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魔導士ウィステリア


*アレサンドル視点*




私の執務室で、聖女付きの護衛騎士の話をデレクとしていると、「聖女様の部屋で異変が起こってる。かなりのレベルの結界が張られている」と、魔導士であるメイナードが焦ったようにやって来た。

それから急いでエメラルド殿に充てがわれている部屋へと行くと、既に結界は解除されているようで、部屋の扉は開かれていて、その部屋の中から怒声が響いた。



「何をしている!?」


「「王太子殿下!?」」


少し遅れて部屋の中に入ってみれば、2人の騎士がエメラルド殿を囲み、もう1人の騎士が誰かに飛び掛かろうと───って!!??


「え?何で……ウィステリア殿とキッカ殿が?」


ーあれ?今日は登城するとか…予定があったか?ー


チラッと後ろに居るデレクに視線をやると、フルフルと首を横に振られたから、そんな予定は無かったと言う事だ。


「あー……すみません。後で言いわ─説明させていただきます。」


と、ウィステリア殿がペコリと頭を下げた。







兎に角、ややこしくなる前に、エメラルド殿付きの騎士と女官はその部屋で待機させておき、私はウィステリア殿とエメラルド殿とキッカ殿を連れて、私の執務室に戻ってきた。





「すみません。私、ちょっとプチンッ─とキレてしまって…」


と、ウィステリア殿が申し訳無さそうに前置きをしてから、自分がキレた以降の話をしてくれた。




あの魔犬が操られていて、餌と認識されていたウィステリア殿を襲って来た事。それが、4年前にウィステリア殿に負かされた脳筋で、現在は聖女エメラルド付きの護衛騎士だった事。

エメラルド殿がウィステリア殿の事を良く思っていない事を知っていた、その脳筋が、ウィステリア殿を片付けようとした事──それを知っていながら、エメラルド殿が見て見ぬふりをしていた事。


まさか、エメラルド殿がそこまでウィステリア殿の事を疎ましく思っているとは思わなかった。


そこまで、エメラルド殿はルーファスの事を想っていたのか?いや、想っていなかっただろう。

エメラルド殿のルーファスへの執着は、子供の“あの玩具が欲しい”位のモノだったように思う。ただそのルーファス(玩具)が手に入らない、思い通りにならないから、より執着しただけのように思う。


きっと、今迄の人生、自分の思い通りになったタイプの人間なんだろう。本当に厄介な聖女様だ。


ーそれにしても、ここまで言われて言い訳の一つや二つ言わずに黙っているエメラルド殿も珍しいなー


ふと思い、エメラルド殿に視線を向けると、何故かフルフルと震えている。


「エメラルド殿…どうかし───」

「あ、今、エメラルドには黙ってもらってるんです。今、口を挟まれると…ややこしくなるし、話が進まないので……」


と、しれッと答えるウィステリア殿。


「黙ってもらってる??」


「────エメラルドの真名を…掌握してます」


「─────そうか…………」


ー恐ろしい事をサラッと言われたなー


魔力が減った──と言っているウィステリア殿だが、事実、減ったところで魔導士としては全く問題無い魔力量を維持している事に、本人は全く気付いていないから……質が悪い。本人には言わないが……。


「それで、何故、その騎士が、あの日ウィステリア殿があの場所に居る事を知ったのだ?」


()()()()だったそうです。」







あの日、その騎士はまた、女神の湖を調べる為にやって来ていて、そこに偶々、ウィステリア殿がやって来て、その騎士が行動を起こした。その上、偶々予定変更で急遽お忍び視察でやって来た私達が合流してしまい、結果、崇拝している聖女エメラルド殿にとっては、ルーファスを喪ってしまう─という結果になってしまったそうだ。


「兎に角、王城に無断侵入してすみませんでした。」


頭を下げて謝るウィステリア殿。


「頭をあげてくれ。謝るのは…私達の方だ。ウィステリア殿、本当に……色々とすまない。今回の事は助かった。それで……この後の事─処遇については、どうしたい?何か希望などはあるか?」


パッと頭を上げて、少し思案した後


「いえ、特には。騎士については、アレサンドル様にお任せします。ただ、エメラルドの処遇に関しては……私に預からせてもらえますか?まぁ……アイリーン様待ちにはなりますけど……」


“アイリーン様待ち”


ーまた、えらいワードが出て来たなー


何だ?その、“ちょっと、友達を待ってます”みたいなノリは……いや、敢えて突っ込まないが─。


「んんっ─分かった。騎士の方は、私が責任を持って処罰しておく。エメラルド殿も、責任を持って…預っておく。」


「はい、ありがとうございます。宜しくお願いします。」


ウィステリア殿は笑顔だったが、その後ろに控えていたキッカ殿の、私への圧は、半端無かった。






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