28 残る謎は
謎は残る。
どうしても分からないことの1つが、「死を回避する球」を誰が使ったのかという謎だ。最初はアンドレア皇太子だろう。だが、2度目が分からない。
使えるのは、兄のショーンと私だ。
私は存在すら知らなかった。
アンリ・ジャゲールの呪いで私と子供たちの命が奪われることは分かった。でもだ。兄のショーンが私たちを救ったのか。兄のショーンとアンドレア皇太子は、死に戻る前に何度か2人だけで会っていた。それは覚えている。
「あなた方の土地はいただきます」
「どうぞ、こちらにサインを。金額は妥当だと思いますが、お確かめください」
兄のショーンと弁護士が、ブレッチダービー公爵、ヒュームデヴォン伯爵、クイーンズマディーノモベリー公爵家の所領の購入を徹底的に進めてくれた。鉄道なのか、港なのか、製鉄なのか、はたまた鉱山なのか。観光地なのか。所領を活かすワクワクする計画を綿密に立てている。その利益を地域社会や慈善活動に還元するのだ。
子供たちのための学校、女子のための教育機関、働き口の創出、私が皇太子妃として解決していかなければいけない問題は山積みだ。
パトリシアは別にできちゃってなどいなかった。
アンリ・ジャゲールには一度牢獄に会いに行った。彼は私を一瞥するなり「何周目のループなのか?」と聞いてきた。私はそれには答えず、黙って帰ってきた。彼がなぜ私と子供たちを狙うのか、分からなかった。迂闊に口を聞いてはならない人物だということは、私もよく分かった。
パトリシアには恩赦を出したが、彼女ともやはり契約書を交わした。二度と私たちの命を狙うような行動をすれば、即時に刑務所に逆戻りになる。
兄のショーンには、ブレッチダービー公爵、ヒュームデヴォン伯爵がアンドレア皇太子に愛人を送りこもうとした件を話して、彼らも疑わしい動機があると言うことで、同じく所領の譲渡を進めてもらった。マリー・アレクシア・ルクシーの件だ。余談だが、彼女は元気に暮らしていた。
一連の劇的な事件を受けて、アンドレア皇太子は私をさらに大事にしてくれるようになった。
愛は深まり、最初の恋より、私たちはより愛し合った。互いが特別な存在だと強く認識した。
夏は終わり、秋がやってきて、紅葉が美しい時期になる頃に、私の懐妊が明らかとなった。
澄み切った秋の空のようにブルーな瞳を持ち、この上ない周りを明るく照らすような笑顔をするウィルは私の心に幸福の瞬間として残っている。会うのが待ちきれない。
子供たちの思い出は私の心に残り続けていて、一生の宝物だ。どんなにどん底の気分の時も、私を力付けてくれるのは、その笑顔の記憶だ。私に笑いかけてくれて、走り回ったり、拙いおしゃべりをして笑っている記憶だ。
アンドレア皇太子の胸の中で、夜中に目覚めて泣くことは今も時々ある。
でも、今度こそ、私は「死に戻りの球」を使わずに生き延びることができる可能性が高い。
ドキドキの恋は、私にかけがえのない力をくれた。アンドレア皇太子が私を捨てる時が来るという切ない思いは捨てた。そうならないように頑張るから。
未来はまだ分からない。
懸命に頑張って行動を変えたから。
同じ恋のようで、ドキドキの全く違う恋をしたように思う。




