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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
第三章 レギウス村
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54話 大佐と辺境伯

マクレガー大佐とマーカス中佐は畑の世話をしつつ、村長と村長代理として村の運営準備に忙しい。

メティスの中に軍法はあっても民法はない。

当初は我々月の人31人の合議制になるだろうが、移民を受け入れ始めたら、彼らの代表者も加えて行くし、将来的には全住民による議員選挙の実施によって議会制になるだろう。


そう、移民だ。

レギウス村を作るのは我々だけでできるが、これを運用していくには我々だけでは不可能だ。

いずれ現地の人々の移民を受け入れ、共存し、我々が現地の人々に溶け込んでいかねばならない。


住民台帳、税制、予算管理、新しく作られるルールもあるが、当面は今まで通りで、適用範囲が艦内からレギウス村内になっただけだ。


生産部管理官という役職を付けられた甲板長はその職にふさわしい活躍ぶりだ。

村の基本設計を策定し、第一採掘場と石切山採石場の建設の為に脱出艇を改造し工作機2台搭載の輸送艇を2機、さらに資材運搬型の輸送艇を4機作成中だ。

すでに工作機1機が第一採掘場で稼働している。


甲板部員達は引越し前から工作機教習の惑星重力下バージョンをこなしている。

さらに建築教習を急遽作成し、家作りを実施している。

家のバリエーションも増やすべきか。


そんな忙しい村づくりをサポートするため、司令部からホークとパメラが建設管理官として活動を始めた。

神殿や神官受け入れ用の家作りの設計協力に始まり、村内の各種設備の設置などにあたる。


食堂や甲板で甲板部員たちと言葉を交わすが、忙しいなりに新しい取り組みを楽しんでくれている。



昼食後にレイチェルと共に医療センターに行った。

天使セリーヌにアラン子爵たちの覚醒をお願いする。

足を負傷した警吏の男は後6時間程掛かるが、彼以外の8人の医療ポッドが開く。

ポッドから出た彼らに衣服を着てもらい、医療センター内に設けた臨時会議室へ移動した。

そうそう、服を着る時もひと騒動あった。

彼らが脱いだ服はそのまま床に置いてあったのだが、それがいけなかったらしい。

この艦には箱やカゴといった物がない。

さらに我々のボディスーツは交換する物であり、それも1年1度の頻度だ。

服を洗う文化が無かった。

脱いだボディスーツはそのまま着ていたから。

文化の違いという理由でなんとかしたが、使用人たちは自分のズボンを履いただけで貴族たちの着付けをしていた。

一人で着れない服は面倒な物だ。



スクリーン前にテーブルと椅子を並べただけの臨時会議室。

対応するのはマクレガー大佐と俺とレイチェルの三人だ。

エの国側はアラン子爵たち貴族が話し相手だ。

使用人と警吏の方々にはお茶を飲んでいてもらう。


「畑を綺麗にできると!?」

アントニオ=ド=ザーリ辺境伯が声を上げる。

彼がザーリ地方を治める伯爵で、問題の鉱山と被害に遭った畑の管理者だ。

「はい、我々の魔法を使い、畑の悪しき物を取り除きます。」

「それができれば、ありがたいが、」

ザーリ辺境伯はアラン子爵の顔を見る。

アラン子爵も困惑顔だ。

そもそも俺たちの事はアビー姫誘拐未遂事件の現場で会って、自分からオの国の悪行を話しただけだ。

月の人が魔法を使うのは聞いているだろうが、アラン子爵も我々の力は判断できなかった。


「お前らは我々の計画を潰した!オの国に肩入れしてる奴が何を言うか。」

ダニエル=フォン=ブカン男爵が突っかかる。

マルコス=フォン=ベレッタ子爵と共にこちらに向ける視線が厳しい。


「我々は月の人です。我々は最初にオの国の人々と交流を持ちました。

そして、次にエの国の人々、あなたがたにお会いした。

我々としては今後もオの国と、そしてエの国ともお付き合いをして行きたいと願っています。」

マクレガー大佐が落ち着いた言葉でザーリ辺境伯に言う。

どうやらザーリ辺境伯を落とせば良いと判断したらしい。


「そちらのアラン子爵から鉱山事件とその後の川と畑への被害のお話しを聞きました。

お困りになっている問題があり、我々はそれを解決できるであろう力を持っております。ザーリ辺境伯。」

「畑を綺麗にし、作物が出来るようになるならば、私としては願ったりだが、」

ザーリ辺境伯はまたもアラン子爵を見る。

どうやら、階級だけでは無い何かがザーリ辺境伯の意志決定にブレーキを掛けている様だ。

”オの国とアの国が戦争になれば得をするのはエの国”と言ったが、さらに言えば、”得をするのはエの国の誰か”だ。

ベレッタ子爵とブカン男爵はその誰かの配下か?

