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もう一度、あなたに会えた、その時は。  作者: 野菜処理班
第一章 そんな事よりも、生きていける自信がありません……。
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第一章 五話 素材採取

 イズハの制裁という名のアイアンクローから解放された後、リュウから集める素材について教えてもらい、早速森の中へ足を進めた。

 森に入ってすぐは、外から暖かい光が差していたが、歩き始めて五分も経たないうちに光は途絶え、辺りはどんどん薄暗くなっていった。

 まだ昼ということもあり、ある程度森の中は見られるが、もし夜にこの森に入れば遭難する自信がある。

 ただでさえ薄暗く、不気味な雰囲気が漂っているというのに、木の枝に停まっているのだろうか、小鳥の鳴き声が森の中に響き、より一層そう感じてしまう。

 そんな、まるで一昔前のお化け屋敷のような森の中を、ある者は周りを警戒しながら進み、またある者は何食わぬ顔でズンズンと進んでいく。


「……なあイズハ。いっそのこと、お前とリュウだけで素材を探してくれないか? 俺はさっさと帰りたいんだけど……」


 いつ魔物に襲われるかびくびくしている俺は、少し前を歩いているイズハに言った。

 すると、イズハは呆れた顔でくるっとこちらを向いて。

 

「あんた、自分から装備を作ってくれって頼んでおいて、よくそんなこと言えるわね」


 俺はイズハから視線をずらして。


「そうだけどさあ……。確かに俺、いったけどさあ。でもさあ、やっぱり魔物と戦うのは怖いんだってさあ」

「さあさあさあさあうるさいわね! あのね、私たちはあんたの装備を作るために仕方なく手伝ってあげてるの! しかも、私たちみたいなか弱い女の子たちだけで、ここで素材を探せって、男としてどうなの? それ以前に人としてどうなの?」


 リュウはともかく、お前はか弱いという言葉は似合わねえだろとツッコみたいが、それを言ってしまうと二次災害が降ってきそうなので、敢えて言わないでおこう。


「俺はいたって普通の人間の男だ。それ以上でもそれ以下でもない。それよりも考えてみろよ。確かにお前の言った通り、俺が装備を作りたいと言って一緒についてきてもらったわけだが、どう考えても俺は弱いだろ? 刀一本でドラゴンと渡り合うようなお前と、本来はどれくらい強いか分からんが、ドラゴンを従えるドラゴンスレイヤー。周りにこんなにすごい奴らがいるのに、俺はこの胸当てと薙刀だけ」


 俺の言葉を遮るようにイズハが言う。


「分かってるわよ、この中であんたが一番弱いってことぐらい。でもね、この世界でしばらく過ごすんだったら、ちゃんと魔物と戦えるぐらいの強さを持たなきゃダメなのよ。じゃなきゃ、いざとなった時に私がいなかったらあんた一瞬で殺されちゃうわよ」

 

 ……観念するしかないのか。

 

「……わぁったよ。んで、まだ見つかんねえのか? 素材は」


 俺はできる限り自然に話題を変えた。

 俺たち三人はいくつかの素材を探している。

 それをすべて集めきり、リュウの家へ帰って錬金術で装備を生成することにした俺たちだったが。


「ん~…、もう少ししたら見えると思うんですけど……」


 森に入ってからしばらく経つというのに、いまだに収穫はゼロ。

 本当に今日中に集めきれるのかどうか怪しくなってくる。

 それよりも、俺たちが生きて帰れるかどうか不安だ。

 どうか死にませんように——————とでも祈っておこう。

 

「……皆さん! こちらに!」


 急にどうしたかと思えば、リュウは近くの木の幹を遮蔽物にするように隠れ、周囲を警戒しながら歩いていた俺たちを手招きする。

 それに誘われるように俺とイズハをリュウの元へ駆け寄った。

 

「どうしたんだ?」


 リュウの後ろで囁いた。


「素材を見つけました。あそこです」


 リュウは辛うじて見える森の中を指差した。

 よく目を凝らして見るが、リュウが言っているそれの姿はつかめない。


「どこだ?」

「あそこよあそこ。見えないの?」

 

