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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
第二章 探索
37/142

36話 逃亡者と追跡者と

「あれ?ここは島ですね?」

「対岸の砂浜を指定したからな。どうやら第四大陸の海岸線は崖が連なっているようだぞ。」

カッツェ族のいた密林の第五大陸を後にし、リサの遠見の窓で大陸間の海を渡った俺たち。

だが今回のジャンプ先は周囲50mもない海上の孤島だった。

足元は白色に近い固い砂だ。

第四大陸と思われる白灰色の岩肌を見せる崖の連なりが、500m程先に見える。

そこまでの海上にもいくつもの白灰色の岩石が顔を見せ、連なっている。


「なるほど、砂浜があって良かったです。」

「まぁ、あの崖まで500mぐらい。飛べばすぐだな。」

「あらぁ、崖の上に人が居ますねぇ。12、いえ6人が高速移動中ですぅ。動物に乗っているのかしら?」

「その先1000m程に2人が、こちらも動物に乗って移動中です。北西へ向かってますね。」

「逃亡者と追跡隊か?」

「ファルス、どっちに付く?」

「状況が判らんから、むやみに首を突っ込めんぞ。

そうだな、近付いて攻撃されたら敵、話しが聞けたら味方、でどうだ?」

「良いですね。大尉。」

「よし、2分隊で行くぞ。ファルスは逃げてる方を頼む。レイチェル、パメラ、来い!」

「了解。」

「それは良いが、なんで俺たちがこっちなんだ?」

「大尉。こちらの方が味方の可能性が高いからです。」

「そうそう、クリス大尉は暴れたいんですよ。行きますよ、大尉。」


そうか、第五大陸の密林は大型動物がいなくて、弓での魚獲りばかりだったからな。

でかいトカゲに会ったのは1回だけだった。

そして、オルトス君の弓矢は大活躍したのだ。

いかん、別れて6日、ことあるごとに思い出してしまう。


情報パネルで現在地を確認すると第四大陸の北西の半島。南側の海岸線だ。

半島は100km程の幅があり北側の海を越えた先の島が目指す5番艦のある島だ。

現在地はその半島の北西端に近く幅も50kmもない。

逃亡者側も10kmも行かない内に追い詰められる。

先に何かあるのかな?

俺たちは逃亡者に近付いた。

2頭の馬に引かれた4輪幌馬車。御者の男性は前方を向いている。

もう一人は馬車の中か。

(ホーク、どう思う?)

(判断が難しいです。馬車に乗っているのが誰なのか?ですね。)

(そうだな、それで判るか。)

(馬車に乗り込みますか?後ろからなら気付かれませんよ。)

(そうしよう。3人で一斉に乗り込んで反撃を防ぎ、場合によっては制圧する。)

(了解。)


俺を先頭にホークとリサが続いて後方から幌馬車の荷台に飛び込む。

狭い場所で剣は振り回せない。

俺は拳での戦闘を想定していた。

左右に木製のベンチ。

乗客は前方に一人。

薄茶色の長い髪に白いドレス。

彼女は俺たちを見て固まっている。

この第四大陸の人種はレギウス星人の純血種。

だが、俺たちよりやや小柄に見える。肌が褐色なのは日焼けか。

両手足は拘束されていないので、誘拐犯と被害者、ではなさそうだ。


おれは両手を開いて、胸の前にあげた。

「驚かせてすまない。私の名前はファルス=カン。月の人だ。

旅の途中で6人に追われているあなた方を見つけた。

私たちに、」

「姫様、今の声は?」

「追手が6人!やはり来ましたか。

ルイス!追手が迫っています。急いでください。」


(お姫様ですって、大尉。)

(王国の王様の娘さん、追われる理由は権力争い、ですか?)

(だな。)


「失礼しました。突然の事で気が動転しまして。

それで、ファルス=カンでしたか?

私はアビー=チェイン。オの国の第二王女です。」

「すると、追手は?」

「おそらく、近衛隊の兵士です。父王ディエゴ=チェインが私の婚約に反対していますので。」

「この先には何もないようですが?」

「いいえ、私の婚約者ウの国の第三王子ジャミル=ラーゼンガーの使いの舟が来ています。」

「なるほど、それに乗って国を出るのですね。」

「そうです。」

「分かりました、仲間に連絡しますので、少々お待ちを。」

「いえ、あなたたちにできることはありません。下がりなさい。」

(大尉、我々の体重でこの馬車の速度が落ちています。)

「そうですか。では、アビー姫、私たちは外に出ます。」


俺は外に出てクリスに連絡した。

(クリス、こっちは王国のお姫様だった。そっちはどうだ。)

(カン大尉、パメラです。クリス大尉は追手の隊長とまだ話し中です。

どうやら、その王女は騙されている、というのが追手側の言い分です。)

(なるほど、これは泥沼に首突っ込んだな。)

(まぁ、お互いの言い分は対立するものですからねぇ。)

(ファルス、追手の言い分が正しければ、この先に待っているのは敵国のアの国の兵士だ。王女は攫われるぞ。)

(王女の話では、待っているのは婚約者のウの国の舟だ。よし、先に舟を確認しよう。

リサ、連絡係として残ってくれ。)

(了解。)



俺とホークは馬車に先行して北西へ向かった。

クリス達も追いついてくる。

地形は高低差が激しくなってきた。

北西の海が見え、道が北側へ大きく曲がっている辺りに4人の人間が居る。

さらにその奥の崖下にある船には16人が乗っている。

船の人間は漕ぎ手だろう。

この大陸では中型の船も作っているようだ。

他の大陸にも進出できそうだな。


(さて、ファルス。アの国かウの国か、どう確かめる?)

