47話『そんじゃ、ラストバトルに赴くとしますか!』
「だから私は誓ったのだ。裏切り者の人間に、復讐してやると!」
俺は後ろから聞こえてくる声に振り返った。最後の四天王が、自分の過去話を永遠と続けていた……
やっべ~、ナユちゃんに夢中で全く話きいてなかったわ。まぁいいか。
「ヤメロ。復讐ナンテ虚シイダケダ」
「ふっ、なんとでも言うがよい……」
とりあえず、てきとうに話を合わせておいた。
「ドウシテモ、続ケルンダナ」
「知れた事よ。私を止めたくば、倒してみよ!」
茶番はこんくらいでいいか。
俺はナユちゃんからもらった青龍の剣を抜く。周りの松明の炎が揺らめく中、青白く光る、美しい剣身だった。
この戦いで、こいつの力を試す!
「なぁ、まどろっこしい探り合いは止めて、一気に大技勝負といかないか?」
「いいだろう。受けて立つ!」
向こうも剣を抜き、身構え、高らかに叫んだ。
「スキル、『力溜め!』」
「お前らは手を出すなよ。スキル、『勇猛果敢!』」
俺も剣を振り上げる。
「ゆくぞ勇者よ。特技『斬鉄破斬!!』」
まるでカマイタチのような、鋭い衝撃波が地面を削りながら飛んできた。
それを俺は迎えうつ!
「特技『ゲイルスラーーーッシュ!!』」
剣を振り下ろした瞬間にゴッと、空間を突き抜けるような音が鳴る。同時に強い光が周りを覆った。
膨大な光は地面を抉り、その風圧で周囲の松明を薙ぎ払い、あっという間に四天王が放った衝撃波をも呑み込んだ。そして、全く勢いが衰えないまま四天王さえも光の中へ消えていく。
四天王の背後にある、遠く離れた神殿まで到達すると、大きな爆発を起こし煙を上げていた。
想像を超えた破壊力に、俺自身が驚いていた。
こんなの、サイヤ人の超かめはめ波じゃないか……
そうだ! 手帳から攻撃力を確認してみよう。前は864だったな。
――攻撃力:2764
三倍以上に跳ね上がってる!? ってか、ステータスって999がカンストだと思ってたら軽々と突き抜けていった!
これが伝説の装備の力……
レベル上げよりも、装備集めを優先した方がよかったんだな……
「ぐうぅ……私の負けだ、勇者よ……」
見ると、四天王が大の字になって倒れていた。
もう戦えないだろう。そう思って俺達は近付いていく。
「最後に明かそう。私の正体を」
男はオニのような仮面を外し、その素顔を晒した!
その顔は誰かと思えば、見知らぬオッサンだった……
いや、マジで誰ッスか……?
「久しいな。息子よ」
誰が息子やねん!! 俺の親父は日本で単身赴任中だよ! こんなオッサン知らんがな!
「この人がマスターのお父さん? 神のゲームに参加してたのですか?」
「違う~~! こんな人知らない~~!」
「だとしたら、転生したこの世界でのお父さんって設定なんじゃないですか? とりあえず話を進めてください」
忍に言われて、またもや話を合せることにした。
「父サン、シッカリシロ」
「強くなったな。今のお前ならば、魔王に勝てるかもしれん。この技をお前に託す」
――キュピーン!!
特技『斬鉄破斬』を習得した。消費35。攻撃力の6倍の威力。
ゲイルスラッシュは攻撃力の10倍だから、この特技、あんまり強くないなぁ……
まぁ、ゲイルスラッシュは習得条件が難しかったし、ここに来るまでに習得出来なかった場合の救済措置なんだろうな。
「ふっ、あとはお前の信じた道を突き進むがよい……ぐふっ」
そして最後の四天王は光となって消えていく。
その様子を、俺達は黙って見守っていた。
自分の父親を殺して魔王の元へ進むとか、なんつーシナリオ用意してくれんだよ女神様……知らないオッサンとはいえ、さすがにちょっとは気が滅入るぞ……
「よし、あとは魔王の神殿に行くだけだな。ナユちゃんをここに放置しておく訳にもいかないし、とりあえずモンスターが出ない所まで運ぶか」
俺はナユちゃんを抱きあげようとして、ピタリとその動きを止めた。
上は肩やおへそを出したビスチェ、下は太ももを出したホットパンツ。露出度が高い少女に、俺が触れていいものだろうか? いやいいだろ! 別にやましい事は何もない!
