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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
第四章 カルー少佐
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93話 煙に霞む月光

第4章最終話です。


調査チームが帰艦した。

ジェリーは左肩を鉄杭で砕かれ、120時間は医療ポッドの中だ。

さらに、エルナンデスが左足骨折で、こちらも72時間は医療ポッドで治療を受ける事になった。


エルナンデスと共にカウ族のリッター、カッツェ族のレネ、二人の使用人も連れて来られた。


緊急集会が召集された。



「サラ=スール伍長、報告を。」

「はっ。」


マクレガー村長の低い声にサラが緊張しながらカルーの城の地下施設破壊に至った経緯を伝える。


「以上です。」

「わかった。

ホーキンス生産部管理官、工作機の暴走はよくあるのか?」

「いえ。搭載システムの安全装置が作動します。通常であれば即時に本体ネットワークが切断され、機体は停止します。」

「では、今回の暴走は予見できなかったのだな。」

「はい、村長。」


「しかし、暴走した結果が、この有様ですよ。村長。」

マーカス村長代理が、壁面スクリーンに写された破壊された地下室内の映像を指し示す。

「マーカス村長代理。これは暴走した機体が最後に実行した"杭打ち発射"命令を際限なく繰り返してしまった結果と推測される。暴走の結果がいつもこうなるとは限らん。」

「では、ホーキンス生産部管理官は、我々に暴走の結果については責任が無いと言うのか。」

「そもそも彼らが工作機で先制攻撃を仕掛けている。これは彼らの行動の結果だ。」


ホーキンス生産部管理官もマクレガー村長相手には丁寧だったが、エディ村長代理に対してはいつも通りだ。


「彼らの行動については彼らに聞くのがいいだろう。今は医療エリアにいるのか?」

「はい。」

「では、この集会後に聞き取りを。誰がいいかな?」

「調査に参加していない上級職はアレクサンデル=シャトフ生産部第一班班長、バベル=グランド生産部第二班班長、ホーク建設管理官の3名です。」

「ではホーク建設管理官に任せよう。補佐役が必要なら人選は任せる。」

「了解。」


「うち、じゃなくて、私も参加していません。」

「クリスは副艦長で、今は最高責任者だろう。」

「そうか。」


「では、現時点での調査結果を聞こう。最初にメラニー=ラウダ伍長。」

「はっ。」


メラニーはオの国の町エアステにあるカルーの館の調査結果を報告した。


「では、その時点ではカルー少佐は生きているのだな。」

「はい。イシュターハル氏の主張であります。」

「ふむ。」

「しかし、死体なのだろう。」

「いいえ、マーカス村長代理。イシュターハル氏はそれを否定しております。」


「では、次はサラ=スール伍長。」

「はっ。」


サラは城内探索結果を報告し、最後に地下室に来たときのリッターの音声を流して報告を終えた。


「つまり、カルー少佐は復活できなくなったという訳か。」

「あの時点でのリッター氏の意見です。地下施設のシステム解析は現在進行中であります。」

「では、現時点でのカルー少佐の状況は生存の可能性あり、という事だな。

皆、意見はあるか?」


意見を述べる者はいなかった。


「よろしい。では、ファルス=カン少佐に対してのカルー少佐殺害の容疑は無効とする。

現時点でファルス=カン少佐は艦長代理ならびにレギウス村外政官に復職する。」



復職した俺に与えられた最初の仕事は、この件を片付けろ、だ。

マクレガー村長はその為に、予定外の緊急集会を開いて俺を早期復職させたようだ。


「ホーク、聞き取りはどうだった。」

「駄目ですね。話していただけませんでした。」

ホークは一人で話を聞きに行っていた。


「そうか。」

「リッターからの要求は、エルナンデスの治療が終わるまでの滞在許可と、その間の食料の支給。

エルナンデスの治療後に3人を城へ送り届ける事。

以上の2点です。」

「エアステの館については?」

「イシュターハルに任せてあるそうです。」

「他のメンバーについては?」

「4人がイの国の町に食料を買いにでているそうです。彼らは自分達で城に帰るでしょう。」

「そうか。」


「話を聞きに行きますか?」

「いや、今はいい。エルナンデスが回復してからにしよう。」



3日後。

エルナンデスは医療ポッドを出た。


「エルナンデス様。」

「リッター、レネ。すまない、待たせたようですね。」


「エルナンデス、君達を城に送り届ける前に、いくつか聞いておきたいことがある。」

「ファルス=カン。私にも聞きたいことがあります。」


