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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
第四章 カルー少佐
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84話 第一大陸の城

「ここまでの案内に感謝する。エデルゥ。アクゥ。マルクゥ。」

「案内人としての務めを果たせた。この後の旅の安全を祈るよ。月の人ファルスカン。月の人クリス。また会おう。」

「また会おう。」

「お元気で。エデルゥ。」


グリー族部族長ウソエニは街道を行く許可はしたが、護衛や案内人を付けはしなかった。

この街道の北には最果ての村しかないそうだ。

俺とクリスは馬に跨り、街道を北に向かった。



街道を北へ5日程進んだところで、目指す山脈の麓の村に着いた。

これより先に街道は無く、東へ行くには平原と森を抜けるしかないという最果ての村だ。


野営をするなら風除けのテントが必要だ、との村人の助言を受けて、俺たち用のテントを買った。

"嵐"と"早風"用には大きな布を縫い合わせて作ってもらった。

立ち木と木の棒で支えれば、簡易的な風除けになるだろう。

支払いは銅貨より肉が欲しい、というので物々交換になった。



布の出来上がりを待って村を出たので、数時間で日が落ちてきた。

「少し寒くなってきたな。」

ボディスーツには体温調節機能が付いているので身体は問題ないが、露出している顔にあたる風が冷たい。

「そういえば、馬は寒くないのか?」

「"早風"は元気そうだぞ。案外平気なのかもな。」

夜目も利くようだし、こうして一緒に長い時間を過ごすと判ることも多いな。


「ファルス。」

「ああ、ブルードラゴンだ。」

薄暗くなった上空に大きなシルエットが見える。どうやら奴の縄張りに入ったようだ。



翌朝、寒さで目が覚めた俺はテントの出入り用の布を持ち上げ、驚いた。

横でまだ目覚めていないクリスを揺り起こす。

「ん、ファルス。どうした?敵か?」

「いやいや、平和な朝だよ。おはよう、クリス。」

「おはよう、ファルス。今朝はやけに冷えるな。」

「そうだろう。クリス、外の景色を見てみろよ。」

「外?・・・うわぁ。」

うん、クリスも驚いたようだ。

外は一面の雪景色。白銀の世界だ。


「綺麗だろう、クリス。」

「ああ、綺麗じゃ。これが雪か、ファルス。」

「外に出てみよう。」

俺達はテントから這い出して雪面を踏みしめた。

雪は3cmほど積もっているが、歩くのに苦労はしない。

振り返ると雪面に俺たちの足跡がついている。


「ふふふ、"早風"がうれしそうに駆けているぞ。」

"嵐"は木の下に居る。と思ったら、木の幹を後ろ足で蹴った。"嵐"の上に枝に積もった雪が降り注ぐ。

それを受けて、うれしそうにくるくる廻ると、さらに雪面に倒れてごろごろしている。

"早風"は駆け足を止めて、そんな"嵐"をじっと見ている。

「ふふふ、馬達も楽しそうじゃな。」

「まったく。」



2日後。

夕方から雪が降り始め、夜には風も強くなり吹雪となった。

俺たちは森の中に入り、木々に囲まれた場所にテントを張る。

馬用の布は風に飛ばされそうなので、これは張らないことにした。

馬達は自由にしておく。

「綺麗な雪も、こうなっては恨めしいな。ファルス。」

「自然の吹雪だ。魔法の吹雪より大規模だな。」

「ファルス。この中に身を投じて経験することで、より良いイメージができる。吹雪の魔法も強力になるぞ。」

「遠慮しておく。」


テントの中で情報パネルを確認する。

俺宛の要返信タグのメッセージがあった。

「メッセージが来ている。」

「あっ、うちにも来ている。」

メッセージの内容を確認すると、レイチェルからだった。

内容は、エの国王宮で行われる新年の宴の招待状についてだ。

国王陛下以下王族の参列あり。同行者は2名まで。

開催は翌年1日。

これは国内の有力貴族や辺境伯も来るのだろう。


「クリス、来年1日にエの国の王宮で新年の宴がある。一緒に行くか?」

「1日か。オの国は2日じゃな。出れないことはないな。」

「よし、同行者は2名だ。後1人だが。」

「エの国ならばレイチェルじゃな。オの国はリサを連れて行くぞ。」

「そうしよう。」

俺は出席と同行者にクリスとレイチェルの名前を記載して返信した。


「明日は城に辿り着けるかな。ファルス。」

「ああ、画像データに拠れば、残り10kmほどの所まで来ている。

この吹雪で、どれほどの雪が積もるかが問題だが。」

「そうか。では食事を食べて早めに休むとしよう。」



吹雪は夜明けまで続いた。

テントは森の中に張ったので雪で押しつぶされる事は無かったが、森の外はかなりの積雪だ。

俺の膝下までが雪の中に埋まる。


