49話『奇跡ってさ、ただ起こるのを待つだけじゃなくて、自分から起こす事だってできるんだぜ?』
「少々あなどっていた。我も本気を出す事にしよう。ガアアアア!」
魔王が……吠えた。何が起こるのか、なんとなく予想はできる。けど、冗談抜きで終わって欲しかった。だってそうだろ? アニメやマンガだと主人公は必ずピンチになって、そこから逆転劇を演じたりするわけだが、ぶっちゃけそんなピンチになんてなりたくない。安定した戦闘で完封できるのなら、それがいいに決まってる!
……だけど現実はそんなにあまくはないみたいだ。と言っても、この世界を現実と言っていいのかはわからないが、今、こうして俺の目の前の魔王はどんどん体が変化していた。
まず体が膨れ上がって、3メートルほどの巨体は、その倍になっていた。
後頭部から生えていた短い角がメキメキと伸び、渦を巻いて広がって行く。
膨れ上がった肉によって皮が裂け、脱皮したように新しい皮膚は黒く、黄色い斑点が気持ち悪い。
ギュルリと爬虫類に似た尻尾が生え、ウネウネとうごめき、口は耳まで裂け鋭く長い牙が伸びる。
額に亀裂が入ったかと思えば、パックリと開き、そこから目玉が出現した。
おぞましい化け物が誕生する瞬間に立ち会った感想と言えば、ただ最悪だという気持ち以外に何も無かった。
「もはや容赦はせぬ。貴様らがコソコソと隠れられぬよう、我が神殿の結界を解こう」
魔王が右手を振ると、周りの床や柱が色あせていくように見えた。それはつまり、この建物が壊れるようになったという事。決して壊れない無敵の鎧を失ったという事だ。
「さぁ、消え去るがいい。『ブラックエクスプロージョン!』」
俺が作戦を考える暇も与えず、魔王が最悪の範囲魔法を解き放った。
俺はとっさに柱の後ろに隠れる。
次の瞬間、俺が認識できたのは大きな爆発音。それと同時に壁が砕け散る音。そして凄まじい衝撃に体が吹き飛ばされ、上下の感覚がなくなり、何度か地面に叩きつけられながら転がった事だった。
気が付くと周りからは焦げ臭いにおいが漂っていて、目をゆっくり開けると、俺は固い地面の上に倒れていた。体が痛くてうまく動けない。最初にくらった時よりも、はるかに大きな破壊力だった。
必死になって体を起こし、周囲を見ると、そこには神殿という建造物はもはや無かった。パチパチと所々燃えている火が明かりになっているだけで、周りは夜の荒野そのものだ。高い天井さえも粉々に吹き飛ばしたのか、瓦礫に埋もれる事も無く、その残骸も周囲にはほとんどない。
そんな俺の近くに忍と恋が倒れているのを見つけた。
「忍、生きてるか!? 恋、しっかりしろ、全体回復を頼む」
「うぅ……『オメガヒール・オール!』」
ふわりと光が体を包み込み、痛みが引いていく。俺が立ち上がると忍も体を起こしていて、手を握ったり開いたりを繰り返し、自分の体を確認している。とりあえず生きていた事にホッとした。
「グハハ、まるでゾンビのようなしぶとさではないか」
魔王が俺達を見て笑いながら、次の魔法を使おうと両手を構えていた。もう錫杖は持っていない。スキルも、武器も使わずに、ただその威力の大きさだけで相手をねじ伏せる魔王を前にして、俺は必死にどう戦うべきかを考えていた。
「そろそろ死ねぃ。『ブラッドレイ!』」
魔王の口が開くと、そこに魔力が集まり出す。あのレーザー光線のような魔法だ!
「お前ら全力で避けろぉーー!!」
もう恋の全体回復はしばらく使えない。身を守ってくれる障害物もない。そうなると、もはや回避行動を最優先にして、とにかくダメージを受けないように立ち回りながら隙をみるしかない……
「カアアァァ!」
収束した魔力がレールガンのような勢いで発射された。俺は本能的に、右方向へと飛び退いで地面に伏せた。
刹那、魔王の放った光線が俺の頭上を通過する。左から右へと萩払われたそれは、地面に触れた所から順に赤く染まり、爆発と同時に天高く火を噴いた。
俺の後方はもはや地獄絵図だ。地面は真っ赤に焼けただれ、岩石は熱で溶けマグマとなり、窪みに溜まる。後ろから風が吹けば灼熱となり肌が焼けそうだ。
あまりの破壊力に、考えがまとまらない。どうやったらアレに勝てる……?
