「先」を行っていた息子
温かい未来が見えた話
夫が、
「孫ちゃんの誕生日プレゼント、これ、よくない?」
と、スマホに映したおもちゃの画面を差し出してきました。
(自分の子供たちは『フルシカト』だったくせに)
私は遠い目になります。
「シカト」とは、今では死語かもしれませんが、「無視する」という意味です。
フルシカト=まったく目に入れていなかった状態。
夫が、自分の子供におもちゃを選んだことなんて、一度もありません。
勝手に処分したことなら、数え切れないほどありましたけど。
私は、息子の気持ちを考えて、少し胸が痛くなりました。
孫までフルシカトじゃなくていいけどさあ……。
孫ちゃん本人に、
「何か欲しいものある?」
と聞いたら、
「犬!」
と答えました。
息子が住んでいるところは社宅なので、動物は禁止です。
「無理だなあ……。私も欲しいけど」
孫ちゃんは、しょんぼりしていました。
私は息子に相談しました。
「メダカならいいでしょ? 飼育セットを送ろうか? 容器が発泡スチロールだから、いらなくなったら処分できるし、メダカはたくましいし、比較的世話も楽だよ。動くお魚、喜ぶと思うよ?」
すると、
「いや、メダカは近所の人たちがやたら飼っているから、いらない」
と言います。
(動物禁止だから、みんなそちらに行ったか)
私は苦笑しました。
「了解! 現金送るわ」
「助かります」
「そういえばね、私、アクアリウムを始めたんだよ」
そう言って、レイアウトした水槽の写真を送りました。
私としては、「こんなことができるくらい、かなり回復しているよ」と伝えたかったのですが、
「きれいですね。でも、『砂』を入れたほうがいいと思います」
と、息子。
意外な返信に、私は目を丸くしました。
「いや、砂を入れちゃうと手入れが大変だから。
自分の今の年齢で、手入れできる方法に合わせたのよ。
砂を入れなくても、底が鏡みたいになって、上の水草が反射して映るから、きれいだよ」
と返信しました。
すると、
「いいですね。僕もやりたいから、するときは教えてください」
「はい???」
まさか息子がアクアリウムに興味を持っているなんて、まったく思いませんでした。
「水槽もあるんです。だから、子供たちが大きくなったら『いつか』やりたいです」
「うん。私も『いつか』と思っていて、『今』始めた。お金はかかったけど、満足だよ」
そう。
私もずっと、「いつかやりたい」と願い続けてきたのです。
「よかったです。昔、お母さんがしていたの、覚えてますよ。懐かしいです」
黒歴史、覚えられていたか!!(苦笑)
「今はネットで何でもそろえられるから、あの時代とは違うよ」
私は笑いました。
「そうですね。僕もネットを見て、やりたくなりました。水槽はあるんですよ。60センチのが」
「へえ……。なんで??」
小型水槽全盛期に、なぜ60センチ幅?
狭い社宅のどこに置いたのであろう?
それは言わないでおく。
「実は、ご近所の方から大量にメダカをいただきました」
へっ???
「そうしたら、増えすぎて……。生態系が崩れて、全滅しました」
間違いなく、親子だ。
血は争えない……。
いつか落ち着いたら、私の姉(筋がね入りの小型水槽専門アクアリスト&苔リウムレイアウト達人)も交えて、お嫁ちゃんや孫ちゃんたちと、水槽の前でいろいろ話ができる。
そんな未来が見えてきた気がしました。
なんだか、胸が温かくなりました。
過去の「なんじゃそりゃ??」ばかり、書いてきたので、こういう話が書けてうれしいです




