表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もう一度、あなたに会えた、その時は。  作者: 野菜処理班
第一章 そんな事よりも、生きていける自信がありません……。
8/10

第一章 六話 休憩

更新ペースが遅くてすみません。今のところ失踪する予定もないので、たまに気が向いたときに読んでくれるとありがたいです。

 ところ変わって、と言っても目に映る景色は先程と全く変わらないが、メンカンを狩猟したところから少し離れた所。


「今度はあれですね」


 メンカンが大量に入った布の袋をカバンに入れたリュウが、次の獲物を見つけたようだ。

 初めは慣れない暗さに周りの景色は見え辛かったのだが、今はある程度の距離なら見えるようになり、リュウが言っている素材の存在がはっきりと認識できる。


「あいつか」


 今俺たちがいる場所から二十メートル程真っすぐに進んだところ、メンカンほどではないが、十匹程度、雀のような色と姿をした鳥がいた。

 そいつらは、リュウが森に入る前に話していた『ヤキトリ』だろう。

 

 リュウによると、ヤキトリからとれる羽毛はとても滑らかで肌触りが良く、服に使うにはもってこいの素材だそうだ。その他にも、吸汗速乾で運動にも適していて、夏には涼しく、冬は暖かいと、至れり尽くせりな性能があるらしい。更には、繁殖力がとても高く、市場では結構安く売られていたりするのだとか。まさにお値段以上の品質! 買うなら今だけ!


 などという見ていて寒いだけのセールスを一人で勝手に行っていたところに、リュウから。


「そろそろ行きますよ……」

「今度はちゃんと、武器で狩りなさいよ」

「わぁってるよ。流石に俺も学習はする」


 ホントに? と、イズハからのそんな視線をスルーしながら、俺はただひたすらリュウからの指示を待っていた。

 そして、十秒もしないうちに。


「ゴー!」


 短く、わかりやすい合図が送られてきた。


 皆それぞれ武器を構え、奥にいるカワドリの群れに突っ込んでいく。

 大した距離もないので、あっという間についてしまった。


「おりゃああ!」

  

 一番最初に着いた俺は、近くの一メートルぐらいの高さがある苔が生えた岩の上に停まっているヤキトリに攻撃を仕掛けた。

 が、


「……あれ? どこ行った?」


 力いっぱい振り下ろした薙刀からはヤキトリが当たった感触がない。

 そのおかげで、ブンッと空気を切る音だけが響いた。


「後ろに下がって! 早く!」

「え? わ、分かった!」


 背後から聞こえたイズハの声に従い、後ろに走ってその場を後にする。

 離れたところから俺がいたところを見ると、そこはもう火の海になっていた。

 もしかしたら、この火の海はあのヤキトリたちが放ったのだろう。


「な、なんじゃこりゃ……」


 このままだと、この森全体が火事になっちまう。

 なんてことを考えていると、リュウとイズハがこちらに向かって駆け寄ってきた。


「火傷はありませんか?」


 リュウの手には俺の肩を直した回復石がしっかりと握られている。


「い、いや、怪我はない。ちゃんと無事だから」

「そうですか。それならよかったです……」


 そう言って回復石を握りしめた手をさっと戻した。


「火傷しなくてよかったわね。まあ当たってたら火傷じゃあ済まないけど」

「あの、心配してくれてありがたいけど、この状況をどうにかできないか? お前、あのでっかい火の玉切ってたじゃんか」

「残念ながらできないわよ」


 まあそりゃそうだわな。


「じゃあ、どうすんだ?」

「別に何もしなくても自然と収まるのよ、この炎は」


 どういうことだ? そう言おうとしたその時。

 肌に伝わってくる炎の熱が、ピタッと止んだ。

 赤々と燃え盛っていた炎が、焦げたり灰になった草を残し、森の中へと消えていった。


「へえ、ホントだ。綺麗に消えた……」

「ヤキトリの炎は特殊でね、鉄が溶けるほどものすごく熱いけど、なぜかあまり燃焼しないの」


 当たってたら火傷じゃすまないけど、っていうのはそういうことか。


「じゃあ、もし掠りでもしたら………?」


 恐る恐る尋ねると、イズハは親指を立てながら。


「最悪、死ぬわ」


 首元でシュッと切る様に動かした。


「え、なに? 俺ここで死ぬの?」


 首筋や背中に冷や汗がだらだらと流れているのを感じる。

 そんな炎が掠りでもしたら大怪我するっていうのか。

 しかも、辺りどころが悪かったりすると、死んでしまう。

 ………こ、怖すぎる……。


 そんな俺の心情を悟ってか、イズハがフォローを入れる。

 

