【エピローグ】
挿絵を追加しました!(挿絵少し手直ししました)
地下牢のある部屋で、ノアは壁に向かい立っていた。
すぐに追いついたアミュアが声をかける。
「ノアに聞いてほしいことがあるの」
真剣な声だが今のノアには届かない。
身体自体が溶け出すように紫の光をもらしたノアは、何もない壁を見つめていた。
いや――見つめてなどいなかったのかもしれない。
彼女はただ、背を向けていた。
すべてから。
「ただ愛されてきたアミュアには解らない」
アミュアの脳裏にはユアの顔が浮かぶ。
アミュアを見つめ、とても辛そうにして悲しんでいるユアだ。
少し怒りが湧き、淡々と話し始める。
「わたしもまた感情も持たず産まれたの。ただの事故で偶然に」
アミュアが自嘲気味に語りだす。
「誰にも見られず、誰も見ること無く長い長い時を泣いて過ごしていた」
その記憶すら後でラウマから教わったものだ。
「たしかにそこに奇跡があり、ユアと出会いわたしの悲しみは一度拭われた。半分だけであっても」
アミュアの顔が自然と笑みに変わる。
話し続けるアミュアをノアはふりかえり見つめていた。
アミュアのユアとの出会いが、自分とカルヴィリスの出会いと同じように感じたのだ。
「わたしは丁寧にユアを知り、理解することでユアを好きになっていった」
ちょっとほほが赤くなるアミュア。
「ユアもまた記憶すらなくしたわたしを、支え理解してくれた」
カルヴィリスも丁寧にノアを知り、教えを助けをくれた。
震えながらノアが問い返す。
「わたしも‥愛されていいの?」
アミュアがされたように自分も誰かに愛されたいと思ったのだ。
ふとノアは気付いた。
メイド達は、ノーラは自分を愛してくれていたのだろうかと。
カルヴィリスは自分を愛してくれていたのではないかと。
最後の抱擁がそれを証明していないかと。
ノアの瞳がうるみ、わずかに揺れ始める。
それは、まるで初めて夜が明ける瞬間のような、戸惑い。
アミュアもまたその瞳に涙を浮かせながらノアを見ていた。
徐々に赤面していくアミュアは何かを探すようにキョロキョロと見回した。
そして消え入りそうにそっとささやいた。
「わたしもユアに……愛されて、生まれなおしたんだから……っ」
顔は真っ赤。
もはやまっすぐ前が見えない。
指先が震える。足元がふわふわする。
でも言葉だけは、ちゃんと届いた。
その瞬間。
「わーーーーっ!!!」
物陰から転げ出てきたのは、声にならない声で叫ぶユア!
「てえてえがクリティカルヒットぉおおおぉおお!!!!!」
その場で転げ回り、床をバンバン叩くユア。
追いついたが様子をみていたのだ。
ラウマも新しい体をもらい階段の影から真っ赤になり両手で顔を隠し、指の隙間から見ていた。
ノアは呆気にとられたようにぽかんと見つめた。
アミュアは「うわああああ!!!」と顔を覆って壁際へ!
さわぐ三人を交互に見たノアの頬にも、微かな笑みが浮かぶ。
小さく小さく、でも確かに。
溶け出していた紫の光はもうそこにはなかったのだった。
誰かを癒すことで、自分も癒される。
誰かに愛されることで、ようやく自分を信じられる。
だから、彼女たちは今日も笑うのだ。
泣きながら、笑うのだ。
──これは、手をつなぐ物語。
生まれなおし‥わたしがわたしになった物語。
(fin.)
最後までお読みいただきありがとうございます。
読了いただいたすべての人に感謝を申し上げます。そしてこの物語から一つでも誰かに届いたのならそんな嬉しいこともないです。
まだちょっと閑話とか書いてみようと思います。お時間あったらお読みいただけたらと思います。
続きはこちらになります!外伝集「わたしの外伝あつめ」https://ncode.syosetu.com/n9419kv/




