常識って何?の話
息子に助けてもらった話
ある時、夫がテレビを見ながら、木刀で素振りをするようになりました。
「室内で素振りなんて、やめてほしい。
やるなら外でして」
私は何度も頼みました。
「大丈夫だよ」
それは、夫の口癖でした。
そして、大丈夫ではなかった出来事は、すべて夫の記憶から消えています。
だいたいの尻ぬぐいをするのは私です。
自分で責任を取ったことがないので、「結果」が起きた後の始末が、どれほど大変なのかをまったく理解していないのです。
「お願いだから、やめてほしい。部屋の中で木刀を振るなんて、非常識だよ。
手が滑って木刀が飛んだら、テレビが壊れる。
テレビがいくらすると思っているの?」
「そんなことにはならないから、大丈夫。素振りは室内でするものだ」
夫と私は言い合いになりました。
いつの間にか論点は、
室内で素振りをすることが「非常識」なのか、それとも「常識」なのか、
という話にすり替わっていました。
「お前が神経質なんだよ! だったら、健に聞いてみろ!」
夫が言いました。
私は健君にLINEを送りました。
「お父さんがテレビの前で木刀の素振りをしている。いくら止めてもやめてくれない。
私は、室内で素振りなんて非常識極まりないと思うのだけど……」
健君から返信が来ました。
「放っておきなよ。言ってもダメでしょ?」
「放っておいてテレビをぶっ壊したら、結局、私が全部後始末する羽目になるんだよ。
放っておけるわけないじゃん」
私は健君に泣きつきました。
「健は何て言っている? 『してもいい』って言っているだろ?」
夫が勝ち誇ったように私に尋ねました。
すると、健君から電話がかかってきました。
スピーカーにして、夫と一緒に聞きます。
「僕には、室内での素振りが『常識の範囲内』なのか、『非常識』なのかは判断できません。
僕個人が決めることではないです。
でも、家族が嫌がっていることを続けるのが『常識』なのか。
まず、それを考えるべきじゃないですか?」
そう言って、電話は切れました。
夫は黙り込みました。
「私、何度も『やめてください』って言い続けましたよね?」
夫に向かって言いました。
「分かったよ……。お前がいる時はやらない」
夫が言います。
いや、そういうことではありません。
「それだけじゃなくて、手を滑らせて事故になった場合――たとえば、テレビの液晶が割れたとか、そうなった時の後始末は自分でしてください。
私は一切しません。
修理や買い替えの費用も、自分で何とかしてください。家計からは一切出しません!」
夫は黙りました。
それ以来、木刀は別の部屋の隅に置かれております。
### 余談
そのすぐ後のことでした。
テレビで、こんなニュースが流れました。
「レオパレスは、自宅の窓に男性のシルエットを投影する防犯施策『Man on the Curtain』を発表しました。ひとり暮らしの女性を狙う住居侵入犯罪を防ぐことが目的です」
私は目が遠くなりましたです……。
皮肉にもほどがあります。
でも、夫はそれを見ても何も言いませんでした。
「男性のシルエットだけなら、木刀を振り回さないから安全だよね」
とはチャッピー談(笑)
今までの話を読んだ方は
「何で離婚しないの?」
と思われると思います。
したくてもできなかった。
だから、還暦過ぎて限界が来て「病んだ」のです
そして、病んだせいで、余計に逃げ出せなくなった・・・
そういう話なので「離婚したら?」は言わないでください




