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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
第四章 カルー少佐
78/142

76話 明日の準備

累計5000pv突破しました。

読者の皆さんに感謝です。

ブックマーク登録、ご評価もありがとうございます。

ご意見、ご感想、ご質問、お気軽にご記入ください。


カッシーニ81の食堂で朝食後のコーヒーを飲んでいる。

クリスとリサも一緒だ。

昨日のカルー少佐の城について少し話をする。

ミリア中尉の生存確認。

カルー少佐とミリア中尉が連絡を取り合っている事。

リサは、いつもどおりに見える。回復したようだな。


生産部員達が席を立って食堂を出て行く。

レイチェルが俺たちの方へやって来た。第二班のブライアン副長が一緒だ。

「クリス、前に依頼していた馬車ができたそうよぉ。」

「ほんとか!」

「いえ、サワー外政補佐官。正確には駆動部が完成しまして、この後実働試験を行います。

お時間がおありでしたら参加していただき、揺れ具合などのご意見を伺いたいのですが。」

「もちろん参加するとも。行くぞ、ブライアン。ファルスたちも来い!」

「参加するのはいいが、どんな馬車を頼んだんだ、クリス。」

「ふふふ、乗ってみてのお楽しみじゃ。」


そういう事で俺たちは揃って外へ出た。



甲板前、村へと続く道に一台の荷馬車とそれを牽く馬が2頭準備されている。

荷馬車の車輪は鉄製で軸受部分に緩衝装置が取り付けられているようだ。

通常の車輪では左右を一本の横軸で接続しているが、これは4輪がそれぞれ緩衝装置部に接続されているので馬車の下部に空間があり、すっきりとしている。

「ブライアン副長、馬を繋げましたよ。」

レベッカが声を掛ける。彼女は手綱を握り馬の隣に立って馬体をなでている。


「では、荷台に乗りましょうか。」

ブライアンが荷台に登ると前の方へ進んで座りこんだ。

クリスが続き、俺たちも乗り込む。

「まだ椅子とかは付けないのか。ブライアン。」

「はい、サワー外政補佐官。今日は現在の乗り心地を確認した後に1000Kgの重りを載せて耐久テストを行う予定となっております。」

「そうか。」

「では、出発します。レベッカ頼む。」

「了解。」


レベッカが御者台に座り手綱を取って道を進み始めた。

早朝の日差しに草の香りが心地良い。

「おお、揺れが少ないな。」

「ええ、道は整備されていますが、小石や小さな段差も衝撃吸収用のスプリングで対応しています。

荷物の荷重はそれ用の大きなスプリングで支えて対応しています。

また車輪の表面に凹凸を作り駆動力の補助を狙っています。

レベッカ、道を逸れてくれ。」

「了解。道を逸れます。」


荷馬車は右側へ方向を変え、馬溜りの横の草地を進む。

さすがに地面の凹凸による上下の衝撃は感じるが身体が浮き上がる程ではない。


「良い具合じゃな。椅子に座れば、まだ良くなるかな。ブライアン。」

「ええ。スプリングシートも作成しています。村の職人に綿入れと布張りは依頼済みです。」

「そうか、それは楽しみじゃな。」

「それが出来上がればお尻が痛むことも無くなりますね。」

「うむ、この世界は座っても寝ても固いからな。これは売れるぞ。ファルス。」

「そうだな。」


草原を10分程走り、甲板に戻ってきた。

この後は重りを載せ、馬2頭に牽かせながら草原や河原、湖畔の湿地などを巡り数日掛けて耐久性を確認するという。


「ブライアン。この馬車を他国に売った場合だが、相手国の鍛冶屋は同様の物を作れるか?」

「無理でしょうね。現地の製鉄技術では純度が高く均質な鉄はできないでしょう。

ここでも村の溶鉱炉から取り出した鉄塊をナンドゥールがさらに加工した上に、出来上がった部品には防錆処理なども施しています。

構造は真似できても、スプリングなどの部品は作れないでしょう。」

「つまり、この村の鍛冶屋たちも真似できないんだな。」

「はい、一から作るのは無理です。彼らにはスプリングなどの部品を与える事で加工品の作成は出来るでしょう。」

「そうか。」

これはレギウス村の一大産業になる。

村人たちに加工品を作らせることで村人たちにも受け入れられるだろう。


「加工品はどのような物を考えているんだ?」

「大きな物は馬車用の簡易型緩衝器です。

今乗っていただいた物は車輪なども金属製でしたが、一般的な馬車の構造に組み込むことが出来る物を考案中です。

小さい物はスプリングシートを使った椅子用のクッションとベット用のマットです。」

「そうか。クッションとベットマットができたら教えてほしい。」

「了解。」


「ファルス、まずは試作品を検証して生産計画を立ててからの販売じゃぞ。」

「そうですよ。抜け駆けしてエの国に販売したらダメですからね。」

「わかった、わかった。」

クリスとリサに釘を刺されてしまった。

クリスの依頼が元のようだし、主導権はクリスと生産部に任せよう。


「それで、試作品はいつ頃できそうなんだ?」

「ん?」

クリスに尋ねたが、そのクリスはブライアンを見た。

「はっ!スプリングシートの納品が3日後、馬車の内装と外殻の取り付けはその後に予定しております。」



中央司令室。

馬車の外装のデザインについて確認するというクリスたちと別れて来たので俺一人だ。

