34話 子供達
漁は1時間程で終了した。
なので、まだ0610だ。
朝日が眩しい。
とりあえず、俺たちは朝食を摂りながら今日の予定を立てる。
「せっかく一晩待ったんですから、もう少し粘りましょうよ。大尉。」
「でもなぁ、目ぼしい情報があるとも思えんしなぁ。」
「今回の目的は5番艦を目指しつつ、この惑星を体験すること。空ばかり飛んでいてもダメだろう、ファルス。」
「それはそうだ。次に会うカッツェ族は、もう少し社交的で話が通じるかもな。」
「いいえ、カン大尉。この地の人々が私たちに常に友好的とは限りません。」
「そうですよぉ、カン大尉。手強い相手と上手に交渉して情報を引き出す。今回は良い練習相手だと思いますよぉ。」
「・・・つまり、まだここに滞在するんだな。」
「はい。」
「組み分けを変えよう。ファルスはホークと組め。
ホークはファルスの良き相談役だ。難敵に挑むには参謀が必要だろう。
レイチェルはパメラとだ。」
「了解。」
「そうしよう。ホーク、頼む。」
「はい、大尉。」
「で、どうする?ホーク。」
「そうですね。あちらから積極的に情報を話す様子がないようですから、こちらから話を振るしかないです。
話題は何にしますか?」
「そこなんだよ。ベア族と同じなら神様、神官、言い伝えだろう。
あとはカッツェ族の王国と、騎士か。」
「きゃあ、また来てくれたのね。」
「おっ、今度は5人か。」
「パメラおねぇちゃん、この人達は?」
「私の仲間よ。紹介するわね。クリス、レイチェル、リサ、よ。
みんな、こちらがエステル。お兄さんのオルトスとお友達のチエル。
エステル、そちらのお二人もお友達かな?」
「うん、朝のお魚を食べてね、お姉ちゃんのお話をしたら会いたいって。」
新しい二人は共に黄色地に黒毛が模様を描いている。
「そうなんだ。お二人は姉妹かな?」
「そうにゃ。」
「にゃ。」
「そっかぁ。お名前は無いんだよね。」
コクコク
「じゃあ、パメラお姉ちゃんが名前付けても良いかな?」
コクコク
「それじゃあ、」
パメラの腕をクリスが掴む。
「待て、パメラ。」
「えっと、クリス?」
「ごめんねぇ、ちょっとお姉さんたちで名前を考えてあげるからぁ、ちょーっと待っててねぇ。」
コクコク
「相手は2人、こちらは3人。どうする。」
「ひとり1つの名前を出して選択して貰うのは?」
「良いな。」
「でもぉ、相手は姉妹ですからねぇ。全然違う音感の名前というのも。」
「では姉が名前を決める。決まった名前を受けて妹の名前を再提案で。」
「決まり。では、パメラ、説明してあげて。」
「はい。」
「大尉。これはチャンスです。」
「どうした、ホーク。」
「お兄ちゃんのオルトス君は私と話をしてくれました。今もこちらを見てますから、呼べば来てくれますよ。」
「よし、任せる。」
ホークがオルトス君に手を振り、こちらへ招き寄せる。
オルトス君はするすると寄ってきた。
「オルトス君、いらっしゃい。魚を食べて来たんだね。」
「うん、おいしかった。」
「こちらに居るのはファルス=カン大尉。私の、」
「こんにちわオルトス君、ファルスだ。ホークのお友達だよ、よろしくな。」
「こんにちわ、ファルスさん。」
「じゃあ、お姉ちゃんの名前はケイティーね。」
「くっ。」
「あらぁ残念。」
「やりました。」
「次は妹さんね。次の3つから選んでね。」
「うーん。ラスティ。」
「オルティー。」
「ミスティー。」
「にゃ。」
「あら、妹さんはミスティー?」
「にゃぁ。」
「じゃあ、妹さんの名前はミスティーね。」
「くっ。」
「うー。」
「よろしくねぇ。ケイティー、ミスティー、私はリサですよぉ。」
「よろしくにゃ。」
「にゃぁ。」
「そうかぁ、騎士さんはそんなに恰好良かったか。」
「うん、銀の鎧に青い縦線が恰好良かったし、短剣も2つも持ってたんだ。2人とも恰好良かったよ。」
(大尉。)
(どうした、ホーク?)