俺とホークはエルナンデスたちと医療センター内のテーブルに座った。

「まずは、そちらのお話からどうぞ。ファルス=カン。」

「まず、君達はカルーによって作られたクローンだ。それは自覚しているか。」

「ええ、しております。クローンという呼び方はしていませんでしたが。」

「君達は何人いる?」

「カルー様の従僕でしたら、16名です。いえ、今は13名ですか。」

「ここに3人、エアステの館に1人、城に4人、残りはどこだ?」

「エの国です。まだ後片付けが残っていますからね。」


「カルーの目的を教えて欲しい。カルーは何をしようとしていたんだ。」

「なんだと!? それも知らずにカルー様に敵対し、カルー様を亡き者にしたのか。」

リッターが立ち上がり声を張るが、エルナンデスがそれを抑えた。


「戦争を起こそうと暗躍していたのは知っている。だが、なぜだ?」

「カルー様の目的の為です、ファルス=カン。

私があなた達、月の人に聞きたいのも、それです。

あなた達はここで何をしていますか?

あなた達の目的はなんですか?

カルー様は目的をお持ちでした。

この世界の発展、人々に知識と科学を広めること。

だが、それをなす為には、この世界が邪魔をしています。

恐るべき、リセットの魔法。

カルー様は後悔していました。

そうです、そのリセットの魔法を生み出したのは、他でもない、若き日のカルー様なのです。」


"私は若かった。"、会談の中、力なく漏らしたカルーの一言を思い出した。


「カルー様は、怒りに駆られ復讐のためにやったことだ、と後悔しておりました。

復讐の舞台が整った時は数百年の歓喜の時代を過ごされた、と。

しかし、カルー様は気付かれたのです、この地に生きる人々に力が無いことを。

では、どうするか。

カルー様は選択されました。自らが人々を強くすることを。

平穏の中で弱っていく人々を、争いに投じて強くする。

かつてカルー様はゴブリン共を支配し、人々を襲いました。

冷徹なる魔王として、国王を操る宰相として、いつの時代も、争いを起こしたのです。

その結果、フォース族は強くなりました。

ゴブリン共に負けることもなく、数度のリセットも乗り越えられるまでになりました。

もう少し、もう少しで、勇者が現れるはずでしたのに。」


エルナンデスは肩を落とし、言葉を終えた。

俺は掛ける言葉を捜さねばならなく、だが、見つけることができなかった。


「つまり、自らの目的のために多くの人間を殺してきたのですね。」

俺が発言しないからだろう。ホークがエルナンデスに言い放った。

エルナンデスはホークに視線を向けた。


「世界を救うためには犠牲が必要なのです。」

「ですが1万2千年を経ても救えていないのです。あと何万年必要ですか?その間に何人を殺しますか?」

「ふむ。どうやらご理解いただけないようですね。

ファルス=カン。そろそろ我々を城に帰していただきたいのですが。」


「わかった。」


■■■


カルーの城、地下室。


「これは・・・。これほどひどいとは・・・。」

鉄杭が撃ち込まれ破壊された機械群。

工作機2台は横転している。

マスターポッドは1台が破壊されている。

そして、カルーのクローン体製造機には数本の鉄杭が刺さったままの状態であり、培養槽であった器からは強烈な腐敗臭が漂っている。


「エルナンデス様。」

「リッター。私は傷の治療を受けている間、長い夢を見ていました。いや、見させられていました。

天地創造。生命の誕生。

それは、まさしく神話であり、神々がこの世界を作り上げていく様であったのです。

その神々の中にカルー様がいました。

カルー様は月の人だったのです。

そして、この器によって転生を繰り返し、長くこの世界に留まれたのです。

ですが、その時は終わり、カルー様も月へとお戻りになった。」


「エルナンデス様。」

「我々も、この勤めが最後です。」


「そう。カルーは死に、復活もできなくなったのね。」

地下室の入口から聞こえた若い女性の声に振り返るエルナンデスとリッター。

「あ、あなた様は。」

「カルーの反応が消えたから様子を見に来たのだけど、ずいぶん派手に壊れたのね。」

その女性は、白い服に長い金髪を揺らしながら、地下室の中をぐるりと見廻す。

エルナンデスは言葉を発することもできず、立ちすくんでいる。


「そうね。最後は私が、月へ送ってさしあげますね。」


■■■


カルーの城からオレンジドラゴンが飛び立つ。

その周りを数十羽の白い鳥が囲んでいる。


城からは黒煙と白煙がゆっくりと立ち昇り、夜空に降る月の光を霞ませる。


次回94話「新年の宴」

第5章スタートです。


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