「下手したらっていう話よ。幸い、このヤキトリたちは体が小さいから炎も小さいわ。だからよほどの事でもない限り、そうそう当たらないはず。だからそんなにびくびくしなくても大丈夫よ」

「そ、そうですよ! 当たらなければいいんですよ! 当たらなければヤキトリなんて一コロですよ!」


 俺を気遣ってくれているのだろう、リュウもフォローしてくれている。

 

「……ほ、ホントか? 当たらなかったら死なないんだな?」

「死にません。安心してください」

「………そんなに言うのだったら」

 

 俺はリュウとイズハの言葉を信じ、ヤキトリたちを狩ることにした。








 合計十匹のヤキトリを狩り終えた俺たちは、ヤキトリを狩った場所の近くで小休憩をすることにした。

 あれからヤキトリを狩り始めたのだが、まあ、ヤキトリは生物上は鳥なわけで、相手はずーっと空を飛んでいた。おかげで、想像以上にてこずってしまい、体が重く感じ、腕が悲鳴を上げていたので、ヤキトリとの戦いで負った傷を回復するついでに、休憩しようという話になったというわけだ。


「そういえば、なぜお二人は旅をしているのですか? 魔物があふれかえっているこの世の中、旅なんて命知らずな事、普通は考えもしないのですが……」


 リュウがいつの間にか持ってきていた水筒とコップを取り出しながら、疑問に思っていたことを話し始めた。


「ああ、それは」

「シスコンの兄が愛してやまない大好きな妹を探すために旅をしてるの。ちなみに、私は付き添いね。カズヤって、ちょっと気を抜いたら死んじゃいそうだから、仕方なく一緒に旅をしてあげてるの」


 木にもたれかかったイズハが、遮るような形で、適当なことを言い出した。


「おいちょっと待て。俺はシスコンじゃないぞ。俺はただ、何の理由も言わずにいなくなったあいつを探しに来ただけだからな」


 そうだ、俺はこの世界に来ているはずの茜を探しに来ただけだ。決してシスコンなんかじゃあない。

 

「あの……妹さんってどんな方なんですか? ヤキトリやメンカンのような弱い魔物にすら怖気づくようなカズヤさんが命を懸けてまで守りたいなんて、どんな方なのか気になります」

