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お嬢様は追放されました!  作者: 大天使ミコエル


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100/105

100 ただの事故ってやつですわ!

 アセリアとハルムの家に怪我人が運び込まれてきたのは、その日の午前中のことだった。


「アセリアちゃん!」

 と小さな女の子が言うものだから、ちょっと真剣になってしまったけれど、家に入って来たのはなんて事はない、少し足首を切っただけのバルドだった。

「いやぁ、ちょっと泥で滑ってさ。滑った先に丸太があったもんだから、スパっとね」

「情けない話ですわね」

 と言いながら、村長の家から持って来た救急箱を開け、椅子に座らせたバルドの足元にしゃがんだ。


 橋造りの現場から近いのは仕方がない。

 それのおかげで、床が泥で擦れてしまった。

 ハルムががっかりすることだろう。


 細い布をぐるぐると巻いていく。

 ……要領を得ませんわね。


 どちらも黙ったままの、静かな部屋。

 窓の外に立っている木から、小鳥の鳴き声が聞きるばかりだ。


 アセリアが何度撒き直しても、バルドはただ、それを見守った。

 10回ほど巻き直したところで、なんとか落ちてくることもなく、巻けたと言っていい状態になる。


「アセリアちゃん」

 呼ばれて、ふいっと目を上げる。

 バルドは、じっとこちらを見ていた。

 瞳の中に見える何かは、見てはいけないものな気がした。


「何ですの?」

 あえて冷たく接する。

 成り行きとはいえ、二人きりだなんていい気分ではない。


「俺と、友達になってくれないかな」

「……遠慮いたしますわ」


 友達になるだけなら、なってもいいと思いますわ。

 けど、この目。

 これではとても友達なんて……。


「できましたわ」

 アセリアが、すかさず立ち上がったところだった。

「きゃっ!」

 床が泥だらけなせいで、アセリアのブーツが滑った。

 あっけなく、後ろへ転がり尻餅をついてしまう。


「大丈夫!?……痛っ」

 慌てて助けようと立ち上がったバルドだったけれど、怪我した足は思いの外痛かった。

 覆い被さるように、床付近で二人して転がる。

 ハルムを勘違いさせるには、それだけで十分だったのだ。


「お嬢様?」

 ちょうどそこで、扉を開けたのはハルムだった。


 ハルムから見たら、ちょうど、アセリアを押し倒すバルドに見えたことだろう。


 顔を青くしたハルムは、あろうことか、ツカツカと無言でバルドに近付くと、そのまま流れるようにバルドの襟首を掴み、引き上げる。

 そのまま、逆の手を振りかぶった。


「ハ、ハルム!違うんですのよ!」

 ハルムを止めようと、アセリアは慌てて手を出した。


 そのアセリアの行動に、より一層ハルムの目が見開かれた。

「まさか同意の上だとか言うなら余計に殴っておかないと……」


 アセリアは、ハルムを止めようと手を振り続けた。

「わたくしが転んだだけですの!」

「転ん……」


 右手に驚愕の顔のままのバルドをぶら下げたまま、ハルムは周りの状況をよくよく見渡した。


「何も、危ないことなどありませんでしたわ」


「あー……」

 ハルムは少し気まずそうにバルドを掴んでいた手を緩めた。

 そしてバルドに冷ややかな目を向けたあと、

「気をつけるように」

 と一言呟いたのだった。

でもそのまま殴っちゃっても良かったと思うぞ!?

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