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8.脱獄

 ギルはダリルにロープを解いて貰った。ギルは「やめろ!!その手で触るな!!」と抵抗したが、カピカピの鼻くそが両腕と両足についただけで済んだ。どろっとしていなかったのは幸いである。

 なぜ抵抗するのかダリルは分からないようだったが、その隣では自由になったギルが神経質そうに鼻くそがついたであろう箇所をはたきまくっていた。

 続いて、ミリアム、ガゼルもロープを解いてもらった。


「ありがとな、ダリル。」

「どういたしまして。」


 ガゼルに礼を言われると、ダリルは嬉しそうに笑った。


「さぁて、あとはどうやってここの鍵を開けようかしら。」


 ミリアムは腕を組んで考え込んでいた。

 するとギルが鉄格子をゆすった。鍵がかかっていてびくともしない。

 次に鉄格子の鍵穴を覗いて、何かをポケットから出した。細長い鉄の棒だった。その先を少しいじってから鍵穴に差し込んだ。何度か動かしてから棒を引き抜くと、また先をいじり鍵穴に差し込む。その動作を何回か繰り返していた。


カチャカチャ・・カチャッ。


 鍵が開いた。


「ギル、さすが〜!!」

「お前、やるじゃないか。どこでそんな技を覚えたんだ?」


 ミリアムとガゼルに褒められたギルは、片手で髪をかきあげながら自慢げに語った。


「フッ・・俺に不可能なんてないさ。なに、夜中に意中の女の子の部屋に忍び込むために覚えたんだよ。時々鍵付きの部屋があるから、そういう時に使うんだ。まぁ、大した事はない。」


 大した事はない・・・訳がない。ミリアムから小さな悲鳴が上がり、ガゼルは驚愕の事実に耳を疑った。夜中に女の子の部屋に忍び込むために解錠の方法を覚えるって、なんだ!?鍵まで掛けたのに忍び込まれた女の子には同情するしかない。というか、もはや犯罪である。早く牢屋に入れて反省させた方が良さそうだが、ギルは涼しい顔でまだ笑っていた。果たして更生できるか・・・いいや、無理だろう。だって牢屋に入っても、鍵を開けられるから。

 ダリルは興味なさそうにまた鼻をほじって3人を見ていた。


 無事に牢屋から脱出した4人は、外に出るとエデンの塔を見上げた。遥か上空に塔の先端が見える。


「俺たち、エデンの牢屋に入れられてたのか。」


 ガゼルが空を仰ぎながら呟いた。

 エデンは雲の上まで伸びる、天族の住処となっている高い高い塔である。

 ガゼルは新緑の森から遠くに見える「異様に背の高い塔」としか認識しておらず、あまり興味を持った事がなかったし自分とは無縁だと思っていた。それがまさか、今目の前にあるなんて・・・改めて信じられない気持ちに駆られた。


 3人が塔を見上げている傍らで、ミリアムは気持ち良さそうに大きく伸びをした。


「やっと帰れるわ!」


 するとギルはミリアムを振り返り、ギロリと睨んだ。


「天使ちゃんがまだ捕まってるんだぞ!助けてやらないのか!?」


 ミリアムは驚いた顔をした。


「当たり前じゃん。何言ってんの、ギル。天族なんか放っておきなよ。私たちの敵なんだよ!」


 ギルはミリアムに言われると暫く考え込み、ダリルの方を見た。


「だがしかし・・・このまま帰ったら俺様は天使ちゃんと付き合えないじゃないか。ダリル、お前はどうだ?一緒に来るだろう。」

「僕はどっちでもいいよー。ギルが来いって言うなら行く!」


 ギルはダリルの明るい返事を聞いてニヤリと笑い、今度はガゼルを睨みつけた。


「お前はどうするんだ?」

「・・・行くよ。あいつ、ここに帰りたくなさそうだったし。」


 連れ戻したとしても、この先どうすればいいのかガゼルには分からなかった。ただ、泣いて逃げていたイオの事を想うと、エデンに居させてはいけない気がした。


「あーあ、天族のために無茶しようとするなんて、あんた達って底なしのお人好しな訳!!?付き合ってらんないわ。私は帰るから。」


 ミリアムは新緑の森の方に向かって歩き始めた。一方、ガゼル達は塔の中に忍び込む事にした。

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