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刻印の考古学者 〜冴えない能力の使い方〜  作者: 音鳴 凪
失われた王都

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旅のゆくえ

 サルマンの町は、朝早くから大勢の人で賑わっていた。


 通りには旅装束の男たちや、荷を積んだ駱駝が列をなし、あちこちで威勢のいい声が飛び交っている。


 数十年ぶりに、西方へと向かう大規模な遠征隊が組まれることになったのだ。

 かつて幾度も送り出されては、一人として越えられずに引き返してきた、あの西の地へ、再び赴く。

 遠征隊の中心となるのは、族長の娘、サラ・ミリア・アデールだった。


 サラは屋敷で出立の準備に追われていた。


 卓の上には、隊列の編成を記した書きつけと、西方の地図が広げられている。

 人手の割り振り、水と食料の見積もり、確かめるべきことは尽きない。


「サラ様、お客人です」


 サラに仕える砂漠の民に連れられて顔を覗かせたのは、クレイだった。旅の埃をかぶった外套のまま、まっすぐにサラのもとへと歩み寄る。


「遅くなりました」


「クレイ、待ってたぞ」


「湿地帯の様子を見てきました。霧はもうほとんど晴れて、磁石も効くようになってきています」


「そうか。予想通りだな」



 数日後、十分な準備を整えた遠征隊が出立の日を迎えていた。


 町の外れには、見送りの人々が幾重にも列をなし、その先頭には、サラの兄、アシュラフの姿があった。


「では、兄上。行ってくるぞ」


「期待しているぞ、サラ」


 サラを先頭に、長い隊列が、朝日の中へと動き出す。見送りの歓声が、いつまでも背を追いかけてきた。


 町を出て、いくつかの砂丘を越えた頃、遠征隊の行く手の砂上に、三つの人影が、馬を並べて待っているのが見えた。


 サラが馬を寄せると、先頭で手を振っていたライルが、目深に被っていたターバンをほどき、笑顔を向けた。


「待ってましたよ」


 そこに同じようなターバンを被ったアルマも、馬を寄せてくる。


「また皆さんと旅ができるなんて、楽しみです」


 そして、三人目は、以前よりいくぶん背の伸びた少年、リオだった。


「よろしくお願いします」


 律儀に頭を下げるリオの、変わらない生真面目さを見て、サラの顔にも笑顔が浮かぶ。


「これで揃いましたね」


 クレイが馬を寄せ、四人の顔を見る。

 刻印を手放し、それぞれの日々を過ごしてきた歳月も、この顔ぶれが揃えば、たちまち旅の空気へと溶けていく。


「今度は、未知なる西方への旅です」


 クレイの言葉に、サラが不敵に頷いた。


「よし、進むぞ!」


 サラの号令とともに、一行は、まだ見ぬ西の地平へと、馬を進めていった。



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