「ふむ、まずは貴様からだ。『ホワイトフレア!』」
激しい爆発が俺の隣で起こった。背中が凍るようなそんな感覚で視線を移すと、ボロボロになった恋が倒れていた。
絶対必中の魔法、ホワイトフレア。それを魔王も使えたという絶望感と、一瞬で恋がやられたというショックで放心しかけた。
「やあああああああ!」
突然、忍が叫びながら魔王に突撃して行く事で、俺は我に返った。
止める事は出来ない。ホワイトフレアを魔王が使えると言う事は、定期的にこちらのHPを削られていくという事だ。だとしたら、そうなるまえに攻撃を仕掛けて行かなくちゃダメなんだ。
魔王が、丸太のような太い腕を振り上げ、忍を叩きつけようと振り下ろす。そのタイミングに合わせて地を強く蹴り、加速した忍は魔王の腕を掻い潜り、側面を取った!
「特技『咆哮牙!』」
――ドカァ!
鈍い音と共に忍が吹き飛ばされていた。
魔王の尻尾がいち早く忍を跳ね飛ばしていたからだ。
「くぅ……!?」
忍は地に手を着いて受け身を取り、素早く体制を整える。
「次は貴様だ。『オメガストライク!』」
魔王の手のひらに大きな球体が出現して、それが大砲の砲弾のように勢いよく打ち出された。忍はそれを、なんとか紙一重で避ける。
魔王の放った魔弾は、乾いた荒野に突き刺さり、地中で大きな爆発を起こした。そのせいで、大小さまざまな岩石の塊が弾け飛び、そんな石つぶてが忍に降り注いだ。
「~~~っ!!」
魔弾が撃ち込まれた所は巨大なクレーターになっていて、そんな爆風に飛ばされた石つぶてを全身に受け、押し殺したような悲鳴で、忍が俺の近くまで吹き飛ばされてきた。
俺はまず、恋に駆け寄り抱き起した。
「恋! しっかりしろ。回復魔法で体制を整えるぞ」
恋がゆっくりと目を開けて、杖をかざした。
「『ヒール・オール!』、マスター……一つ提案があります……」
「ん? なんだ?」
「シノブを連れて、今すぐに逃げて下さい……」
そう言って、恋はふら付きながら立ち上がった。
「は……? 何言ってんだよ……?」
「こんな化け物に勝つのは難しいのです……このまま全滅したら、誰も助かりません。しかし、日付が変わるまでマスターが逃げ延びる事ができれば、勝利条件は満たせずとも、二人は元の世界に戻る事ができるのです」
何を言うのかと思えば、この期に及んで逃げろ……か。笑っちまうぜ。けど、そんな事を言われたおかげで、ちょっとビビってた自分をたしなめることが出来た。
「さぁ! ここは私が食い止めるのです。その間に逃げて下さ……わぷっ!?」
俺は恋の頭をクシャクシャとかき回して、そのまま前に出た。
「アホか。そんな作戦に俺が乗ると思ってんのか? お前を見捨てて生き延びたところで、その後の人生に意味なんてねぇよ」
「でも、このままじゃ全滅しちゃうのですよ!?」
背中から恋の声をあびて、俺は振り向かずに答える。
「恋、お前さ、女神様との賭けで無茶な条件つけて、奇跡的に勝ったって言ったよな? だとしたら、今度は俺が奇跡を起こしてやるよ。知ってるか? 奇跡ってさ、ただ起こるのを待つだけじゃなくて、自分から起こす事だってできるんだぜ?」
そう言って、俺は青龍の剣を掲げて走り出した。
「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
「フフフ、滅びるがよい、勇者よ!! 『オメガフレイム!』」
魔王が巨大な火の玉を飛ばして来た。それはまるで、大気圏に突入した隕石のようだ。
「特技、『氷結破斬!』」
俺はそれを迎え撃つ! 一刀両断にすると、火の玉は瞬時に凍り、真っ二つに割れた。
「ぜってぇに諦めねぇ! 自分の体力が尽きる最後の最後までな!! 人間の悪あがきなめんなよ! 特技、『真空破斬!』」
「ぬぅ!?」
俺が振るった剣は魔王の腹をかすめる。後ろに飛び退いだせいで直撃とはいかなかった。
「なぜ諦めぬ!? 脆弱でひ弱な人間風情が!?」
「諦められっかよ! もはや勇者も世界平和も関係あるか! 戦う理由なんざただ一つ。恋が俺を逃がそうと体を張ってくれた。そんなあいつのために戦わなけりゃ男がすたるんだよ! 俺は絶対、諦めたりしねぇぞー!!」
――キュピーン!
