表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/75

お砂糖増量中?



「それで……このピアスは、志乃に持っていて欲しいんだけど……」


「あ、そのピアス!」


ルーファスさんが持っていたのは、あの赤いピアスだった。


「このピアスと志乃の願いのお陰で、俺は死なずにすんだし、こっちの世界に来る事ができた。ありがとう。」


ーそうか。このピアスが……。だから、失くなっていたのか…ー


私は、素直にそのピアスを受け取る。

色々あったピアス。二度目の召喚の元となったピアスだけど、ルーファスさんを救えたのなら……良しとするしかないかなぁ?


「ルーファスさんが……無事で良かったです。それと、遅くなりましたけど……あの時は、助けてくれて、ありがとうございました。」


ペコリと頭を下げてお礼を言うと、「こちらこそ─だな」と、ルーファスさんはニッコリ微笑んだ。





それから暫く、千代様の空間で話をした後、『志乃、ルーファス、また遊びにいらっしゃい』と、千代様が手を振りながら見送ってくれて、私は菊花さんとルーファスさんの3人で地上へと戻って来た。


因みに、菊花さんは、独り暮らしをしている私の部屋の隣の部屋に住んでいる。


「菊花さんだけ狡くないか?」

「狡くないわ。私は、志乃様を護っているだけだもの!」


何故か、菊花さんとルーファスさんがバチバチと睨み合っている。


ー仲良し─になった?のかな?ー


暫く睨み合った後、ルーファスさんが「はぁ─」と溜め息を吐いた後、私の方へと向き直り


「次の土曜日は…空いてる?店を休みにしてるんだ。良かったら…ゆっくり話がしたい。」


「あ──はい。大丈夫です。私も…ゆっくり話がしたいです。」


「良かった。それじゃあ、土曜日の10時に迎えに来るから、家で待っててくれ。」


「はい。」


そう約束して、ルーファスさんはお店の近くにあると言う家に帰って行った。










翌日──


ルーファスさんは約束の時間通りにやって来た。

そのルーファスさんは、意外?にも、パーカーにデニムと言うラフな格好をしている─のに、どこからどう見てもイケメンモデルな人にしか見えない。


「車の免許までは、取れなかったから歩きだけど─」と言われてやって来たのは──


ルーファスさんのお家だった。




そのルーファスさんのお家は、ルーファスさんのお店の裏側にあり、L字型になった平屋の戸建てだった。


平屋の理由は「向こうの世界ででも、階段の昇り降りは面倒だったから」だそうだ。



案内されたのはリビングで、そこにはソファとローテーブルが置かれていてテレビもあり、こちらの世界では極々普通のリビングだ。


「座って待ってて」と言われて待っていると、甘い匂いがしてきて、暫くすると、ルーファスさんがパンケーキを持ってリビングに戻って来た。


「イチコやニコみたいにうまくは作れないんだけど…」


とテーブルの上に置かれたパンケーキは、普通にお店に出せるよね!?位のレベルのモノだった。「ありがとうございます」とお礼を言ってから、それを口にすると、それはやっぱりあのパンケーキだった。


「……美味しい…です。」

「なら良かった。」


フワリと優しく微笑むルーファスさんも、瞳の色が黒いだけで、以前と全く変わらない。


ー本当に、あのルーファスさんなんだー


「……志乃」


ルーファスさんは、少し困ったように笑いながら、テーブル越しに手を伸ばし、私の頬に触れた。

どうやら、私はまた泣いてしまっているらしい。本当に、最近は涙腺が緩みっぱなしで困る。


「あの、すみません。何と言うか…本当にルーファスさんなんだなぁ…と思ったら安心して……」


「志乃、そっちに行っても良い?」


「は……い」


横に座られるのは緊張するけど…近くに居られるのは、素直に嬉しいから───




なんて、思ってたんだけど


「えっと?」


ルーファスさんが座ったのは私の横ではなく、後ろだった。「ソファの下に座ってくれる?」と言われて素直にフカフカの絨毯の上に腰を下ろすと、私とソファの間にルーファスさんが入り込んで来た。


バックハグ状態──である。


お腹に手を回されて、私の右肩にルーファスさんの顔がある。


「近過ぎませんか?」


ー近過ぎるどころじゃないよね?ー


「───嫌だけど……嫌なら…離れる」

「──────」

「じゃあ、このままで……」

「ゔっ───」


と、更にキュッと抱き付かれた。


ー断れない自分が恨めしい!ー


恥ずかしいけど、本当にルーファスさんが居るんだと、実感できて安心しているのも確かだ。


ーよし、パンケーキを食べようー


「このパンケーキ、作るの大変だったんじゃないんですか?」


「うん。でも、このパンケーキだけは、ちゃんと作れるようになるまでイチコに特訓してもらったんだ。他のは…全然うまく作れなかったけど。」


「コレ、本当に美味しいです。あのパンケーキと同じで、見た目に裏切られまくりですよ。ふふっ」


ールーファスさんって、料理男子なんじゃない?ー


なんて、鼻歌が出る勢いでパンケーキを食べる。


「うん。前に、あのパンケーキを食べた時のウィステリアの顔が忘れられなくて。もう一度見たくて…俺だけに見せてもらいたくて、作れるように頑張ったんだ。」

「んぐ───っ!!」


ーこの距離でこのタイミングで砂糖口撃か!?ー


「──顔…見せて?見たいな………」

「…………」


ー彼氏居ない歴21年(+α2年)を苛めるのは止めて欲しいー


ググッと頑張って右肩の方に少しだけ顔を向けると、私をジッと見つめるルーファスさんと目が合った。


「顔…真っ赤で可愛い」

「ゔ───っ」


ーやっぱり、眼科に連れて行こうか!ー


なんて思っていると、そのまま右側の頬に軽くキスをされた。


「ふわぁっ!?」

「あー…本当に……可愛い……どうしよう……」


ー“どうしよう”って何だ!?ソレは(こっち)のセリフだろう!!ー


魔力もない私が、元騎士のルーファスさんの腕から逃れられる筈もなく、それから暫くの間はルーファスさんの腕の中に捕らわれたままとなったのは、言うまでもない。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