「メティス、ウの国国境の集落の画像を出してくれ。」

『了解。』

中央スクリーンに映し出される集落の上空映像。

山を彩る紅葉が広がっている。

人々の分布はまばらで、それぞれの生活を営んでいるようだ。

画像を北側の国境、山中を抜ける街道に動かすがこの付近には人の反応は見当たらない。

「こちらは動きなしか。」

『はい、監視開始後に山中の街道を北に進んだ反応はございません。』

集落の方はレイチェルの予想通り、再入植の可能性が高い。

「そうか、では、この周辺の監視は終了しよう。次はバランの港を映してくれ。」

『了解。』


バランの港町。

桟橋に停泊していた軍艦と思われる2隻の船。

この船が既に桟橋を離れ海上を北上している。

「いよいよか。」

『この2隻は4時間前に離岸しました。さらに北方の海上に3隻の大型船が北上しています。』

右側のサブスクリーンのひとつにその3隻の画像が表示される。

軍艦に比べて幅広の船、横に見えるオールの数は少ない。

さらに引いた画像で位置関係が表示された。

3隻は国境へ向けて先行している。


「こちらは輸送船だろうな。先行させたのは足の違いか。」

『これまでの3隻の動きから推測しますと国境到達は約18時間後です。』

「国境からエの国の街、あの河口の町までの到達時間は予想できるか?」

『はい、カン外政官。約7時間です。』

俺は操縦席のモニターのひとつにタイムスケジュールを呼び出して確認した。

この惑星の1日28時間45分に合わせてある。

順調にいけば明日の0400過ぎの到着。いや、現地時刻だと0000頃か。

おそらく2隻の軍艦が途中で追いつき追い越して行くのだろう。

未明に港を襲い、橋頭堡を築き、輸送船の到着を待って倉庫から食料を持ち出す。

倉庫の位置などは事前に調べてあるのだろうな。

とすると、既に現地にウの国の人間が入り込んでいるのか。


「メティス、こちらは軍艦の動きを引き続き追ってくれ。」

『了解。』


俺は船の現在地の情報と今後予想される動きをレポートにまとめて公開した。


戦争については、現地の騒乱には原則不介入の方針だ。

なので、今回の騒乱には介入しないと決めているが、情報を得れば興味が湧く。



エの国、王都ミラルダのレギウスの館。

明日は収穫祭とあって、街はいつも以上に活気があり、通りでは祭りの飾りつけ作業が行われている。

執務室の窓を閉めていても通りの喧騒が室内に届く。

この街に遠く離れた南の街の騒乱が届くのは数日かかるだろう。


「カン外政官。祭りの招待状が届いております。」

「ああ、参加の打診があった開催式だな。」

ルーカスが差し出した書状を確認する。

明日の収穫祭の開催式がミラルダの神の館で行われる。

この式には王都ミラルダの行政担当官たちが出席するが、さらに国王陛下代理として第一王子御一行も参列する。

なのでレギウス村外政官の俺にも参加の打診があり、出席の返事を出していた。


「ルーカスとリリアナにも同行してもらうが、準備は?」

「はい、できております。」

「カン外政官の参加用のお召し物は2階の部屋に用意していますので、明日は早めにお越しくださいね。」

「わかった。ありがとうリリアナ。」

このボディスーツでは祭事の参加は不適切だそうだ。

この館を始めた頃にワーニャとナタリーに強く言われたので、ワーニャに仕立て屋を探してもらい普通の服を用意してある。

出来上がりに一度袖を通しただけで、これまでは出番がなかった。


「それと、こちらがレギウス村から参加する者たちのリストです。」

渡された名簿は63人分。

普段から物品の買い付けに出入りしている村人とその家族たちだ。

「もう少し居ると思ったが。」

「やはり知らない街の祭りに参加するのは抵抗がありますからな。」

「そういうものか。」

「明日は我々4人で村人たちの出入りを確認いたします。」

「すまない。よろしく頼む。」


リストの中にミララスとボーアンの名前はなかった。

以前は王都ミラルダで暮らしていたのに、祭りには参加しないのだろうか。



カッシーニ81での夕食後、生産部からの要望でミーティングが開かれた。


「さて、全員揃ったな。では、ホーキンス生産部管理官。」

「はい、マクレガー村長。では、グランド班長。」

「はっ!ウの国による明朝の強襲作戦について、現地偵察任務を立案いたしましたので御裁可願いたく、ご説明させていただきます。」


現地偵察か、確かに偵察衛星では上空からの映像だけだ。

バベルの言葉が終わると左腕の情報端末に偵察任務案が表示された。

作戦立案者はパトリック=フランシスとラザロス=トレイニーの第二班のメンバー2名になっている。承認は上長のバベル=グランドがしている。


「今回の現地人による軍事行動は、我々が現地人の戦闘情報を得る良い機会であります。

さらに今回得た情報は、先ごろ立ち上げたレギウス村自警団の集団戦訓練モデルにも利用できると思われます。

ですので、偵察要員を現地に複数名潜入させ詳細な映像記録を残したいと考えます。」


確かに現地人、特にフォース族同士の戦闘状況は見てみたい。

だが。

レギウス村自警団は村内のトラブル解決のために村民が中心となって立ち上げた組織だ。

まだ専任は置いていないが、ミララス、ボーアンの元警吏や冒険者であった者など10人ほどが登録している。

しかし、集団戦の訓練は必要か?

