【第73話:終わりと始まり】
挿絵を追加いたしました。(挿絵の手直しして再投稿です。ちょっと朝っぽくなかったので)
カルヴィリスはノアの入浴している気配で目が覚めた。
(おどろいた、こんなにちゃんと寝たのひさしぶりだわ)
カルヴィリスは寝ていても起きているタイプの睡眠しか取らない。
これは単独任務につく刺客ならできて当然の技術以前の常識だ。
それが意識を完全に手放していた。
自分の変化に驚いたのだった。
(ノアはお風呂か、次に私も入らないとな)
武装は外したが、服は着替えずに寝てしまった。
くんくんと嗅いでみたが、汗の匂いはせず、臭くはなかった。
ノアがなかなか寝付かず、カルヴィリスもノアから離れがたかったのだ。
ノアが寝た頃には、カルヴィリスも眠くなりそのまま隣のベッドで寝たのだった。
色々反省しているとノアが上がって出てきた。
驚いたことに髪を乾かしている。
「ノア自分で髪を洗ったの?」
ちょっと自慢げに腰に手を当て答えた。
「ノアは全部一人でできた。これからはちゃんとルヴィが言ったようにするよ」
手を離したので、ぽろっとタオルが落ちてしまい、あわてて拾い上げるノア。
クスクスとカルヴィリスは笑いながら告げる。
「じゃあ今度から一人でお風呂はいっていいわよ」
そう告げながらカルヴィリスもシャワーに向かう。
こうして二人の関係は新しい形となったのであった。
なぜだか少し照れくさくお互いに視線を合わせず、食事をしチェックアウトした。
ホテルをでてすぐの公園で、ノアとカルヴィリスはベンチに座り話すこととなった。
ノアが話があると言い出したのだ。
今日はノアがせがんでカルヴィリスに三つ編みをみてもらい、自分でゆって背に流していた。
きりっとした目になりノアが話し始める。
「まえにルヴィがこう聞いたの。ノアはどうしたいかと」
なんの話だ?と思いながらも続きを待つカルヴィリス。
「ノアはもう一度戦いに行こうと思う。ラウマのところに」
「はい?」
何一つ理解できなかったカルヴィリスはぽかんとする。
そこからノアは一所懸命に自分の事、ラウマのこと、なまいきな銀色アミュアのことなどを伝えた。
一度ラウマに自分の元に戻るよう迫られ、逃げ出したことも。
出会った時は、自分が自分では無くなる恐怖に泣いたのだと。
セルミアから逃げたのはその前だとも。
こうしてついにノアは自分のことを全て、カルヴィリスに告げたのであった。
ノアの告白が終わり、結論に戻る。
「もう一度立ち向かって、ノアがノアだと言わなければどこにも向かえない」
まっすぐで真剣な視線であった。
カルヴィリスはノアが初めて一人の人間に見えた。
いままであなどっていた訳では無いが、どこかで子供だと決めつけていた。
「次はカルヴィリスの番。教えてどうしたいか」
ノアは名前を略さなかった。
甘えはないのだと突きつけられた気がした。
とても大事な秘密を沢山聞いてしまったが、カルヴィリスに話せることは少ないと改めて気付き愕然とする。
「私は死ぬことを禁じられているの。主を守れなかったあの日に」
すっと本音がでた。
それこそがカルヴィリスを縛っている呪だった。
無き主人よりいただいた最後の言葉。
「ルヴィが死ぬのはノアも禁止したい」
まっすぐにノアが見つめている。
嘘や誤魔化しでは通りそうにない。
「わかった全部一度話すわ」
ノアが理解できるか解らなかったが、今の自分が置かれた立場や、先日昨夜と2度警告されたこと。
自分と一緒にいればノアにも危険が及び、ノアも自分も守りきれない怖い敵がいること。
これから先、人里を離れ逃げ出そうと思っていること。
それらを包み隠さず、大人に話すように伝えてみた。
「おそらくギルドは私が邪魔なのだと思う。消そうとして反撃されるのも嫌って脅してきた」
そう締めくくったのだった。
ノアは瞬きもせず見つめていたが、理解できたのかは読み取れない。
すっとノアが立ち上がり前に正面に来る。
「わたしは前にしっぱいして、お礼もごめんなさいも出来ずわかれてしまった恩人がいる。同じ間違いをしたくないので今伝えます」
ぺこりとお辞儀をして話す。
「ありがとうカルヴィリスたくさん助けてもらったよ。大変な時に迷惑もかけたのかも知れない。ごめんなさい」
それだけ一気にはなすとすっと近寄り抱きついてきた。
カルヴィリスの頭を胸に抱き寄せ、耳元に囁く。
「そしてこれ以上無理は言わないので、ルヴィの好きにして欲しい」
とても大人びた言葉であった。
手を離して正面からまた見つめる。
「ノアはこれから自分を助けてくる。助かったらルヴィを探すよ」
にこっとはにかんで続ける。
「きっと見つけるから、それまで死んだりしてはダメよ」
どことなく聞いたフレーズは、自分がよくノアに注意する口調であった。
クスっと笑顔がもれて、カルヴィリスも素直になれた。
「ノアがやりたいことを応援している。いいと言うまで側にいると誓ったのにごめんなさい」
そして詫びの言葉も素直に出た。
「ルヴィはわたしが泣いていたから、助けてくれた。ちゃんとノアは解っていた」
笑顔のまま答えたノアが、真剣な顔に戻し告げる。
「ルヴィはとてもいい人だと思う。わたしはルヴィがだいすき」
すっとノアが右手を出す。
わずかに間をおいてカルヴィリスはその手を握り帰した。
「ありがとう。わたしも大好きよノア」
カルヴィリスも今日一番の笑顔になるのであった。
そうして不思議な出会いから始まった二人の旅が終わりを告げた。
すこしづつ高くなる空が薄い雲を引き、視界の果まで続いていた。
彼方まで続く雲に未来を見て、二人は旅を終え、旅を始めるのであった。