(不思議です。先程はもっと幼い話し方でした。)
「それでね、今年15歳になる子供はいるかって、村長に聞いてたんだよ。」
「なにっ。それで、この村に15歳の子供はいたのかい?」
「ううん。いなかった。だから2人ともすぐ帰っちゃたから残念だったよ。この村では10歳でもう大人なんだ。」
「10歳で?」
「うん。」
「そうすると、15歳の大人はいるのか?」
「うん、いるよ。」
「オルトス君、水は飲むかい。」
「うん。」
「ちょっと待っててね。」
ホークは足元にあった太い枝の枯れ木を手にすると、それを細身のコップにした。
それに水を入れてオルトス君に差し出す。
オルトス君は差し出されたコップを手にしたが、その眼はホークを見つめている。
「すごい、短剣も使わずに。今のはどうやったんですか?」
「今のは魔法だよ。木の枝を持って、このカップになれ、ってイメージしたんだ。」
「へぇー。すごい!」
ああ、俺もそう思う。ホーク、いつの間にそんな技を。
「エステルとチエルのお母さんは漁師さんなんだね。」
「うん、毎日お魚とってくるよ。」
「とってもおいしいの。」
「ケイティーとミスティーのお母さんも漁師さんなの?」
「違うにゃ、うちとこは狩りする人にゃ。」
「にゃぁ。」
「ところで、お家は何処にあるのかな?」
「お家?」
「えーと、みんなはいつも何処で寝ているのかな?」
「木の上だよ。」
「にゃぅぅ。」
「あっ、ミスティーが眠くなってる。」
「寝るにゃ。」
「あの木に登ろう。」
「うん。またね、お姉ちゃん。」
「えっ?」
4人は木に登り始めた。
「木の上に行くの?」
「うん、お昼寝するの。」
「あらぁ、残念ねぇ。」
「まだお話ししてないぞ。」
「うん、私もお話聞きたい。ばいばい、おねぇさん。」
「またね、おやすみ。」
「あっ、エステルが木に登りました。お昼寝かな。」
「オルトス君も行くのかい?」
「僕はまだ平気です。」
「そうか、オルトス君は大人の人たちから、どんなお話を聞いているんだい?」
「お母さんからは弓と矢の作り方と漁の仕方です。あと、お祈りの言葉。まだ覚えてないですけど。」
「そう、お父さんからは?」
「お父さん?」
「ああ、ごめん。お父さんはいないのか。」
「うん、お父さんって人はいません。」
「村長とか村の男の人達からは、何か聞いていないのかい?」
「はい、大人の男の人は怖いので、近寄らないようにしてます。」
「そうなのか。」
「オルトス君、王国や神官、神様とかのお話は聞いた事あるかな?」
「神様は漁のお祈りの時に。僕たちの神様のオフィーリオ様と水の神様です。
あとの王国とか神官とかは知らないです。」
「そうか。」
「あのぉ、それは剣ですか?」
「うん?そうだ、これは剣だよ。見るかい?」
俺は剣を抜き、オルトス君の前に横たえた。
「うわぁ、すごーい。あの、持ってみてもいいですか?」
「ああ、良いよ。重いからな、気を付けろよ。」
「ほんとだ!重くて持ち上がらないよ。」
ホークがオルトス君の後ろに廻り手を貸し、一緒に持ち上げてあげた。
「うわぁ。」
「もうちょい大きくなって一人で持てる様にならないとな。」
「うん。」
オルトス君は剣を置き、俺は剣を収める。
「あっ、雨が降ります。」
「雨?」
「うん、直ぐに隠れないと。ホークさん、ファルスさん、ばいばい。」
オルトス君は空地を横切り木の上へと登って行った。
「雨が降る?」
「確かに雲はありますが。」
「ファルスたちも逃げられたか。」
「クリス、逃げられた訳じゃない。雨が降るそうだ。」
「身体が濡れるのを嫌う種族のようですから、避難したみたいですね。」
「そっちは何か聞けたか?パメラ。」
「いいえ。新しい子に名前を付けてあげたところで、お昼寝です。」
ポツポツ
「あら?」
「あっ、大尉。雨が降ってきたみたいです。」
「ヘルメット出しましょうか?」
パラパラ
「これぐらいなら、大丈夫じゃないか?木の下に行こう。」
バタバタバタバタ
「ファルス、これは木の葉に雨が落ちてる音か?」
「かなり激しいですね。」
ザアアアアア
「これは激しいな。」
「大尉、地面に水が溜り始めました。」
「カン大尉。これは、」
「ああ、木の上まで避難しておこう。」
バタバタバタバタ
ザアアアアア
バタバタバタバタ
ザアアアアア
ザアアアアア
ポツポツ
激しい雨は10分程で止んだ。
だが、地面の水溜りは引かず、俺たちは木の上で待つことになった。
次回35話「雨とスープ」。
お昼寝の後は一緒にご飯です。




