表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お嬢様は追放されました!  作者: 大天使ミコエル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/16

10 こんな田舎娘の服を着ろっておっしゃいますの!?(2)

 ハルムは、アセリアの手を取り、真っ直ぐにアセリアを見据えた。

「残念ながら、お嬢様は、何を着ていようとも、もうルーシエンではありません」


 ふっとアセリアの目が潤む。


「わかってますわ……!けど、わたくしの大切にしていたドレスは……、象徴でもありますの。ルーシエンであるという、わたくしの誇りと人生の」


「そして私も、もうガルドルではありません」


 同じ立場でありながら、ハルムは真っ直ぐにこちらを見ていた。


「あなたは……、悲しくはありませんの?こんな……一方的に追放などと……っ」


「悲しくないわけはありません。けれど、お嬢様がここにいる限り、ここ以上の私の居場所などありませんから」


「…………」


 別に、ハルムは優しい顔をしているわけではなかった。

 いつも通りの顔。

 ここ以上はないというその言葉も、忠義からくるものではあるまい。待遇の話だ。アセリアの執事をしていた以上、他のところへ行ってもあまり高待遇は期待できないだろう。アセリア本人が、まるで犯罪者のように扱われたのだから。かといって、実家へ戻っても冷たくあしらわれるだけ。


 ハルムの顔は、そんな現実を認めた上で、それでもいつも通りの自分としてここに立っている者の顔だった。


 慰めているわけではありませんのね。

 けれど、だからこそ、本当の言葉で話しているとわかるというもの。


「あなた、タイはどうしましたの?」

「服や食べ物と交換しましたよ」

「そうですの」


 わざわざタイと交換して来たという服と食事が、アセリアの視界に入った。

 アセリアの手に、ハルムの体温が伝わってくる。




 ベッドから、キッチンが見える。

 キッチンではハルムが、村でもらって来たというスープを温めている。


「家を追い出されても、何処にいても、わたくしはわたくしでなければなりませんわね」


 何を取られても、この心だけは奪われることはない。


 ハルムが後ろを向いているのを確認し、アセリアは服に手を伸ばした。


 シャツを手に取る。

「あら?」

 スカートを手に取る。

「あらあら?」

 ひとまずスカートをはいてみる。

「あらあらあら?」


 アセリアは「ふぅ」と息を吐いた。

「困りましたわ!この服、着方がわかりませんわ!」


 あんなしんみりとした空気の後で、この服はどう着るのですかなんて聞きたくはない。出来ることなら、あなたの力でこんな姿になりましたと美しく登場したい。

 それなのに。


「こちらが前で合ってますの?それに、この紐はどうするのが正解なんですの?」


 ひとまずスカートをはいてみるか、と立ち上がったところで。

「どうかしましたか?お嬢様?」

 とハルムが部屋に入って来たものだから。


 アセリアは、下着姿で、

「きゃああああああああああああ!!」

 と悲鳴を上げるしかなかった。

「うわああああああああああああ!!」


 お互い狼狽えながらの鉢合わせは、結局、美しいとはかけ離れたものとなった。

美しくないというアセリアでしたが、ハルムとしては、

「そりゃあ、美しいかどうかで言えば、美しいと言ってもいいですよ」

とのこと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