた。
「こうするのよ」
と、自分の前にいる自分の父親の口に、ウィンリーはサンドイッチを食べさせてあげた。
いや、そんなわけ……。
なんて思うが、実際、周りのみんなまで、
「そうだそうだ」
なんて実演してみせるものなのだから、アセリアが本気にするじゃないか。
「そうなんですの!?」
もうこれは続くしかない。




