静寂
朝6時25分~桐嶋家~
拓は薄暗い部屋の中で上半身を起こしたままベッドの上に座っていた。
そして昨日の龍二の発言を思い返していた。
「おい!なんだよ?どうした?」
拓は混乱してた。
「俺達はしばらく会わない方がいい」と龍二は小声で言った。
「な、何言いだすんだよ?」拓は龍二の胸倉をつかんだ。
その瞬間、龍二の目つきが変わった。
「はなせ!!」龍二の大声に拓はつかんだ手を緩めた。
龍二も怒りの顔をとっさに抑えた。
「俺はもうお前の姿を見ていられないだ」
「いったい何があったんだ?」
混乱する拓に対し、冷静に龍二は喋る。
「お前が喧嘩するのを見てるとうずくんだよ。頭で理解しても体が言うことを聞かなくなってるのが最近分かるんだ」
「どういう意味だ?」
「つまり・・・俺はお前、拓とタイマンしたい」
「タイマン?」
「あぁ、自分の力を試したい訳じゃない。お前を支配したいんだ!何も考えずにただ喧嘩が好きなお前が誰かと喧嘩するたびに相手は何かを感じ何か楽しんでるのが俺には分かる」
「俺とタイマンはってお前も何か気付きたいのか?」
「バカな話だけどそうだ。俺はあれこれと色々考えちまう、その考える脳が弾けたのかもしれない」
拓は次第と龍二の言っている意味が分かってきた。
「そういうことなら仕方ないなぁ」
「俺とタイマンしてくれるか?」
「もちろん!ただ俺も本気でぶつかり合うには少し時間がほしい」
「そうか・・・なら準備が出来たら教えてくれ」
「あぁ・・・」
「じゃなぁ」
拓は龍二の背中を静かに見つめた。
ふっと我に返る。
部屋はカーテンの隙間から入る太陽の光で明るくなっていた。
小さな置時計を見ると6時54分になっていた。
拓は学校へ行く支度をする。
そして学校へ着き龍二の席を見るが、そこに龍二の姿は無かった。
一方、龍二は自分の部屋の中で横になって、目を開けたまま龍二も考えていた。
龍二は部屋にある熊のぬいぐるみに問いかけた。「これが正しい考えだよな?」
ぬいぐるみはカーペットの上に座ったままうんともすんとも言わない。
「お前もだんまりかよ。結局自分で考えないといけないのかよ」
龍二はこの日学校には行かず、私服に着替え家を出た。