(聞いてみるさ。まぁ見てろ。)

俺たちは4人の兵士の目の前10m程に降り立った。

飛行中の俺たちを見ていたのだろう、4人は既に抜刀して剣を構えている。

4人とも片手剣で左手には籠手を嵌めている。

革製の鎧に茶色のマント。


彼らの前方に着地し、俺は両手を広げて近寄りながら声を掛けた。

「こんにちは、俺の名はファルス=カン、月の人だ。

俺たちは今、旅の途中でね。出会った人に話を聞いているんだ。

よければ君たちの話も聞きたいんだが。」

俺の言葉を聞いて動揺しているようだ。

中央の隊長らしき人物が俺に応える。

「すまんが、今取込中だ。他を当たってくれ。」

「それは済まなかった。ところでここは何て国なんだ?」

「ここはオの国だ。」

「するとあんたらはオの国の兵士か?」

「そうだ。」

「では、さっき会ったオの国の兵士のお仲間かな?」

「なに?」

「いや、ここへ来る前に馬に乗ったオの国の兵士たちに会ってね。」

「奴らは何と?」

「ああ、ここに居るのはアの国の、」


隊長が一歩踏み込んで剣を突き出した。

俺は右に大きく避けて剣を抜く。

右手からもう一人が突っ込んでくる。

兵士は剣を頭上に振りかぶった。

「足元崩し!」

右の兵士の足元をぐずぐずの砂に変える。

隊長の方はクリスが突っ込んでいる。

足を取られ、バランスを崩した兵士は態勢を崩し左手から地面に倒れ込む。

俺は兵士の首筋に剣をあてた。

「剣を捨てろ。」

4人を武装解除し、俺達は姫様を待つことにした。



リサがこちらの状況を説明したのだろう。

お姫様の幌馬車と6人の兵士は一緒に到着した。

アビー姫と御者、それに6人の兵士の隊長が馬を降りてこちらに来る。

40歳過ぎか、がっしりした体格の偉丈夫だ。

皮の鎧に背中には丸い盾を背負い腰に剣を提げている。槍は馬の鞍に留められている。

「はじめまして、私の名はファルス=カン。月の人です。」

「私はオの国国軍第三連隊第11分隊分隊長レナト=バレン。こいつらがアの国の兵士ですね。」

「それですが、ここに居た兵士を捕まえましたが、我々にはアの国の兵士か確認できないので。」

「いえ、それはこちらで確認いたします。おい。」


バレン隊長が指示すると第11分隊の兵士5人が縛られている兵士4人に近付く。

「ここに居た兵士は彼らだけでしたか?ファルス=カン殿。」

「ここはそうですが、あの後ろの崖を下りた所に船が泊まっています。そこに16人います。」

「なんと。」

「お前らは!バレン隊長、こいつら第一連隊の兵士です。」

「なに?」

「えっ!お兄様の。」

バレン隊長とアビー姫が驚きの声を上げる。

つまり誘拐犯はアの国の敵兵ではなくて、ウの国の王子様のお迎えでもなくて、自国の兵士。

つまりは内紛か。

泥沼だなぁ。



その後、俺たちは船にいた兵士2人と漕ぎ手14人を捕え、船をリサの背嚢に回収し、捕縛した20人を引き連れてオの国の王都オの都に向かった。

第11分隊の一人が連隊への報告の為に伝令として先行している。

第三連隊の増援はすでに王都を発って、こちらを追っているそうだ。

囚人運搬用の荷馬車も手配してもらうことになっている。

俺たちは「アビー姫誘拐犯捕縛の功績を国王陛下に報告し、褒賞をお渡ししたい」とのバレン隊長の言葉を受けて同行することになった。

オの都は約50kmの距離にあるという。

この半島の中央よりは北端に近い。

聞けばこの大陸の四分の一を治める大陸第二位の大国だ。

中心地がこんな端では内政や商業に問題が出そうだが隣接するアの国、エの国とは戦争中なので国境からは遠い方が良いそうだ。

徒歩の捕虜を引き連れている為、馬車の歩みは遅い。

さらに10人乗りの馬車にアビー姫とバレン隊長に俺たち6人。ちょっと狭い。

原因の一つは俺たちのパワードスーツだ。

ちょっと肩幅が一般人の想定幅より広い。

なので、御者台のルイスの横にリサが、さらに幌の上にパメラとクリスとレイチェルが腰掛けている。

幌馬車の中は外が見えなくて退屈らしい。

結果、幌馬車の中は俺とホークの2人だ。

時間もあるので、色々聞くことにした。


次回37話「山賊と騎兵隊」

アビー姫に追撃が!

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