甲高い音が鳴り響く。
来た!? これを待ってたんだ! ま、こうなる可能性を考慮してた時点で奇跡なんて言えないのかもしれないけど、そんな御託はこの際どうでもいい! もはや、このスキルに賭けるしかねぇ!
「スキル発動! 『諸刃の剣!』、『限界突破!』」
――『諸刃の剣』。習得条件、どんなに絶望的な状況でも、諦めずに立ち向かう時に習得する。消費20。効果、自分の体力減らし、その最大値から減らした分の%を攻撃力に変換できる。
――『限界突破』。習得条件、諸刃の剣を習得する事。消費15。効果、攻撃力と与えるダメージのカウンターストップの上限を無くし、使用者の攻撃力を2倍にする。
――攻撃力:2764 → 5528。
さらに現在の体力を99%攻撃力に変換する!
――攻撃力:5528 → 11001
俺の青龍の剣が輝き出した。
「れーーん! 俺を回復しろぉ!」
「……え?」
「早く! これで決める!」
「は、はい! 『オメガヒール!』」
俺がHP1だけ残した体力が全回復になった。
「ふん、無駄なあがきよ。『オメガフリーズ!』」
魔王の頭上に複数の氷の刃が出現した。
まずい……あいつの魔法を防ぐ手段がない。とにかく、なんとか持ちこたえねぇと!
「特技、『咆哮牙!』」
ザッと素早く俺の前に滑り込んで来た忍が、足元の地面に向かって掌底を放った。
ボコンと岩盤が僅かに浮かび上がり、忍はそれを、まるで畳替えしのように魔王に向かってひっくり返した!
ザクザクと、放たれた氷の刃が巨大な岩盤に突き刺さり、そのまま魔王に覆いかぶさった。
「ぐぬぅ……こしゃくな!」
魔王が岩盤を受け止めたその隙に、忍が俺の元へと駆け寄ってきた。
「ご主人様、私も回復をさせます!」
「サンキュー忍!」
満タンの体力を99%攻撃力に変換する。
――攻撃力:11001 → 21892
「特技、『回復功!』」
忍の特技で俺の体力が80%回復した。
さらに忍は、自分の持っている回復薬を俺に手渡して来た。
「私の持っている回復薬、ご主人様に預けます。レン、ご主人様のサポート、お願いしますね」
「シノブはどうするのですか!?」
ズガアアンと、魔王に覆いかぶさった岩盤が粉々に砕け散る。そしてギロリと、魔王の三つ目は俺達を睨みつけた。
「私は、あの化け物の相手をして時間を稼ぎます。ご主人様とレンで、その切り札の準備をして下さい」
「なら、シノブの体力も回復させるのですよ。まだ全回復じゃないですよね?」
恋が近寄ろうとするのを、忍は手をかざして制止した。
「駄目です! 見たところ、そのスキルはHPを攻撃力に変えているんですよね? だとしたら、回復は私に使うよりもご主人様に使って下さい。私は大丈夫ですから」
「忍……すまねぇ」
俺が謝ると、忍はニコッと微笑んでくれた。そしてすぐに、魔王の元へ駆け出して行った。
忍一人で魔王の相手をさせるのは非常に心配だ。だが、今はそんな事も言ってられない。もうこのスキルに全てを賭けるしか、勝つ手段がないんだから。
俺はすぐに、忍から回復された80%を攻撃力に変換させた。
――攻撃力:21892 → 39406
そして忍が俺に渡してくれた回復薬を自分に振りかける。回復量は50%だ。それもすぐに攻撃力へと変換させる。
――攻撃力:39406 → 59109
次に、自分で最初から持っている回復薬を使おうとした。だがこの時、予想外の事が起こった。
俺が自分に振りかけようとした回復薬が使えなかったのだ。なぜか中身が出てこない。小さなビンに入っている粉末が逆さまにしても出てこなかった。
