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反撃


「私……キレても…良い…よね?」

「はい。キレても良いです。私を殴っていただいても結構です。」

「キッカさん!?え!?いつからそこに!?」

「すみません。何度かノックはしたんですけど…。入って来たのは今ですが…基本、私は妖狐─狐なので耳が良いんです。なので……『だって…私は何も悪い事なんてしてない。なのに、何で…色んなモノを奪われないといけないの!?』辺りから聞こえてました」


ーいや、それ、“辺りから”じゃなくて、“最初から最後迄全部聞いてた”の間違いだからね?ー


「えっと……」

「ウィステリア様──志乃様が謝る必要はありません。微塵も謝る必要はありません。非は全て私─菊花(きくか)にありますから。すみませんでした。」


と、またリアル土下座をされた。


“そんな事ない”“気にしないで”とは言えない。それでも、もう終わった事で仕方の無い事だ。今叫んだのも……責めるつもりはなくて、叫んでスッキリしたかったから─だ。


「はい、キッカ──キクカ?さんの謝罪は受け入れました。だから、顔を上げて下さい。」


土下座のまま顔だけ上げるキッカさん。


「もう怒ってませんから。それに…キッカさんには色々と助けてもらいましたからね。それで……相殺です。」


「──志乃様は…優し過ぎます。」


何故か少し拗ねているキッカさん。


「優しくないよ。だって、これから私はキッカさんに色々とお願いをする予定だし、そのお願いに……“否”とは言わせないつもりだから。」


ニッコリ微笑むと、キッカさんは一瞬ポカン─とした後「望むところです!」と、笑った。








***



「エメラルド……よくも…やってくれたよね?」


「なっ……ウィステリア!?」


ここは、王城内にあるエメラルドに充てがわれている部屋。アレサンドル様をはじめ護衛の騎士達には申し訳無いけど、許可も取らずキッカさんにお願いをして転移して来た。同時に、この部屋全体に結界を張ってもらった。


ー誰にも邪魔なんてさせないー


「一体どこから……無断でやって来て……良いと思ってるの!?」


「ふふっ─そんな事、エメラルドだけには言われたくない。部屋に無断侵入する位、大した事じゃないよね?───人の命を奪うよりは」


「──人の…命?」


本当に分かっていないのか演技なのかは、この際どうでも良い。どうせ、何を訊いてもとぼけられるだけだ。





叫んで愚痴って…少し落ち着いた後、キッカさんと共に“女神の湖”に戻って、色々調べてみたのだ。

何故、あの場所、あのタイミングで魔犬が現れたのか。もし、誰かが故意的にあの魔犬を呼び寄せたとしたら、その痕跡が残っているのでは?と思ったからだ。魔導士団長クラスにもなると、魔力の跡を辿れると言っていた。なら、私は無理でも、キッカさんなら──そして、キッカさんは、その痕跡を見付けたのだ。

その痕跡を追うと、王城へと辿り着いた。

ソレは、エメラルドのモノではなかったけど、エメラルド付きの護衛騎士のモノだった。

その護衛騎士には見覚えがあった。4年前に、合同訓練で私に負けたあの騎士だった。

その騎士を捕まえてみれば


「どうしてお前がここに居る!?お前は今頃魔犬に───っ!?」


なんて、拍子抜けする程ポロッと言ったのだ。


ー相変わらずの脳筋ぶりだよね?大丈夫?ー


「魔犬が、自分の仕業だと認めるんだね?」

「─ちがっ──」


“違う”なんて言わせない。

言わせる前に、拘束魔法を掛けて吐かせるだけ吐かせた後は───黙らせた。


あの騎士は()()


後は、エメラルドがどう関わっていたか──





ー“知らなかった”なんて言わせないー


聖女であろうが愛し子であろうが、後で私も罰を喰らおうが、もうエメラルドを赦せる範囲は……超えてしまったから。


否。正直、罰を喰らうつもりも無い。だって──


ー私は、アイリーン様には……()()があるよね?ー


目覚めたら、キッチリ返してもらうから。罰を喰らうなんて気は……全く無い。



「エメラルド付きの護衛騎士が、魔犬を操って私を襲って来たのよ。」


あの魔犬は、私の魔力に反応して現れるように仕込まれていた。私の魔力が、まるで“餌”であるかのように。


魔導士は、魔力が枯渇すれば命に関わって来る為、予め自分の魔力を魔石に溜めて置いて、いざと言う時に使用する事になっている。そんな私の魔力を込めて保管していた魔石を、あの騎士が盗み出し、その魔力を魔犬に与えていたのだ。


ーそもそも、4年前に私が還った時に破棄しておくべきだったんじゃないかなぁ?アレサンドル様への苦情案件だー


「エメラルドは…どこまで知っていたの?」


「どこまで?私は何も知らないわ。今、初めて聞いて……本当に驚いているんだから。でも……ウィステリアはこうして無事なんだから、問題無いじゃない?」


ふふっ─と笑うエメラルドのその笑顔が、初めて醜いモノに見えた。


「“問題無い”ね…。大ありだからね。私、言ったよね?“人の命を奪うよりはましだ”って。意味、分かる?たしか、高校では、成績優秀だったと思ってたけど……思い違いだった?なら、1から説明した方が良いかなぁ?」


「なっ────」

()()()に落ちたのは………ルーファスさんだから」

「─────え?」



ーさぁ、エメラルド。貴方は一体、()()()()()をくれるの?ー



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