09 一番星の下で初デート(2)
爺と母がいるはずだ。
ワインセラーにはほとんどワインが残っていない。
そのままビリアード・ルームに駆け込んだ。
大丈夫。
ちゃんと片付けてある。
そもそもこの部屋は使っていない。
つい、最近ほこり取りをしていたし、来客に耐えられる。
「お母様!」
私は走りながら叫んでいた。
「ジェニファー!随分遅かったわね。心配したのよ」
ランドリールームの方から声がして、私はそちらに走った。
「お母様!今、アンドレア皇太子がいらしているの。ご挨拶に後程いらしてくださるかしら?1本だけ上物のワインが残っているでしょう。あれをお出ししてくださる?これから、ビリアード・ルームにご案内するわ」
母が悲鳴のような興奮した声をあげたが、私は「お願いね!」と叫び、家の外に飛び出した。
「ようこそ、ギルフォード・カースル5へ」
一番星が輝く宵に、私はアンドレア皇太子に駆け寄ると、不意打ちでそっと口付けをした。
彼は避けなかった。
驚いた様子だったが、私の口付けを受け入れた。
私は彼の美しい顔を見上げた。
両頬を包み込んで、もう一度優しく口付けをしでみた。
信じられないほどの感覚に、私は前回捨てられたことについては一旦、記憶の彼方に捨てておこうと思った。
――とろけてしまいそう……。
またこの感覚を味わえるとは知らなかった。
彼はすっかり上気した頬で私を見つめて、私の腰に手を回した。
「ジェニファー?」
「ビリアード・ルームをご案内いたしますわ」
私は今日のミッションを果たして、ホッとしていた。これで、結婚の申し込みもしたし、キスもした。これ以上の進展はあるだろうか。
さらにいうなら、互いの裸も見た。
少なくとも、私は頑張っていると言える。
本命候補と言われて、予想外に胸が弾んだ。
正妻への道のりは、まだ厳しいかもしれない。
でも、綺麗な星空が見えそうな今宵、1000パーセント難しい恋が少し進んだ。