「ど、どうなっているのですか?」
「……そうか! リキャストタイムだ! スキルや特技だけじゃない、アイテムを使うにもリキャストタイムは必要だったんだ!」
こんな時に初めて知ったこの世界のシステム。
回復アイテムなんて連続で使った事なんてなかったし、魔法薬は一個使えば十分なので、このアイテムのリキャストタイムには気付かなかったんだ……
「くそっ……恋、とりあえずお前がアイテムを使ってくれ」
「はいなのです!」
恋が俺に向かって、自分の持っている回復薬を振りかけた。体力が50%元に戻り、俺はそれをすぐに変換した。
――攻撃力:59109 → 88664
「よし恋、次に魔法で回復してくれ」
「はいなのです! これが最後の回復魔法なのですよ。『ヒール!』」
再び俺の体力が半分まで回復する。とりあえず変換は行わずに、その状態のままを維持する事にした。
どうする? このまま最後の攻撃に出るか?
そう考えている時だった。
「ご主人様、逃げて下さい!」
忍の悲痛な叫び声が聞こえて、そちらに目を向けた。
「一気にケリをつけてくれる。消えて無くなれ! 『ブラックエクスプロージョン!!』」
魔王の体が闇に紛れる。広範囲にわたって真っ黒な超爆発が来る! そう危険を感じたその時――
「させないのです! 『プロテクションウォール!』」
恋が俺達の前に魔法障壁を作り出した。そしてその刹那、大爆発が巻き起こる。距離を空けているにも関わらず、作り出した障壁はビシビシとヒビが入り崩れていく。障壁が完全に壊れたのと同時に、恋が俺に覆いかぶさり、自分の体を盾にしてきた。
黒一色の爆風が治まると、俺は恋の体を揺さぶった。
「恋、大丈夫か!? おい恋!!」
恋の背中には火傷の跡が残されていて、決して軽いダメージでない事は一目瞭然だった。
だが、さらに俺の目に飛び込んで来たのは、ボロボロの状態で倒れている忍の姿。
「忍~~~!!」
俺は慌てて忍を抱き起したが、もはや忍は風前の灯という感じだった……
「ご主人、様……あんまり……時間、稼げなくて……ごめんなさい……」
「そんな事ねぇよ。最高の出来だ。すぐに魔王なんてぶっ飛ばしてやるからな」
そう伝えると忍は力なく笑って、次第に光に変わっていく。
モンスターや四天王と同じだ。この世界の命は、消えると光となって霧散していく……そして忍も、完全に光となって消えていった。
「マスター、アイテムのリキャストタイムって、どのくらいの時間なのですか?」
恋が静かに、俺に問いかける。俺もまた静かに答えた。
「わかんねぇけど、アイテムにはそこまで長い時間は設けられていないと思う……」
「なら、マスターがアイテムを使えるようになるまで、今度は私が時間稼ぎをしますね。もし差し障りがなければ、魔法薬を私にくれませんか?」
そう言って、ザッザッと恋は魔王に向かって歩いていく。
「ちょ、ちょっと待てよ恋! お前だってダメージを受けてるだろ!? 無茶だ!!」
「……けど、やれる事は全部やって、少しでも確率をあげた方がいいのですよ。大丈夫、最後にマスターが決めてくれれば結果オーライなのですよ」
そう言って、振り向いた恋の表情は笑顔だった。まるでなんの不安もないかのような表情で……
「ククク、おしゃべりはそこまでだ。トドメをさしてくれるわ。『オメガブラスター!』」
魔王が俺達に向かって魔法を解き放った。
「やらせないのです。『リフレクション!』」
プロテクションウォールに加えられた衝撃をエネルギーに変換する恋のスキル。それを投げると、魔王の魔法と衝突して大爆発を引き起こした。