「なあ、リュウって俺のことどんな風に見てるの?」

「一言で言うのなら………頼りない人、ですかね」

「あとおまけに異常なほど臆病ね」

「やっぱ俺ってそんな風にみられてたの⁉ ………なんとなくわかってたけど……」


 自分では自覚しているつもりだったが、改めて自分以外のやつに言われると、案外心は傷つくものだな。


「そ、それよりも、カズヤさんの妹さんのことを聞きたいです」


 そう言いながら、リュウは俺とイズハにコップに入れた温かいお茶を手渡した。

 ありがとう、と言ってコップを受け取り、口元へと運ぶ。

 リュウの家にいる時に、飲めなかったこのお茶にやっとありつけたぜ。


「そんなに気になるんだったら、別にいいけど………」

「よろしくお願いします」

「私もついでに」


 暇そうにしていたイズハも参加するようだ。

 ………あ、そういえば。


「これ、食べるか?」 


 俺はあるものをリュックから直方体の箱を取り出した。

 チョコレートである。

 実はこのチョコ、本来はイズハに異世界に連れて行ってくれるお礼として、持ってきていたもの。

 だが、今の今まですっかり忘れていて、ついさっき思い出したのだ。

 元々は俺が間食するために持ってきたものなので、スーパーで買った安いチョコなんだが、別に美味しいから問題はないだろう。


「あ、食べたいです。私、チョコ好きなので」


 そう言って、箱の中から取り出したチョコをつまみ、口の中へ放り込む。

 チョコを頬張っているリュウの顔はとても幸せそうだった。

 どうやら本当にチョコが好きらしい。


「イズハも食べるか?」

「いや、別にいいわよ」


 イズハはチョコを受け取らなかった。

 ひょっとして、チョコは苦手なのだろうか。


「これがあるから」


 イズハはエナメルバッグの中から、あの有名な三角形の形をした煎餅が入った袋を取り出した。


「チョコにお茶なんて合わないでしょ」


 当たり前のことを言いながら、リュウからもらったお茶を飲む。

 自分のがあるんだったら別にいいか。


「まあ、そうだな。それじゃ、そろそろ………」


 茜の話をするか。


 

 


 とりあえず茜の性格や、日頃どんなことをしていたのか、話しておいた。

 ついでに、俺たちがなんでこんなところに来たのかも含めて。

 ちなみに、義理の妹だということは話していない。

 別に話しておく必要はないと判断したのもあるが、実際なぜそのことを話さなかったのかは俺には分からない。

 ただ、なぜか茜のことをそう表現するのは違うと考えてしまったのだ。

 そのことはさておき、茜の話にはリュウはともかくとして、イズハが意外とこの話に食いついてきた。

 茜を探すための情報として聞いていたのならば、なんとなく理由も分かる。

 というか、これ以上考えても何も得られないから、もう考えるのはやめよう。


「……なるほど、そんなことが……」


 俺の話を最後まで聞いていた二人は、それぞれ違う反応をしていた。

 リュウは話を聞き終わるとお茶を飲み、イズハはどこか遠くを見つめているような。

 たった二人の人間だというのに、こうも反応が違うとは。

 

「でも、いったいどうして茜さんは、カズヤさんの元を離れたのでしょうか。聞いた感じだと、そのような結果になるような生活を送っていないと思うのですが………」

「俺もそこが分からないんだよ。別に喧嘩なんて一度もしたことがないからそれなりに仲は良かったとは思うんだけど………、何か別に理由があったのかな?」


 本当になぜ、あいつはこんな危ない世界に来ようなんて考えたんだろうか。

 不思議でならない。


「そんなこと、考えても分からないから探してるんでしょ」

「いやまあそうなんだけどな。でもな」

「でもじゃない。考えても分からないことは考えないっ! わかった?」

「……はいはい分かりました。考えませんよ」


 こいつに何を言っても耳にするのはおろか、耳から半径五十センチにも入れてくれないだろう。

 そんなことをしていると、リュウがあることを切り出した。


「…………あの、私にも手伝わせてくれませんか?」

「……はい?」

 

 俺は思わず聞き返していた。

 

「えーっと……和也さんの装備を作った後、ブラストに行くという話をしていましたよね」

「ああ、だから何か情報があるかもしれないから、ブラストの町に行こうと考えてたけど」

「実はブラストの町は商業で発達した国で、それで得た利益を利用し、周辺の土地を買っているんです」

「それで?」

「おかげでブラストの町は土地がかなり広いので、住んでいる人たちも山のようにいるんですよ。それに、今は年に一度だけ開かれるコレット祭が行われています。そのせいで町の外からいつも以上に人がたくさん観光や商売で訪れるので、妹さんを探すには少し骨が折れます。なので、あまり力にはなれないと思うのですが、知り合いの商業人に訊いて、茜さんを探すお手伝いをさせてほしいのです」


 言いながら、リュウは優しい手でそっと俺の手を包み込む。


「……どうする、イズハ?」


 とりあえず、イズハに確認する。

 俺自身は構わないのだが、こういうのはちゃんとイズハにも訊いておかなければと思うからだ。


「……別に構わないわよ」


 イズハは特に深く考えることもせずに答えてくれた。

 こういう簡単に受け入れてくれるところは本当にありがたい。


「んじゃそういうことで、お願いするよ。忙しいのにありがとな」

「いえ、大丈夫ですよ。用事が終わり次第、すぐにお手伝いさせていただきます!」


 そう言って、リュウは微笑みかけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