話を聞いた限りではアラン子爵からは、そういった事は感じなかったが。


俺はマクレガー大佐に合図してからザーリ辺境伯に向かって言う。

「ザーリ辺境伯、言葉だけでは信じられない所もあるでしょう。

どうでしょうか、これから一緒に外に出ていただいて、ちょっとした魔法をご覧にいれます。」

「魔法?」

「はい。ここの土地には悪しき物はありませんが、畑作りには邪魔な石はあります。

その石を土の中から取り出す魔法をご覧ください。」

「それは、ぜひとも見せていただきたいな。」

「では、外に行きましょう。申し訳ないが使用人の方々はこちらでお待ちください。」

「我々だけか!」

ベレッタ子爵が警戒する。

「はい、魔法を直接お見せするのは貴族の皆様だけです。さぁ、こちらへ。」


貴族だけ、の言葉が効いたのだろう。ザーリ辺境伯以下4人が会議室の外、エレベーターに向かう。

部屋にはレイチェルに残ってもらった。

部屋のスクリーンを操作して俺のカメラ映像を使用人たちに見せる手はずだ。

エレベーターは改修され甲板フロアまで直通している。

ただし5人乗りなので、マクレガー大佐と俺で2人づつ甲板まで降ろし、外へ向かう。

艦内の甲板出入口からは東へ続く道と遠くに建つ家が見える。

だが、エレベーターを降りてからのザーリ辺境伯たちは周りをキョロキョロと見るのに忙しい。

カッシーニ81の甲板は彼らの目には異様に巨大な鉄の城とでも写っているだろう。

さらに地続きの1階となったこのフロアの奥には整備中の工作機が並んでいる。

横で作業している甲板部員達と比較して巨大な工作機も目にしたようだ。


「これが我々の村ですが、まだ何もできていない状態です。さぁ、こちらへどうぞ。」

カッシーニ81の外へ出て、マクレガー大佐が皆を左手の空地へ案内する。

「ご覧ください。何もないただの土地です。」

マクレガー大佐が目の前の草地を指し示す。

ザーリ辺境伯たちも頷く。

マクレガー大佐が地面に膝を突き足元の土に短剣を突き立て、土の塊を手に取る。

「どうです、ザーリ辺境伯。土は良いのですが、小石もありますな。」

ザーリ辺境伯もマクレガー大佐の手の中の土を触る。

「ふむ。柔らかく適度に湿り気があるが、これではきちんと土を起こして()いてやらねばならん。」

ザーリ辺境伯の言葉にマクレガー大佐がにやりと笑った。

「では、これより小石を取り除きます。ご覧ください。」

マクレガー大佐はちらりと俺を見て、膝を突いて両手を土に突く。


「・・・むん!」

ボコボコボコボコ

カチャカシャゴリィカチャカチャ

土中から大小の石が飛び出し1m程の高さの空中に集まり塊を作る。

午前中の打ち合わせで見た目に派手で分かりやすく、とお願いしただけあって、これは良い演出だろう。

「おおぉ。」

「凄い、石が飛び出してきた。」

ザーリ辺境伯とアラン子爵が素直に驚いてくれた。

ベレッタ子爵とブカン男爵も声は出さないが目を見開いて驚いてくれている。

「いかがです、ザーリ辺境伯。」

「いや、これは素晴らしい。見た事も無い魔法ですな。」

「実際の畑では石の代わりに畑を汚している悪しき物をこうして集めて取り除きます。お任せください。」

「ああ、頼む、頼むぞ。我が領地の、あの畑を取り戻したいのだ。」

ザーリ辺境伯はマクレガー大佐の手を取り大きく振った。



会議室に戻ってきた。

スクリーンに先程の映像が映し出されていたのを見たザーリ辺境伯たち4人は驚いていたし、部屋に残された使用人たちも驚きと興味で何度も再生しているようだ。

その後、スクリーンに第四大陸の映像を写し、山脈と川の位置からザーリ領の場所を確認した。