「マスター。私なんかのために逃げずに戦ってくれて、本当にありがとうなのです。そんなマスターのためだからこそ、この命を使うのにためらいなんてないのですよ。さぁ、アイテムを私に」
そう言って恋は俺に手を伸ばす。俺はどうする事もできなくて、魔法薬を恋に渡した。
恋は、今までにない笑顔を見せると、自分に魔法薬を振りかけて煙の中へと走って行った。そしてその煙の向こうからは、魔法を解き放つ声と、魔弾がぶつかり合う爆発音が絶え間なく響いて来る。
俺は回復薬がいつ使えるようになってもいいように、ビンの中身を見ながら振り続ける。回復薬は未だ、時が止まっているかのように固まっていた。
恋と魔王の打ち合いは続き、爆風が爆風を吹き飛ばして、二人の闘いが見えるようになった頃、ようやく回復薬に変化が表れた。ビンの中身の粉末がサラサラと動き、いつでも使えるような感覚が戻った。
――「きゃあああああっ」
同時に、恋の悲鳴が聞こえた。ハッとして見ると、彼女には電撃が流されており、バチバチと全身を焦がされていた。
「うぅ……あああぁあぁぁあ!!」
電撃が止むと、恋はその場に倒れ込んだ。
「恋! しっかりしろ! おい!」
「マスター……アイテム……は……?」
虚ろな目で、恋は最後まで使命を全うしようとしていた。
「大丈夫だ。使えるようになった。恋のおかげだ」
「よかった……のです。マスターの……最後の一撃、見れなくて……残念……なのです……」
そう言い残して、恋の体も光になって天へと昇っていく。
そんな様子を、俺は涙を飲み込んで見上げていた。
「グハハ、貴様で最後だ。勇者よ」
魔王が余裕の口ぶりで笑うのが、気に入らないと感じた。
「ああ、最後だよ……本当に、これが最後だ!!」
俺は立ち上がり、目を見開いて、そして回復薬を自分に振りかけた!
体力の99%を攻撃力に変換!
――攻撃力:88664 → 176441
「スキル発動、『勇猛果敢!!』」
――攻撃力:176441 → 352882
俺は青龍の剣を天高く構える。ゲイルスラッシュは攻撃力の10倍の威力。こいつが正真正銘最後の一撃だ!!
「消えて無くなれぇ!『ゲイル……スラアアアアシュ!!』」
思い切り剣を振り下ろす。眩い光が世界を覆った。
だが、俺の振り下ろした剣は途中でその動きが止まる。丁度、俺の顔の高さほどで、それ以上振り下ろせなくなっていた。何かに阻まれているような感じ。せき止められているとも言える。
「グガアアアアアア、なんだこの威力はあああ」
魔王の雄叫びが聞こえる。目の前は光に包まれて何も見えない。俺の一撃が前に飛んでいるのか、真下にも影響を及ぼして地を砕くものなのか、それさえ分からないほどのエネルギーがほとばしっていた。
「こ、この程度で……この魔王があああああああ」
ここまで溜めた俺の一撃を押し返そうと、魔王が抗っているのが分かった。
俺はさらに、目の前から動かなくなった剣を振り抜こうと力を込める。
魔王を斬れ! 押し返せ! 絶対に負けるな! この剣を……真下まで振り下ろせぇ!
「グアアアアアア……お、おのれぇ、我は魔王デスザガン! 人間如きには負けぬ! 喰らえ『ホワイトフレア!!』」
まずい! 体力を1%残しただけの俺に、必中魔法が飛んでくる!
「滅びよ、人間があああああああああ!!」
「絶対に負けねええええええええええ!!」
全力全開で剣に力を込めて、大声で咆哮する。すると、グンと剣が真下まで振り下ろされて、せき止められていた何かが貫通する手ごたえを感じた。
だが、それと同時に俺の体もまた、爆発に包まれていた……




