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二度目の召喚なんて、聞いてません!  作者: みん
二度目の召喚

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52/75

動き始める



「ルーファスさん!」

「ウィステリア殿!!」


ルーファスさんの腕を掴もうと伸ばした手を、アレサンドル様に掴まれて、アレサンドル様の方へと引き寄せられた。


「アレサンドル様離して!ルーファスさんが──」


ー何で!?何で助けられない?ー



『ウィステリアが無事で…良かった……』


ー良くない!私が無事でも、ルーファスさんが無事じゃない!ー



『もう……無理だ。ウィステリア……』


ー無理じゃない!無理じゃ……ないっー



『…必ず……元の世界に還れ……』


ー還るから!だから、ルーファスさんも…ー



「ルーファスさん────っ!」

「ウィステリア殿、落ち着いてくれ!」

「だって、だって──」


アレサンドル様の腕の中でもがきながら、アレサンドル様を見上げると…苦痛に耐えるような顔をしたアレサンドル様が湖に視線を向けていた。


「──迷信では無いんだ。ここ百年程は記録に無かったが……湖に落ちても戻って来れる者もいたが、殆どの者が……戻って来れなかったんだ。」


戻って来れた人達は、湖に沈む事もなかった。

それとは逆に、沈んで行ってしまう場合は───


二度と戻っては来れなかった。




七色に光る湖面は、今は何もなかったように凪いでいる。



魔犬は、護衛の人達とアレサンドル様とキッカさんとで倒されていた。呆然と立ち尽くす私に、キッカさんが何かを言っていた──気がするけど、何を言っていたのかは覚えていない。


気が付いた時には、王都の邸の自分の部屋のベッドの上で、イチコとニコが狐姿で私の右腕と左腕にくっついていた。



それからの記憶も曖昧だった。


いつもと変わらないような日常。相変わらず私の魔力は戻らない。寧ろ、弱くなっているような気もする。


「私…何で…ここに居るんだろう?」


ここに来てから、どれ位経った?後、どれ位ここに居なきゃいけない?




「リア──」


「……バーミリオン…さん……」


いつの間にか、バーミリオンさんがベッドサイドに座っていた。


「アレサンドル様から聞いて……。大丈夫か?」

「────大丈夫……じゃ……なかった。肩から…たくさん血が流れてて…私なんかを…庇ったせいで────っ」

「リア……」

「う───っ………」


バーミリオンさんは、何も言わずに、私の背中を優しく撫でてくれて……私は、そこでようやく泣く事ができた。








あれからたくさん泣いた。心配して来てくれたエラさんの顔を見て、また更に泣いた。

もう泣けない─と思った頃、アズールさんが来てくれて……また─()()泣けた。

イチコもニコもずっと私に寄り添ってくれている。


女魔導士な私にも、私を心配してくれる人達が居る。

ただ……そこに、ルーファスさんだけが……居なくなってしまっただけだった。




『…必ず……元の世界に還れ……』


最後に見たルーファスさんは…やっぱり笑っていた。


なら、私も笑わないと──だよね?そして、何が何でも元の世界に還る。“無理”や“駄目”なんて言わせない。それがキッカさんでもアイリーン様でも、千代様でも言わせない。


「だって…私は何も悪い事なんてしてない。なのに、何で…色んなモノを奪われないといけないの!?」


そこで、私の中の()()がプツリと切れた。


「そもそも、5年も眠り続けるって……怠慢じゃない?毎年召喚する訳じゃないんだから、魔力?神力?を溜めておいたら良くない?キッカさんの油断も…突っ込みたくなるけど、そもそも、妖狐1人に任せっ切りって事もどうなの!?案件じゃないかなぁ!?せめて2人1組にしてれば、今回の問題も起きなかったんじゃないかなぁ?」


そうしたら……ルーファスさんは今でもこの世界で生きていて、私も元の世界で少しずつ風化させながら生きていたのに。


「………」


ー駄目だ!しっかりしろ!私!ー


必ず還るから──


その前に………


「私……キレても…良い…よね?」











*アレサンドル執務室にて*



「あの騎士はどうだった?」

「やっぱり駄目だね。“自主的にやった”としか言わない。」

「そうか……」


私とデレクはため息を吐く。




『“女神の湖”に足繁く通っている騎士が居る。』


そう報告を受け調べてみると、その騎士はエメラルド殿付きの護衛騎士だった。更に調べてみると、その騎士は湖に訪れる度に色んなモノを湖に放り投げていたそうだ。

何が沈んで、何が沈まないのか─を確かめるように。

それに、あの魔犬。実は、“女神の湖”周辺に魔獣が出た─と言う記録は今迄に一度も無い。その為、あの魔犬も誰かが仕込んでいた可能性がある。


「こうなったら……聖女様に直接訊くしかないか?」


喩え愛し子であろうとも──もう赦される範囲はとっくに超えているだろう。



『ルーファスさん!』



あんなに必死に叫ぶ──感情を顕にしたウィステリア殿を初めて見た。

自分がどんな事をされても何も言わなかったウィステリア殿が──だ。



『いっぱい泣いてたよ』


アズール殿からそう聞いた時、正直ホッとした。私の前では一切泣かなかったから。

今にでも崩れ落ちそうになりながら立っていた。

今にでも泣きそうなのに泣けない表情だった。

そんなウィステリア殿を見ているのは辛かったが…。




「泣ける場所があって……良かった……」





後は……任せろ、ルーファス───






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