「私が背負います。ご主人様が背負うと欲情しそうですから」
「しねぇよ! ロリとか興味ねぇし! そもそも三次元に興味ねぇし!!」
「マスターが必死すぎるのですよ!? というか三次元に興味が無いと私もシノブも困るのです!」
なんだか妙な疑いを賭けられながらも、俺達は神殿に向かって歩き出した。
結局は忍がナユちゃんを背負い、俺の後ろに列を作る様にしている。
「ご主人様、さっき言ってた、魔王を倒す側と魔王を勝たせる側に分かれたゲームという話ですけど……それって今から戦う魔王が、ゲームに参加しているプレイヤーかもしれないって事ですか? いや、それ以前にこれまで倒してきた四天王がプレイヤーだった可能性もあるんですよね?」
忍がため息混じりの声でそう聞いてきた。
気持ちはわかる。この世界で死んだ場合、元の世界には戻れずに死亡扱いになってしまう。それはこちらも同じとは言え、やはり相手を倒す事に抵抗があるんだろう。
だけど――
「多分、魔王や四天王はプレイヤーじゃねぇよ」
「どうしてそう思うんですか?」
「話を聞く限りでは、魔王や四天王はこの場所から動かないで俺達を待ち構えていた。三日間ずっとだ。俺が神様でプレイヤーの役を決める立場だったら、そんなつまんない役をプレイヤーにやらせたりはしねぇな」
「確かに、それは一理あるのです」
恋も、手をポンと打って納得してくれていた。
「多分、魔王を勝たせる側のプレイヤーは三日間あちこちを駆けずり回って、俺達よりも先に洞窟内部にある宝を回収するのが主な役目なんだと思う。今まで出会わなかったのは、直接俺達に干渉してはいけないとか、そんな感じのルールがあったのかもしれない」
「なるほど、だとしたら安心しました。知らなかったとはいえ、同じ日本から来た人を倒していただなんて胸糞悪いですからね」
そんな会話をしながら歩みを進めていると、ついに魔王の神殿に辿り着いた。
思ったよりも大きな神殿だ。高い柱に支えられて平べったい天井を見上げると首が痛くなる。
もう周りはすっかりと暗いせいか、神殿の色彩はよくわからないが、内部からはしっかりとした光が漏れているあたり、照明はちゃんとあるのだろう。
神殿の周りにはびっしりと柱が立ち並んでいて、飾りか、もしくは雰囲気作りなんだと思う。俺はそんな周囲を見渡してモンスターの姿を探した。
「モンスターはいねぇな。とりあえず、ナユちゃんはここに降ろして行こう。魔王に見える所に置いておくわけにはいかないし」
柱と柱の陰になる所へ、ナユちゃんを降ろすように忍へ合図をする。
そして、そんな時にある事に気が付いた。
「……そう言えば、さっき俺が飛ばした『ゲイルスラッシュ』がこの辺に直撃したはずなんだが、全然壊れてないな」
「そうですね。遠くから見た時にはモクモク煙が上がっていたんですけどね?」
そう言って、恋は周りの壁や柱を触りながら調べ始めた。
伝説の剣を使い、全力で振り抜いた俺のゲイルスラッシュは、四天王を吹き飛ばしてその先にあるこの神殿に直撃していたはずだ。にもかかわらず、どこも壊れた様子がない。
「よくわかりませんが、もしかすると結界か何かが張られていて、建物は壊れないように出来ているのかもしれないのですよ」
なるほど、まぁ確かに、外から大技を放って魔王を生き埋めにするなんて攻略法があったら、お笑いものだしな。
「うっし! そんじゃ、ラストバトルに赴くとしますか!」
俺達は重々しい雰囲気を放つ扉の前で、改めて気持ちを引き締しめるのだった。




