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当然のごとく水着回

 イベントも終わりややあって俺はリーダー氏、カナンと酒を囲む生活に戻っていた

 しかし今日はリーダー氏から重要な話があると切り出されている。席に座ったたたずまいも少し雰囲気が違うように思えた


「ピタゴラスさん。ステータスはいかほどになりましたか?」


「……イベントのお陰で三ほど上がった。MPは二程度増えたな」


 リーダー氏に俺は簡単に答える


 レベル十、HP七、MP四、Atk四、Def四だったのが

 レベル十三、HP八、MP六、Atk四、Def四になった


 鉢巻きを取ってただけとはいえ、経験値になるのならカナンの手伝い抜きにしても参加して良かったと思う


「ふむ……では本日の訓練は実践でいきましょう」


 実践となと俺は首を捻った

 今までも実践的だった気がする


「ピタゴラスさんに本格的な攻略を手伝っていただこうかと思います」


「ば、バカ。ガチ勢に交じって攻略なんて俺命いくらあっても……」


 俺の情けない言い分に、そーだそーだと便乗してくれるカナンがいた。いいぞ


「本日はもう一人来ますのでカナンさんと二人きりで冒険できますね」


 なにっ、よくわからないがカナンと二人きりになれるだと!?


「因みに目的地はアトランティス入り口。水着は必須です」


 よくわからないが水着のカナンが独り占めだと!?


