30 リングの約束 アンドレア皇太子Side
肌から光が発しているように思う。
髪の毛の香りも、汗ばむ顔も何もかも愛らしかった。
「初めて見た時から、君に恋をしたんだ」
告白しても、ジェニファーは微笑むだけだった。
そんなこと知っていると言いたげな表情だ。
「俺たちはこれからどうなる?」
抱きしめて聞くと、はにかんだような表情でジェニファーは答えた。
「子供は3人よ」
俺は笑った。
「初めてギルフォード・カースル5を訪ねた時にも言っていたな」
「本当よ、あなた」
俺は事件の後だし、俺たちに生まれる子供の可能性について話したくなかった。ジェニファーが不安を抱くからだ。なぜ、アンリ・ジャゲールがジェニファーを狙ったのか。彼女には魔力が無いと思われている。だが、彼女と俺の子供にはきっと魔力があるだろう。
だから、狙ったのだろう。アンリは魔術で何かを見抜いたはずだ。
「聞いてほしい」
ベッドに二人で仰向けに寝ながら、窓から見える夜空を眺めている時に俺は大事なことを話し始めた。ジェニファーはゴールドのティファニー・タイマーをぼんやりと手で弄びながら、夜空を見つめていた。
「なあに?」
「今後、もし、俺が君から離れようとした時は、それは君たちを守ろうとした時だ」
ジェニファーはハッとした表情で俺の顔を見つめた。青い瞳は何かに気づいたように真剣だ。俺の顔を見ているのに、ジェニファーの心はどこか遠くを見ているようだ。
「それはどういう意味?」
「君や子供たちを守るために、君と離れるフリを真剣にした方が良い時が来るかもしれない。その時は君たちを俺から遠ざける」
俺の「死を回避する球」を取り出してジェニファーに見せた。
「君に使うには、俺も一度死ぬかもしれない。本来は俺と俺の子孫を守るためのものだから。だが、迷わず、君を守る必要がある場合は使うよ」
ジェニファーは痛みを感じるように胸を押さえて、溢れる涙をぬぐおうともせず、泣き出した。嗚咽を漏らして、後から後から涙を頬に伝わせて泣きじゃくっている。
「あなたっ……」
ジェニファーはキスをしてきた。
「愛している……っ」
「俺もだよ」
ジェニファーはしばらく俺の胸の中で泣いていた。
なぜ、そんなにジェニファーが泣くのかは分からない。
ただ、俺は幸せな気持ちになった。
俺の本当の気持ちを伝えることができたから。
未来に何が起きようと、俺の気持ちは変わらない自信がある。ただ、ジェニファーに言えないが、子供たちが狙われる可能性は残っている。
「約束して……1886年に発表されるティファニー・リングをプレゼントしてくださると」
「あぁ、約束するよ。でも、ティファニーが指輪?」
「きっと発表しますわ。3人の子供達と一緒に待っていますね」
1886年までプレゼントを予約されたら、ジェニファーと子供達がそこで待っていてくれるような気持ちになった。
その夜、俺とジェニファーは初めて未来の約束をした。
しばらくして、1877年の美しい秋が来て、ジェニファーと俺にコウノトリがやってきた。
ジェニファー・メッツロイトンが内部的に有する「死を回避する球」「石の妖精」「鉱物に関する特殊能力」を引き継ぎ、俺の「死を回避する球」の能力も引き継いで、時を自由に操る魔力を獲得する可能性のある子だ。
未来の皇帝になる子だ。
妻になり、母になるジェニファーに、俺は息が止まるほどの恋をしている。