対人の制圧、捕縛術を教えればよくないか?

そうか、建前で理由を付け加えたな。


「レギウス村から戦闘が行われるであろうエの国南部の河口の街までは連絡艇で5時間30分後に到着します。

我々は現地時間0000に到着し、街内に潜伏。連絡艇は街の西方の森林内にて待機。

その後、港周辺にて現地の地理を把握しつつ、ウの国の軍艦の到着を待ちます。

戦闘開始後は、多角的に防衛側であるエの国、攻撃側のウの国の状況を捕捉していきます。

戦闘予想時間は2時間から4時間の短時間と思われますので、現地戦闘終了後に我々は連絡艇に集合し離脱します。」


説明を終えたバベルがホーキンス生産部管理官に視線を向けた。

「説明は以上です。」

「うむ。参加メンバーは第二班11名だな。」

「はい、ホーキンス管理官。」

「エの国はカン外政官が担当している。この紛争情報もカン外政官がまとめたものだが、この偵察任務についてはどう思う?カン外政官。」

マクレガー村長が俺に問いかけてきた。

「偵察行動には賛成いたします。ただ、現地に我々月の人が居た、という形跡は残したくないです。

各員の装備と行動指針には十分な注意が必要と考えます。」


「うむ、グランド班長。」

「はっ。各員はボディスーツの上にオの都で調達したフード付マントを着用し街中での飛行移動を原則禁止とします。

戦闘撮影は建物屋上からの撮影を基本とし、極力現地人との接触を避けます。

また今回の撮影用に右手指先に暗視カメラを装着し、撮影者の体をさらすことなく撮影ができます。」

バベルの横にマント姿のパトリックが並ぶ。

灰色マントは俺たち同様に彼らもオの都で冒険者ギルドで冒険者として登録した時に支給されたものだ。

撮影用カメラは首元に位置しているのでマントの合わせ目から撮影できる。

さらにパトリックがこちらに向けた右手人差し指には暗視カメラが装着されている。

左腕情報パネルで画像確認しながら撮影し、その映像は同時にカッシーニ81に送信される。


撮影機材は良い。

だが、マント姿は駄目だ。

初めて着たように綺麗で、後ろ姿は隠せても正面から見れば白いボディスーツが丸見えだ。

深夜とはいえ、作戦終了時には陽が上り明るくなっている。人目に付けば、その異質さが目立つ。


「どうだ、ファルス。」

ホーキンス管理官が俺に視線を向けた。

撮影機材を昼の間に用意したとなると、ホーキンス生産部管理官もこの偵察任務に乗り気のようだ。

「撮影機材は良いですが、服装が駄目です。ホーク、村の服屋にボディスーツの上から着れる大きな服はあるだろうか?」

「何着かはあると思います。衣服や防具を扱っている店は3軒ありますから、すぐに行ってみましょう。」

「店も閉まっている時間だ。無理をさせてすまない。バベル、そちらからも人を出してくれ。」

「はっ。では、ルーク、トミー、レベッカに同行させます。」

「それとマントだが、綺麗すぎる。外で泥汚れを付けた方が良い。」

「はい。」

「俺からは以上だが、クリス、今回は俺たちの出番はなしだ。ホークたちからは何かあるか?」

「まぁ、偵察だからな。今回は任せる。」

解っているなら、なぜ俺の横腹を突つくんだ。


「はい!」

リサが手を挙げたので俺は頷いて発言を促す。

「腰には剣と装備袋を持って冒険者としての装備を整えるとさらに良いと思います。」

「そうねぇ、剣があるとマント姿でもシルエットが変わりますからねぇ。」

リサの意見にレイチェルも賛同した。

「そうだな。深夜から早朝の活動とはいえ、朝の港は人が多い。違和感なく市民に紛れる為に冒険者としての装備は必要だろう。」


会議解散後にバタバタと準備をし、第二班を載せた連絡艇は南へ飛び立った。

予定より1時間遅れたが、まぁ問題ないだろう。



「で、なんでそんなに膨れているんだ、クリス。一緒に行きたかったのか?」

「違うぞ、ファルス。

二班の連中には馬車の製作を頼んでおるが、外装の打ち合わせをしていたのに、パトリックとラザロスがファルスのレポートを読んで偵察任務を思いついてしまったからな。

まぁ、馬車の製作に遅れが出るわけではないし、良いとは思う。

だから怒ってはいないぞ。ファルス。」

「そうか。間が悪かったな。すまん。」

「ん。」

俺はクリスの頭をポンポンと撫でてあげた。


次回77話「食料強奪作戦」

港町から中継です。

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