「えっ、水着? なんで!?」


「ビーチといえば水着なのです

 カナンさん貴方も着替えなさい。買った分が無駄になります」


 リーダー氏はカナンをかわし、ここぞとばかりに畳み掛ける

 しれっと言えるリーダー氏はスゴいと心から思った


「あたしの分まで買っちゃったなんて……その、どんな?」


「安心なさい、選ぶ権利はあげます

 そのくらいの想定はして然るべきですから」


 リーダー氏はそういって席を立つととことことカナンの座る後ろへ陣取った

 悪い顔をしてらっしゃる


「……もしかしてこれ感謝するところなのかなぁピタゴラス」


 カナンは人差し指で顔を掻く。俺は神妙に頷いた

 リーダー氏は無視して端末を操作していた


「ちょっとこっちに来てくださいカナンさん

 悪いようにはしません」


「な、なんかヤ。ピタゴラスー! 助けてーっ!」


 カナンは悲しみ俺の方へ腕をパタパタさせる

 でも結局歩いてるんだよなぁ。多分カナンはリーダー氏を信用してるんだ。俺は良いように考えた


 しばらく二人を観察してると密着しながら、これ布少ないだとか、見えちゃうよだとか聞こえた

 その間俺は完全に蚊帳の外だったが二人が何をみているのか非常に興味があったためか暇ではなかった


「よう。ピタゴラス」


 そんな中、不意に肩を叩かれた

 この声には覚えがある


 振り返ると俺は見知った顔にああ、と答える

 相変わらず浦島太郎を思わせる和装だった


「お取り込み中のようだし……また今度」


 メイはそういって名残惜しそうに肩から手を離した

 俺に微笑を浮かべてそのまま歩いていき、釣竿ではなく二本の刀を重なるように背負っていることを確認すると酒場から出ていってしまった


 その様子から預かれ、と言われた鉢巻きを貰ってしまったことは正解だったらしいことが窺える

 正直、殴られるかとも思ったため一安心だ


「ピタゴラス。これなんかどうでしょうかー」


 リーダー氏の呼び掛けに、俺は席を立った




 俺、カナン、リーダー氏の三人はプレイヤー達がクリアした領域は自由に転移できるという転移石に触れ、目的のアトランティス入り口に移動した


「海だー!」


 水着に着替えていたカナンは興奮気味に叫んだ

 散々頭を悩ましたあげく競泳水着にしたらしいが、自身のキャラクリ能力が高かったためか、体育会系のプロポーションとは思えぬ豊かなものだったためかとても目立っていた


「う、うえええい!」


 きっと恥じらいもあるのだろう

 普段突破しないようなテンションに到達し海へ一直線に走る


「あうっ」


 ミザリーと遊ぶプレイヤー達とその視線を掻い潜ったかと思えば、躓いて顔から転んでしまったようであった

 そのままマグロのように動かない


「……収まりがつかなくなっているようですね」


 俺に並び立ち、リーダー氏は頭を抱える


 リーダー氏は当然のごとく白ビキニであった

 所々に花の模様があり只でさえ幼い印象を更に強める形にしていた


 面と向かってのコメントは控えたいが

 とても良い趣味をしてらっしゃると感じた


「おーい、カナン。大丈夫かー」


 俺の声にぴくりと反応するがカナンはやはりうつ伏せのままだ

 これは重症だな


「……まぁ助っ人を呼んだ甲斐があったというものですね

 カモン、エル!」


 リーダー氏はすっと片手をあげる。なにも俺の立つ方の腕をあげなくともいいのにと思えるほどの余裕があった後、空からそれは現れた


「ま、まぁああっ!」


 カナンの断末魔もむなしく、それはカナンの両脇を抱え、大空へ飛翔する

 姿はよく見えなかったが、リーダー氏の知り合いなら大丈夫だろう


「……エルめ。後でお仕置きです」


 リーダー氏はあげた片手をぷるぷるさせてそう呟いた

 もう下げても宜しいのですよ?


「ウィンドレイジ!」


 ま、まぁああ!


「どうです? 空の旅は」


 宙でぐるんぐるんしてて酔いそうな中、隣で涼しいかおをして飛んでるエルフ幼女をどうにか殴れないかと俺は足掻いていた




「エルさん! ステイ!」


 リーダー氏の声と共に俺の宙返りも止まる

 自由になったと思えば下は一面海なので肝が冷えた


「だ、大丈夫? ピタゴラス」


 脇の下を掴まれる形で捕まったカナンが近付いての一言

 俺は二回ほど頭を上下させた


 エルさんという人がまさに天使のような姿であった為か

 それに捕まるカナンがいつもより輝いて見えた


「ピタゴラスさん、カナンさん。二人に今より潜水していただきます」


 リーダー氏の発言に本気なのかと俺は振り返る

 真剣な顔をしてらっしゃった


「突然の話でピタゴラスさんには申し訳ありませんが、内容に変更はありません。カナンさんと二人で行ってもらいます」


 リーダー氏の言葉に逆に不安は増した

 確かにそれはとても楽しいものなのかもしれないが、結局のところカナンに頼るのは変わりない


「……大丈夫なのか? カナン」


 エル氏によって浮かぶカナンさんえっ、との一言

 これは問題ですねぇ


「ピタゴラスさん。わたしたちがサポートするのはカナンさんであって、貴方ではないのですよ?」


 一分ともたなそうだなぁ

 リーダー氏の衝撃告白に俺はどこか他人事のように思った


「大丈夫です。ピタゴラスさん。なにしろ、ピタゴラスさんには強い味方がいますから」


 ……もしかしてセイレーンのことか

 いやしかし、と声にだし主にMP面で頭を悩ませていると


「恐らくですが、ここは貴方のセイクリッドとの親和性が高い筈です。地上ほどの負担はかからなくなるかと」


 俺の背後を陣取るリーダー氏はわざわざ肩に手を置き耳に直接息がかかるような位置で静かに告げた

 色々集中できなくなるからやめなさい!


「……大丈夫、なんだよね? リーダーちゃん」


 リーダー氏は俺の背から離れ、カナンにええ、と簡潔に答えた


「いざとなればカナンさんがピタゴラスさんを引っ張りあげれば宜しい」


「引っ張りあげる……ね。あたしに二人の風魔法を当てるっていうのはわかったけど上手くいく?」


 俺の背後に存在するであろうリーダー氏をまるで射ぬくかのような目でカナンは問うた

 それにふっ、とリーダー氏は一息する


「心配なら、密着していなさい。それが確実です」


 いやちょっと待て。話が違う!

 俺はカナンを確認することより、リーダー氏に振り返って抗議しようとした


「ウィンドレイジ、か、い、じょ」


 パチン、とリーダー氏は手を合わせひきつった笑顔で詠唱する

 まじか


「落ちながら呼ぶことをおすすめしますー!」


「うおおぉーっ!」


 リーダー氏のアドバイスは元より

 ぐんぐん海面が近付いてきてまずいと直感する


「助けてくれ“セイレーン”!」


 俺は声の限り叫んだ

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