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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
第二章 探索
34/142

33話 名前がない

「王国には王様がいるのか?」

「いるにゃ、王様にゃ、偉い人にゃ、騎士にゃ、いっぱいいるにゃ。」

「おい、お祈りするにゃ。遅れるにゃ。」

「あっ、押すにゃ。舟だすにゃ。」

4人は慌てて舟を押し出す。

2隻の舟の先端が海の水に触れる程に押し出すと、4人は舟から手を離し、体の前で手を合わせた。


「カッツェ族の神オフィーリオ様、我が身に海の水が触れぬようお見守りください。

水の神グラール様、我が身に魚の恩恵をお授けください。」


カッツェ族の4人はその祈りを終えると再び舟を押し出し海へと漕ぎ出した。

他の舟も全て海上に出て行った。


「出航前にお邪魔したか。あのお祈りは魔法になるのか?」

「カン大尉。うまく撮れてましたぁ、これをご覧ください。」

レイチェルが左腕の情報パネルを俺に差し出す。

レイチェルのカメラ映像がスロー再生される。

舟を押し出すカッツェ族の足元が映っている。

足が海水に触れる時に、海水が足を避けるように動いた。

「お祈りの効果ですねぇ。」

「あのお祈りの時だけ発音が良かった。神官の指導かな。」

「そうですねぇ。正しく発音しないとぉナノマシンに正しく伝わらないでしょうからねぇ。」

「ベア族は野太い声だが、カッツェ族は甲高く独特の言葉使いだ。

現地人が魔法を普段使いできないのは、その辺にも理由があるのかもな。」

「ふふふ、にゃぁにゃぁ言ってましたねぇ。かわいい。」

「もう少し話したいな。村の中へ戻ろう。」

「了解。」


彼らは地面を歩くより樹上の枝を伝って移動する方が得意なようだ。

村の中を30分程歩きまわったが、俺たちと会話をしてくれる人は居なかった。

「まいった。ホーク達と合流するか。」

「そうですねぇ。」

(ホーク、聞こえるか。)

(大尉。聞こえます。)

(こちらは、ほとんど収穫なしだ。これから空地に戻る。)

(了解。こちらには3人のお客さんが来ています。)

(そうなのか、確かに反応があるな。なにか聞き出せたか?)

(騎士についての話をパメラが聞いている所です。)

(判った。)

「ホーク達の所には3人のお客さんが来ているそうだ。」

「合流しますかぁ?」

「うん?そのつもりだが。」

「思い過ごしなら良いですけどぉ、今はカッツェ族は3人でぇこちらはホーク中尉とパメラ少尉の2人。

私たちが合流するとぉ、こちらが1人多くなりますぅ。」

そうか、自分達の方が多数であれば、警戒心が薄れて会話ができているのか。

昨夜の村長たちとは6人と6人、一言残して彼らは去った。

浜辺は4人と2人。さらに周囲にカッツェ族が多数。

その後は1人と2人、接近すると逃げられた。

(ホーク、俺たちの合流は見送る。3人の相手はお前たち2人に任せる。)

(了解。)

「と、なると、レイチェル。3人以上のグループは居るか?」

「ふふふ、あっちですよぉ。大尉。」


レイチェルの指した方へ行くと昨夜の白黒が居た。

廻りにいるのは漆黒と黒茶混じりだ。この二人も昨夜見たな。

「おはよう、村長。ちょっと話しをしたいんだが、いいかな。」

「・・・」

反応はしてるが、無言。駄目と言われてないから続けるか。

「改めて名乗るが、俺の名はファルス=カン。月の人だ。

あの天空に浮かぶ月から仲間達とこの地へやって来た。

今は旅の途中で東へ向かう途中だ。」

3人とも頭上の大きな耳を動かしている。

話は聞いているな。

「旅の途中でいろいろな人から話を聞いて、この地の事を教えて貰っている。

ところで、村長、肉は好きか?豚や鳥や、」

「鳥!」

漆黒が喰いついた。

「鳥肉がお好きですか?レイチェルあったよな?」

「少々お待ちください。大型の鳥さんが3羽ほどいますねぇ。はい。」

背嚢をごそごそしていたレイチェルが3羽の鳥を取り出す。

弓の練習を兼ねて狩りをした時の獲物だ。

3人の目が大きく開いた。


「どうですか村長。この鳥肉を食べながら話しませんか。」

「にゃ、にゃんの話が聞きたいんにゃ。」

「この村の名前を教えてくれるかな。」

「村に名前にゃんてにゃい。」

名無しの村か?

