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【第32話:連鎖三正面襲撃作戦】

 馬車を壁にこすりながら止めるカーニャ。

(ごめん!ユア!後で弁償するわ!)

これであちら側のドアを警戒しなくてすむ。

単独で防衛するには、一面でもつぶしたかったのだ。

がりがりと停まりながら、ミーナに叫ぶ。

「何があっても出てきちゃだめよ!!」

返事もまたずに飛び降りる。

「姉さまも気を付けて!!」

カーニャには妹の心配する声に答える余裕がない。

接敵していないが、これで襲ってこないはずがない。

上空に凄まじい魔力の放出。

アミュアも接敵したのか?カーニャのほほを冷や汗が落ちる。

(やられた、全部タイミングを計られていた)

左右を見回し、裏口横の城壁上に人影。

10人はいる。カーニャは歯ぎしりしてから。空きっぱなしの前方窓を閉めながら馬車の中に叫ぶ。

「ミーナ!大人しくしててね!!信じて」

最後は自分を信じろか、飛び去ったアミュアを指したか。

馬車の周りに結界を貼るべく、詠唱を始めながら前ににじり出るカーニャ。

「ヴェールグラーダ!!」

魔法名を叫ぶのは気合が入ったカーニャの癖。

輝く真紅の結界が馬車を包み発動。

同時に城壁上からすっとそろって、黒い影が並びながら落ちてくる。





(これは?!想像以上の練度だ!)

無言で唇を結ぶスヴァイレクは、心で叫んでいた。

際どい事は覚悟していたが、これほどとは。

ユアの獲物は短剣である。

本来届かないそれが伸長され届く。

ふれれば致死の一撃だ。

シュゴ!!

切り抜ける鋭さは、スヴァイレクの動きを越えている。

速さだけではここまで追い詰められない。

詰将棋の様な緻密な戦略を恐ろしいほど淡々と積み上げる。

真っ赤に縁取るのは強化魔法か、流星のようにすり抜けて、瞬時に切り返してくる。

ズバン!

遂にかわしきれず、左の斧で受けたスヴァイレクが目をむく。

(まずい!!)

全力で下がったが、斧は柄だけ残し地に落ちた。

カランと乾いた音を立てたそれには刃が残っていなかった。

消されたのだ、ユアの光に。

門前の通路は石積みの大きな橋になっており、九十九折に繋がる場所には左右に塔がある。

右の塔に向け、決死のジャンプを試みるスヴァイレク。

一旦距離が欲しかったのだ。

城壁と同等の高さ3階まで飛んだスヴァイレクは悪寒を感じ身をひねり振り向く。

満月を背後に上段に構えたユアが至近距離に飛んでいた。

スヴァイレクよりも高く。

(くぅここまで読んでくるとは!?)

夕闇に黄金の輝きが爆ぜた。





城壁の角々に矢狭間を切った防御陣地が四隅にあった。

その一つの三角屋根の上、身長ほどの木のスタッフを持つ男。

大きな双葉が青々ついている。

レヴァントゥスであった。

隠蔽魔法を発動しており、飛び上がったアミュアを正面から見ていた。

(あの店で見た結界魔法の精度、強度。間違いなく強敵)

とんっと床に降り立ったアミュアの目線は、レヴァントゥスに真っすぐ向いている。

(しかも隠蔽など関係なく、こちらをターゲットしている。戦いたくなかったな)

隠蔽をあきらめ、先制のため高速詠唱を始めるレヴァントゥス。

ほぼ同時にアミュアはさらに飛びながら詠唱開始。

(複数制御とはすごい事を簡単そうにするな~、これは怪我くらいしちゃいそう)

心の中で余計な事を考えられるほどには、まだ余裕のあるレヴァントゥスであった。

彼の魔法発動の方が僅かに早いと見切っていた。

レヴァントゥスと同じ高さの屋根に降り立った瞬間アミュアの魔法が発動。

ゴウ?!

「ぐう!なんだと!!」

魔法発動ではなかった。

アミュアの魔力があふれ出している。

その圧で半歩下がらされたレヴァントゥス。

(漏洩魔力だけでこの圧!ありえん!!)

上級魔法を詠唱破棄して、即時発動の中級風結界を張った。

アミュアの唇が異世界の文言を吐く。

ソリス直伝の最上級異世界魔術。

「シュヴィルクスニス・シャルヴィヤ」

直後空が白銀に輝く。

シュゴオオオオオオォォォ!!

白銀のブレスがレヴァントゥスの立つ棟ごと薙ぎ払った。

上空でレビテーションを発動し停止したレヴァントゥス。

(ありえない…第四階梯?の攻撃魔法だと!古に失われた魔法だぞ!)

レヴァントゥスの防御結界が間に合わず、左足が凍り付き塵となり崩壊していく。

足元では崩壊しながら微粒子まで分解され散っていく塔が見えた。

極低温のドラゴンブレス。

走り抜けた息の速さより、その周囲すべてを凍結させる範囲が脅威だった。

停止と同時に唱えていた魔法を脂汗を滲ませ発動する。

「ドゥーススカルディヤ!!」

バシュ!!ガン!

音速の風魔法、範囲は絞ってあるが弾速が速い。

その円盤状の刃の風は、ピンポイントに右手に貼ったアミュアの結界で薙ぎ払われた。

「すこし、いそいでいます」

つぶやくアミュアの影になった両目から白銀の輝きが流れていく。

魔力が漏れているのだ。

向けられたロッドにはすでに10本近い氷の矢。

シュピピピピピッ

微妙な時差と別軌道をもって迫る矢を、スタッフと右手に貼った小さな結界で受けるレヴァントゥス。

レビテーションが切れ、斜めに落下しながら螺旋を描き回避していく。

落下した先に地面はなかった。





平均3人は同時に切り付けてくる。

キキン!

カーニャのレイピアが打ち払うのは、メイド達の持つ細身の短剣。

黒々と滲む刃には毒が仕込まれているだろうと、見て取れた。

(ただの麻痺毒でもこの乱戦では脅威だ)

獲物のリーチの差もあり、辛うじて馬車の側面で戦えているカーニャ。

強化魔法で全身を振り回し、エンチャントも既に入り輝くレイピアが走る。

馬車の周りを動き続け、しのいでいるのだ。

メイド達の練度は高く、魔法詠唱の隙がなかなか無い。

(馬車から離れられるら、魔法で薙ぎ払えるのに‥)

いかなカーニャでも、拠点を守りながら殲滅は難しいようで、少し焦りも見えた。

(少しづつ追い込まれている)

カーニャの顔には焦りが滲んだ。

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