"嵐"と"早風"には苦にならないかと思ったが、息が荒くなるのが早いので1時間ごとに10分ほどの休憩を取りながら進む。


「あそこだ。」


平原の先に川が流れていて、その対岸は森だ。

その森の向こうに見える山。切り立った崖の中腹に城の外壁が見えた。

「ずいぶん高い所にあるのじゃな。」

「クリス、馬をここで放して飛んで行かないか。」

「そうじゃな。ここならば馬達も問題なかろう。」

周辺警戒にも狼や熊などの反応は無い。


馬達の鞍を下ろし「少しこの辺りで遊んでいろよ。」と首を撫でてやる。

嬉しそうに顔を擦り付けてきたので、大丈夫だろう。

俺とクリスは城を目指して飛び上がった。



この城は崖側を外壁で囲んでいる。

反対側は山の岩壁だ。

城も岩壁に張り付く様に建てられている。

俺たちは城の上空から、上階の通路に降り立った。


「この城は侵入防止フィールドに覆われていないようじゃな。」

「張られていても外壁周りの地上生物避けだろうな。開発部隊も当時は連絡艇で移動していたようだから、上空は開けているのだろう。」

「そういう訳か。さて、どこに転送門を置くのじゃ、ファルス。」

「判りやすい大広間だな。」

「なら、下へ降りるか。」

通路を右手に進み階段を下へと降りていく。

4階層を降りたところで階段を降りきった。

廊下をさまよい、大きめの扉をいくつか開き、大広間らしき部屋を見つけた。

部屋の奥にも上下に続く階段がある。


「この部屋がいいだろう。」

「うん。」

俺は背嚢から転送門を引きずりだし壁際に立て掛ける。

今の時間、レギウス村は夜中だが、仕方ない。

「お疲れ様でーす。」

「おはようございます。カン外政官。サワー外政補佐官。」

リサとサイモンが転送門を通ってきた。


「おはよう、リサ、サイモン。」

「二人とも、夜中にすまないな。

サイモン。早速だが偵察機をばらまいてくれ。」

「はい。今回の偵察機は改良型です。」

サイモンは手に提げた箱から3体の偵察機を取り出し、床に並べた。

手のひらサイズの8本足の薄型ロボット。

今回はその本体カバーに円形の文様が描かれていて、中央に穴が開いている。


「その文様は魔道具のようだな。」

「そうです、カン外政官。

以前の物は腹部のカメラ映像を背面に映し出すことでステルス機能としていましたが、今回はこの魔方陣を用いて、光が偵察機本体を透過します。」

説明の後、サイモンはそれぞれに魔石を嵌めていく。

「我、サイモン=ロバーツが命じる。光の魔石に宿りし者よ、描かれし魔法陣を起動せよ。オプティカルステルス!」


床に並んでいた3体の偵察機が一瞬の輝きの後、その姿を消した。

「成功です。この後の制御はメティスに任せます。」

「見事だ。サイモン。」


「さて、今日はお二人にもご帰艦願いますよ。」

「何?」

「えっ、なんで?」

「ほら、新年のパーティーがあるじゃないですか。後20日しかありませんからね。

今日はオの都に行って服を仕立てますよ。」

「えっ、前に作ったのがあるぞ。リサ。」

「駄目です。あのドレスは前に着ましたからね。あれはエの国の宴で着てください。

こちらの新年パーティー用は新しく仕立てます。」

「そうなのか?」

「そうです。」


「俺も必要なのか?」

「はい。ファルスさんはオの服はお持ちで無いでしょう。

エの国の上着は白のラインが入っていますからね。

月の人のカン外政官が、エの国の服を着て、オの国のパーティーに出席されると、いろいろ問題があります。お立場がありますので、仕方ないです。」

「そうだな。」

「はい。」


「では、この城の探索は。」

「城の地下は逃げません。転送門を置きましたから、次の機会にしましょう。」


その後、サイモンは転送門でレギウス村に戻った。

俺とクリスとリサは、下の平原まで飛び、"嵐"と"早風"に合流し、リサの遠見の窓でレギウス村に戻った。


リサが一面の雪景色に感動し、しばらく飛び回っていたのは3人だけの秘密だそうだ。



俺とクリスの二人旅は36日と4時間30分で終了した。

未明に到着したので、時差ぼけ解消のためにカッシーニ81の個人ポッド内で1000まで休息を取った。


目覚めのコーヒーを仕入れて外政官の館に向かう。

旅装束は背嚢に片付けたので、今はボディスーツに戻っている。

左手首に緋色の腕輪は着けているが。


甲板に降りると木箱が積まれた場所があった。

木箱には"スプリングクッション(小)"などと書かれた板ラベルが貼られている。

順調に注文が入っているようだ。


木製の箱がカッシーニ81に積まれている。

レギウス軍の装備に木製の物も布製の物も存在しない。

改めて、この地での生活に馴染んできた、との想いを深める。


次回85話「服の仕立て」

お買い物です。

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