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一歩前進

「ウィステリア殿が蛇の魔獣と対峙している姿を目にした時には、好きになっていたと思う。」


いきなりの告白から始まったシーヴァーさんの話は、驚きの連続だった。


「気が付けば、いつも目で追っていた」

「“リア”と呼んでいたバーミリオン殿が羨ましかった。」

「名前呼びを拒否された事がショックだった」

「エメラルド殿ではなく、ウィステリア殿の側に居たかった」


ーぐはっ──もう、恥ずかしいから黙って欲しい!ー


「還った─と聞いた時、信じたくなくて…でも、本当に居なくなっていて……“何故、ウィステリア殿が居ないのに、エメラルド殿が居るのか”とさえ思った。」


同時に、その時初めて、周りから自分達の事がどう見えていたのかを知ったそうだ。


“聖女エメラルドとルーファスはお似合いの2人”


「微笑み合う2人は素敵だと言われて、俺は笑うのを止めたんだ。」


ー止めた?え?でも、笑ってる…よね?ー


「俺が笑う─微笑むのは、ウィステリア殿だけで良いと思ってる。」


ーぐぅ──っー


言葉がダイレクト過ぎる!いやいやいや!ちょっと待とうか!ちょっとおかしくないかな!?私は見たんだ。あの、満月の綺麗な夜。銀色の光がキラキラと輝いていた、あの夜に、2人のやり取りを見て…今でもあの時の胸の痛みを覚えている。


「私、見たんです。エメラルドの色の石が着いた短剣?を、シーヴァーさんが受け取って…微笑み合ってるところを………」


本当に、お似合いだなと思った──から…“好きかも?”と言う気持ちに蓋をしたんだ。

結局、この4年…忘れられなかったんだけど…。


「エメラルド殿の色の…短剣?───あぁ!あの短剣は、その色の通り、エメラルド殿の短剣だ。」


「……エメラルドの……短剣?」


「そう。聖女には、神殿からその者の色の石が着いた短剣が進呈されるんだ。その短剣の手入れを頼まれて、受け取った時だと思う。」


「───かっ……」


ーまさかの勘違い!!!ー


「他には?何か…俺に訊きたい事は無い?」


そう言って、少し困ったように笑うシーヴァーさんの目はやっぱり優しい。


「言葉にしないと分からない。笑ってるだけじゃ伝わらないから、俺は、もっとウィステリア殿と話をしたいと思ってる。何かあったら、何でも訊いて欲しい。もう……勘違いしたり、勘違いされるのは……懲り懲りなんだ。」


「色んな質問をして、鬱陶しいかもしれませんよ?」

「ウィステリア殿と話せるなら、嬉しいしか無いと思う。」


「この世界に居る間、シーヴァーさんの事、いいように扱うかもしれませんよ?」

「望むところだな」


「………私、1年後には…また、還るかも…しれませんよ?」

「ウィステリア殿がそれを選ぶなら…俺は…本当は嫌だけど、笑って…送り出す。ウィステリア殿にはウィステリア殿の路が…あるだろうから。それでも、それ迄でも側に居たいと思ってる。」


「………」


ー駄目だ……何を言っても……砂糖しか返って来ないー


ジッ─と、シーヴァーさんを見つめていると、その綺麗な赤色の瞳が、更に嬉しそうに細められた。


イケメンが微笑むと、何でも許してしまう─と言う気持ちがよく分かった気がするのは、私だけだろうか?いやいや、“許す”って何だ!?


「兎に角、ウィステリア殿がこの世界に居る間は……俺がウィステリア殿の側に居る事を……許してもらいたい。」


「………」


「駄目……だろうか?」


「──くっ………」


卑怯だ!イケメンは、自分の顔が武器になる事を知っているんだ!


「ゆ───許します……けど!物理的にも精神的にも、それなりの距離は保って下さい!」

「分かった、ありがとう。それで、“リア”と呼んでも?」

「え?それは無理です!」

「えー…また…即答…………」

「それじゃあ、せめて俺の事は家名ではなく“ルーファス”と呼んでくれないか?」


いや、それもできれば遠慮したい──けど……


「……ルーファス…さん?」


ポツリ─と呟くと、一瞬キョトン─とした後、それはそれは眩しいほどの笑顔になった。


ーやっぱり、イケメンの笑顔は武器だー


バクバクと音を立てて騒ぎ出した心臓を、グッと押さえ付けた。




それから、今度またお茶をする約束をしたところで、キッカさんとアレサンドル様が戻って来た為、そこからはまた4人で話をした後、そろそろ帰ろう─となった。


「ウィステリア殿、これから…どうする?バーミリオンやエラ殿や魔導士達は、ウィステリア殿に会えれば喜ぶとは思うが…」


正直、騎士の人達には会いたくない。でも、バーミリオンさんやエラさんや魔導士の人達には会いたい…。


「バーミリオンさんとエラさん…魔導士の人達には会いたいです。」


「分かった。うまく調整するから、また連絡するよ。」


本当に、アレサンドル様の私への気遣いは半端無い。きっと、将来良い王様に…なるんじゃないかなぁ?


「ありがとうございます。お願いします。」


そう言った後、私とキッカさんは、転移魔法でキッカさんの邸へと転移した。






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