「そうか、では村長、あなたのお名前を教えてくれ。」

「わしに名前にゃんてにゃい。」

「なに?では横の二人は?」

「俺にも名前はにゃい。」

「俺もにゃ。」

「ここの皆さんはお名前がないんですか?」

「そうにゃ。あのぅ鳥肉を貰えんかにゃぁ。」

俺はレイチェルを見て頷いた。

レイチェルが3羽の鳥をそれぞれに渡す。

「すごいにゃ、新鮮にゃ。」

「にゃぁ~。」

「あっ、ちょっと待った。」

俺の制止の声を聞かず、漆黒と黒茶混じりが立ち去ってしまった。


白黒が残った。

彼は地面に鳥を置いて、腰から取り出した短剣で鳥を捌き始めた。

その短剣はどうやら平らな石を研磨した物のようだ。

爪の長い指を使って、あっと言う間に皮を剥いでいく。

続いて器用に地面に穴を開けると鳥の内臓をそこに流し込んだ。

土を掛けて埋める。

「ぐるるるるるぅ。」

大きな口を開けてガブゥと喰らいついた。

喰いっぷりはベア族並みだが、生肉だぞ。

声を掛けるのも忘れて見ていると、鳥を半分くらい食べた所で俺と目があった。

しばし動きが止まる。

次の瞬間、彼の姿は樹上にあった。

「あっ、おい、話の続きを。」

逃げられた。

レイチェルを見る。

「ふぅ~。」

彼女は額に手を当て首を左右に振った。

俺の評価が下がったな。


周囲を見渡したが他に人気はない。

「カン大尉。10mほど先で止まりましたぁ。」

「まぁ、追いかけてもダメだろう。しかし、この村には建物がないのか?」

「そうですねぇ。家を建てない?木の上が住処なんでしょうかぁ。」

俺は探知を使って周囲を確認した。

ほとんどが単独で点在している。

東に3人固まっているのはクリスとリサだ。

西はホークとパメラが3人と一緒だ。

話し相手がいないのは俺たちだけか。

海の方は岸へ動き出しているものが何人かいる。

もう漁が終わるのか?

「レイチェル、漁が終わりそうだ。」

「えっ?あらっそうですねぇ。」

「もう一度行ってみよう。」

「はい。」



漁が終わって舟溜りに舟を泊めている彼らに声を掛けたが、対応してくれる者はいなかった。

ここで分かったのは漁の終わりに


「カッツェ族の神オフィーリオ様、我が身に海の水が触れぬようにしていただき、ありがとうございました。

水の神グラール様、我が身に魚の恩恵をお授けくださり、ありがとうございました。」


と、感謝の祈りをするという事だ。

彼らは漁で使ったらしい弓矢と獲物の入った皮袋を持ち、森の中へ入っていった。


「朝の4人にも振られたか。」

「カン大尉、クリス達が戻ってきますよぉ。

ホーク中尉の所にいた3人も今はいませんねぇ。」

「俺たちも合流しよう。」


「ファルス!カッツェ族は狩りが上手いぞ!」

「気配絶ちと間合い詰めの体術が凄いんですよ!あれは凄いです!樹の枝や幹を使って駆けていくんです!凄いですよ!」

クリスとリサが興奮してしゃべり出す。

「はぁ~、ここの子供たちはかわいいですよぉ。ふわっふわっでコロコロでもふもふで。」

「好奇心旺盛で良く見てますね。物知りでいろいろ教えてくれました。」

パメラはキャラ変わってるぞ。

「こちらはさっぱりですよぉ。」

「すまんレイチェル。

でも、カッツェ族がお祈りの形で魔法を使っているのは判っただろ。

あと、名前を持たないって事も。」

「あっ、そうなんですよね。カン大尉。なので私、ここに来た仔たちに名前を付けてあげました。」

「えっ、パメラ、そんな事したのぉ!?」

「だって、話しかける時に不便だから。あの仔たちも喜んでたし。」

「で、で、なんて名付けたのよ。」

「リサ、寄りすぎだ。で、なんて名前よ?」

「そうですよぉ。パメラ、映像見せてよぉ。」

「ええと、はい。この耳先の黒い白い女の子がエステル。

そのお兄さんの首白の黒い子がオルトス。

この灰色の女の子がエステルの友人のチエルです。」

「かわいい~。」


「ホーク。何か分かったか?」

「はい、いろいろと。

まず、漁に出ているのは、お祈りがきちんと言える大人だけだそうです。

そのお祈りは大人に教えて貰うそうです。

皆はお魚が好き、次に鳥肉が好き、トカゲはあまり好きではない、と。

なので、お祈りを覚えて漁ができる大人になるのが夢、だそうです。」

「なるほど、お祈りの魔法の効果は海水で身体を濡らさないこと、それと魚が獲れること、だ。」

「身体が濡れるから雨が嫌い、と言ってましたね。この辺りは突然激しい雨が降るそうです。」

「そうなのか。」

「はい。それと、騎士が来る、と言ってました。」

「南に王国があると聞いた。そこの騎士かな?」

「残念ながらオルトス君の話なので、所属、人数、目的は不明です。銀色の鎧を着ていたと。」

「村長たちと話ができれば聞けるんだが、話をしてくれないからなぁ。」

「駄目でしたか。」

「ああ、鳥肉を3羽持っていかれて得たのが、名前無しってだけだ。」

「こちらもこれ以上は。」

「どうしたもんかなぁ。」



次回34話「子供達」。

子猫です。


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