 俺の後ろからイズハの声が聞こえた。

 どうやらイズハの目では素材の姿をとらえられるらしい。

 それの姿形を特定を諦めた俺はイズハに訊いてみた。


「悪いが見えん。どんな奴だ?」

「なんかフワフワしたやつ」


 お前の例えがフワフワしてんじゃねえか。


「で、どうするんだ?」


 リュウに訊いた。


「合図したら突撃します。……あともうちょいです、もうちょい……」

「………突撃?」


 素材を集めるだけなのになんで突撃を。

 そう考えていたその時。

 リュウが腰に掛けていた短剣を鞘からそっと抜いた。


「今です!」


 今この場にいる三人に聞こえるぐらいの小さな、覇気がある声で合図を送り、リュウは素早い身のこなしで、一瞬で森の奥へと消えてしまった。


「え⁉ なんだ⁉ 行けばいいのか?」

「さっさと行くわよ! 早くして!」


 なぜこうなっているのか困惑していると、俺の隣をイズハが風のように通り過ぎて行った。


「わ、わかった!」


 未だにこの展開についていけてないが、イズハに言うことを聞くように、俺の足は動いていた。

 


 先に行ったリュウに追いつけるかどうか考えていると、いつの間にか現場に辿り着いていた。

 後ろを振り返ると、俺たち三人が隠れていた樹は見えないが、思ったよりも離れていないはず。

 結構速く走ってきたのにほとんど乱れていない呼吸が、そう教えてくれた。

 

「な、何やってんだ?」


 声に出さずにはいられなかった。

 目の前には小さなフワフワした何かを追いかけ、短剣で切り付けるリュウと。

 刀を振り回し、それを地面にぼとぼと叩き落しているイズハがいた。

 俺はその光景を見た瞬間、あることしか思い浮かばなかった。

 

 こいつらは何を遊んでいるのだろうか。


 俺がいることに気づいたイズハが、こちらに振り向き。


「見て分からないの? 『メンカン』よ、メンカン。早く狩らないと風に乗ってどこかへ逃げちゃうわよ!」

 

 そう言い残すと、イズハはまたメンカン狩りに戻った。

 

 —————『メンカン』

 年中温暖な地域で育つ植物。ただでさえ育つのに費用や時間がかかってしまうのに、春になると強風で風に飛ばされてしまうので、非常に管理が難しい。更には、風に流され地面に落ちると、メンカンは意思を宿し、時に人を襲うモンスターと化す。その分、メンカンはふわっふわの上質な綿を生みだし、衣類を取り扱う店や商人にはそれなりに重宝されるらしい。勿論、それで作られた服は上質で、高級品扱いされ、装備だとそれなりに良いものに仕上がるという。


 つまり、装備を作るならば少しでも良いものを採ろうということで、このメンカンを狩りに来たのだが。

 なんだか、この様子を見るに別に武器を持って戦うほど強いとは思えない。

 

「そんな風にしなくても、素手で何とかなるだろ……」


 言いながら、俺はそこらをうようよ浮いているメンカンに手を伸ばす。


「あっ! バカ!」


 イズハが呼び止めるのと同時に俺の手はピクッと止まった。

 すると、目の前にあった綿が突然、プルプルと震え始めていき。

 鋭い歯が生えそろった恐ろしい口が現れた。


「うわっ‼」

 

 本能に従い、手をバッと後ろに引く。

 すると、いきなりメンカンが真っ二つに割れ、地面にポトリと落ちた。

 イズハの方を見ると刀を鞘に収めているので、こいつに助けてもらったのだろう。

 しかし危ねえ……。もう少しで手が持っていかれるところだった……。

 思えばいつもこいつに助けてもらってるな。

 いつかは助け返してやりたいもんだ。


「バカね! さっきの話を聞いてなかったの?」

「いや、聞いてたけど……まさかここまでとは……」


 てっきり襲ってくるというのは、体をぶつけてくるだとかそんなもんだと思っていたんだが、まさか急にあんな恐ろしい化け物の口が現れるとは……。

 袋の中に大量のメンカンを詰めたリュウが俺に向かって走ってきた。


「いったい何があったんですか⁉」

「別に大丈夫よ。この頭のおかしいヘタレ男が勝手にメンカンに手を出そうとしただけよ」

「そ、そうだったんですか……。驚いて損しました」

「おいそこの巫女もどき。俺のことを酷い言い様だな。あと、リュウお前までそんなことを言わないでくれよ。俺ちょっと傷つくんだけど……」

「す、すみません。冗談のつもりで言ったのですが……」


 そんな気の抜けたやり取りをしていると、イズハがあることに気付いた。


「ねえ、メンカン達はどこに行ったの?」


 辺りを見ると、先ほどまでそこらを漂っていたメンカンの影はなかった。

 

 素材採取はまだ続きます。

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