日程と移動手段の話になったが、明日の朝、連絡艇で行く事を告げた。

連絡艇については空飛ぶ船と言い、移動時間は約6時間だと告げると驚きはしたが、月の人だから、と自らを納得させていた。


「しかし、月の人よ。もし畑が綺麗になったとして、貴殿らは何を望まれるのです?」

アラン子爵が聞いてきた。

ここは俺が答えよう。

「私どもが望むのはこの地に住む人々との共存です。ですので、平和と協力を望みます。」

「平和はわかるが、協力とは?」

「我々はここに村を作り、この地で生活していきます。ですが我々にはこの地で生活していく為の知識が足りません。

道具が足りず、物資が足りず、人が足りません。それらを分け与えていただきたいと願っています。」

「知識は教えるし、道具も提供できるが、人はやれんぞ。我が領民は我がザーリ領のものだ。」

「ザーリ辺境伯。人、移民は難しいですか。」

「人はやれん。それに畑が元通りになれば領民には麦を作って貰わねばならん。」

「そうですか。」


「たしか、ウの国からの避難民がいたな。」

「ああ、ブリント辺境伯だったか。だが我々が王都を発つ前の話だ。300日以上経つ。」

ベレッタ子爵の言葉にブカン男爵が応えた。

「それは、どういったお話ですか?」

俺は二人に説明を求めた。

二人は顔を見合わせ、ベレッタ子爵が説明を始める。

「我々がオの国への使節団として王都ミラルダを発つ前、新年の頃の話しだ。

モラス侯爵様のパーティーでブリント辺境伯が話されていたのだ。

”ウの国で内乱が起こり、村を捨てた村人たちが大勢、国境を越えて領内に来ている。”とな。」

「ウの国との国境というと、エの国の南側ですか?」

俺はスクリーンの地図に目を向ける。

「そうだ。ブリント辺境伯とは幼少の頃よりの付き合いだが、その事は聞いておらんな。」

「伯は使節団としての準備に多忙でしたから、ブリント辺境伯も気を使われたのでしょう。」

ザーリ辺境伯の言葉にアラン子爵が声を掛ける。


「その者達が今現在どうなっているか、王都で今回のご報告をした後に聞くことにしましょう。」

アラン子爵は俺に頷く。

「ザーリでの魔法の結果もご報告せねばな。」

「まずはモラス侯にお会いしませんと。」

「しかし、なんと言うんだ?ザーリの問題が無くなれば戦争は、」

「ブカン男爵!」

ベレッタ子爵がブカン男爵の言葉を遮る。

俺たちには聞かせたくない話のようだ。

「ザーリ辺境伯、月の人の要求も聞いた事だし、少し我々だけで話をしないか?」

「そうだな。」

「うむ。マクレガー村長、カン殿。しばし席を外してもらえんか?」

ザーリ辺境伯の申し入れを俺たちは了承し、2時間程席を外すことにした。


医療センター内部はモニターできるし、扉はロックできる。

俺たちに用ができた時の呼び出し方法としてスクリーン横のボタンを押してくれと伝えた。

「なにか軽い食事と果実酒が欲しいのだが。」

と言われたが、我々にはお酒を飲む習慣が無い、と言って食事と水を提供した。

我々の食堂食はママドゥ達には不評だったが。

今回も1プレートで提供される食事、それで終わりなことに驚かれた。


俺たちが去ると貴族4人でテーブルを独占して、使用人と警吏の男はフロアに移り、床で食事をしていた。

感心はしないが、これが彼らの流儀なのだろう。

夕食の時は少し考えないといけないな。


次回55話「レギウス村の見学」

すいません。まだ、何もないです。


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