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国守の愛 第1章      作者: 國生さゆり  
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富士子編  75 強襲



 シーン75 強襲



 鈍く覚醒した富士子には両足の感覚がなかった。



  乾いた音が“トスッ“ と聞こえる。



 その音が船底の隔壁かくへきに反響して重みを増し、富士子の耳に残響がのしかかる。

 富士子は持てる力の全てを使って頭を上げるが、にじむ画角はらいでピンボケだった。



 その瞳にうつるは開いた正面ドア前に立つ、マットブラックの男が三人。




 男たちはFN F2000のポインターが放つ深紅の線光をあらゆる側壁に走らせながら1人は富士子に、1人は一瞬、躊躇ちゅうちょしながらも先行した男の後を猛追し、大男は1人左手に進撃する。



 大男はトスッ、トスッ、トスッとFN F2000を連射させ、不意ふいを突かれた敵1人をダウンさせ、天井まで積み上げられ、固定されている大型木箱に取り付いて身を隠した。



 最初に富士子の元へと走った男は左膝ひざを付いて、富士子の左側にスライディングして取り付き、富士子の冷え切った左手首を男は左手で支え、右手に持つ小型ペンチで力強く、富士子を繋ぐ手錠のくさりを切断し、その直後[送る。イエーガーから総員、富士子確保。生存確認] と怜悧れいりに告げる。イエーガーが富士子の左手首の傷を人差し指で薄くで「チッ」と舌打ちする。富士子の顔をのぞき込んだイエーガーの瞳が揺れる。イエーガーは富士子の耳元に素早く顔を近づけ「あなたは助かります。元気でいて下さい」と場違いなおだやかさで言った。



 わたしは…この人を……知って、い、る。なま…えは…、、、

  


 その富士子の目を見たイエーガーは目を見開いて立ち上がり「フレミング!!!!」ととどろかせた。遅れて到着したフレミングは、富士子の右前方に立ちはだかっていた。イエーガーは即座そくざにフレミングと入れ変わり、フレミングは富士子の負傷度合いを確認し始める。



 木箱の周囲で銃撃戦が散発的に始まり、木箱の影に身を隠した大男は絶妙なタイミングで一発ずつ打ち続け、ワンダウンさせ、1人をその場に釘付けにしていた。



 フレミングが「イエーガー!!了!!!」と叫ぶ。その絶叫を聞いたイエーガーは「撤収 !!!」と声を張るが、すぐさまFN F2000を乱射させながら、鬼神のごとく前方に走り出す。



 イエーガーが目指すはスパルタンだった。物陰にんで弾丸を避けたスパルタンが右手に赤い線光を放つグロック27を持ち、かまえ、さだめる。



 赤い線光がすは富士子の頭部!!!!!



 今にも引き金を引こうとするスパルタンを強襲したイエーガーは、スパルタンにおおいかぶさり、その直後くぐもった発射音が2発きこえ、富士子の前に左膝ひざを付いたフレミングは発射音を聞くや、ただちに富士子を肩車してきびすを返して走り出す。



 木箱の影からそれを見た大男はFN F2000を乱射させながら、富士子の前に捨て身で走り出た。



 富士子が肩にかつがれる瞬間、目にしたものはスパルタンにおおいかぶさったイエーガーが、もがきながらもスパルタンを押しやり、船倉の赤い闇に飲まれ、消えていく姿だった。




  乾いた銃声が一つ響く。







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