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転生先は北の辺境でしたが精霊のおかげでけっこう快適です ~楽園目指して狩猟、開拓ときどきサウナ♨~  作者: ふーろう/風楼
第五章

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未来に



 一年が経った。


 何もかもあっという間に過ぎていって、魔獣どうこうで騒いでいた時の方が時間に余裕があったくらいだ。


 浄化が済んで魔獣がいなくなって、世界から魔法が失われて文明の立て直しが始まって……逆に魔法に頼っていなかった地域では今まで押し込まれていた地域の奪回に動き出した。


 魔法で奪われた地域を、魔法で奪われた物を取り戻すのは当然とばかりに逆襲が始まった形だ。


 しかしどの地域にもまだまだ精霊達がいて、彼らがいる限りは虐殺や侵略が許可されることはなく基本的には穏当な方法での奪回が行われた。


 交渉だとか力尽くになるのだとしても殺しまではしないだとか、そういった形での奪回で……どの地域でも奪回は成功することになり、世界のバランスが大きく変わることになった。


 今までは魔法の力でゴリ押しされていただけ、正面からやり合えばどの勢力にも勝てるチャンスはちゃんとあって……当然シャミ・ノーマも失っていた土地の多くを奪回することとなった。


 まぁ、こちらはロレンスが沼地の人々を説得してくれたので衝突するようなことはなく、その代わりに火打ち石や石鹸などなど生活に必要な物を譲ってやるという多少の譲歩も行うことになった。


 そんな代償、必要なかったのかもしれないが……結局の所、沼地の人々は隣人であり、この先ずっと付き合っていく相手なのだからそういう譲歩も必要経費だろう。


 同時に国境線といったら良いのか、地図を作ってお互いの境界線を明確にする協定が結ばれ、それぞれの地域に無断侵入した場合の罰則や、それぞれの土地で罪を犯した場合どうするかといった約定も結ばれて、誰もが今後のことを意識するようになっていった。


 今後はもう魔獣も魔法も現れない、争いが起きるとしたら人同士、前世の世界のような歴史が紡がれる……とは限らないが、ある程度未来を見据える人は、そのことを明確に意識し始めていた。


 それはシャミ・ノーマの村でも同じことで……その時のために向けて色々な改革が始まっていった。


 狩猟以外にも食料を得られるようにしようと地下の畑が増やされて、これ以上手に入らないことがはっきりしている魔獣素材を温存しながらの新しい武器や戦い方が模索され……また支配地域が増えたのだからと、村を分けることも提案されるようになった。


 一つの村では災害や病気などで滅びかねないから二つや三つに分けて……人口もしっかりと増やしていく。


 結婚を推奨し、新しいコタや……コタ以外の家、ログハウスのような家の建設も推奨されて、今まで手を付けていなかった魔獣の支配地域の質のいい木材の伐採も始まった。


 魔獣狩りをする必要がなくなって浮いた男手をそうやって働かせて……どんどん稼いで開発して、新しい時代へと向かって突き進んでいく。


 そうしながら新しい木々が育ちやすい土壌作りも始めて……そのために花モグラの恵獣達にも手伝ってもらって、精霊と恵獣がいればあちらの世界のような歴史を歩まずに済む……のかもしれないなぁ。


 そう、恵獣も精霊も変わらず側にいる。


 特に精霊は魔獣やその主を倒すために手を貸してくれていて、シェフィ、ドラー、ウィニアも相変わらず側にいてくれている。


 本当にそれで良いの?


 と、聞いてみたこともあったけど、その答えは、


『世界を救ったご褒美だから、問題ないよ』

 

 というものだった。


 世界を救った精霊達には、世界から特別なご褒美があったようで……その一つが俺達と共に暮らしていく、というものだったらしい。


『それに世界を救った時にもらったポイント、まだまだ使い切ってないでしょ?

 それなのにバイバイって、そんなの詐欺みたいじゃない』


 とも言っていて……当分は一緒にいてくれるようだ。


『そんなことよりヴィトーは早く子供作らないとね、精霊の力とポイント使ってまで盛大な結婚式やったんだからさ、次は子供だよ、子供。

 ボクも子育て手伝ってあげるから夜泣きとかも平気だよ、だからほら子供。

 赤ちゃん大好きなんだよねぇ、ボク』


 ……新しく建ててもらったログハウス、俺とアーリヒの新居を前にして昔のことを思い出していると、シェフィが突然そんな声をかけてくる。


「……いや、まぁ、うん、頑張ってはいるよ」


『ボク達もさ、気を使って夜には工房に移動してるんだからさ、頑張りなよ。

 何ならそういうお薬も用意してあげるからね』


「……いやまぁ、うん、大丈夫だと思う。

 っていうかシェフィにそういう心配されると、実の親にそう言われている気分になって凄く嫌なんだけど?」


『実際そんなようなもんでしょ、それにアーリヒにそういうこと言う訳にはいかないしさー、ヴィトーに言うしかないじゃない?

 だからうん、頑張ってね、ほんと』


 と、そう言ってシェフィは俺の頭の上ではなく、ログハウスの屋根の上に座る。


 それと同時に足音がして、振り返るとそこにはアーリヒの姿があり、静かに微笑む彼女の姿は、結婚前のそれとは全く違った……柔らかで美しい姿となっていた。


 たったの一年でそう変わるはずはないのだけど……俺の意識が変わったからか、以前とは全く違って見える。


「ヴィトー、どうですか、新居は?」


 声もどこか柔らかく響いてくる。


「いや、まだ中は見てないんだよ、一緒に見ようと思って。

 シェフィ達が監督してくれたから悪い出来にはなってないと思うんだけど」


「そうですか……では一緒に見ましょう」


 そう言ってアーリヒは近くまでやってきて、そっと手を握ってくれる。


 そして二人で玄関に向かい……少し開けにくいけども二人でドアノブを握ってドアを押し開ける。


 その向こうには前世で見たような、ちょっとお高いキャンプ場で見るような光景が広がっていて……家具もしっかり揃っている。


 クッションや絨毯などもしっかりあって……シェフィ達によれば台所や洗濯場、そしてサウナまで完備しているとのこと。


「……どこから見ようか悩んだんだけど、まずはサウナからかな」


 と、俺がそう言うと、


「はい、一緒に入りましょう」


 と、アーリヒが返してくる。

 

 サウナが好きというのもあるのだけど、サウナは俺達にとって特別な場所でもあり……それを聞いていたのかドラーとウィニアがどこからか現れてサウナがあるらしい方向へと飛んでいく。


 どうやらそうやってサウナの準備をしてくれているようで……それを見送って笑った俺とアーリヒは手を繋いだまま、一緒にサウナへと向かい……二人でのサウナの時間を、あの時のように……これからもずっと二人で楽しんでいけるように祈りながら、たっぷりと楽しむのだった。



 


お読みいただきありがとうございました。


この物語はこれで完結となります


書籍化、コミカライズ化し、皆様に応援していただけたこととても嬉しく

幸せに思うばかりの作品でした!

皆様本当にありがとうございました!!



新作など活動はまだまだ続けていきますので、他の作品でも引き続きの応援をしていただければ幸いです。

今後ともよろしくお願いいたします

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