↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/24

第一話

 瞼の裏が急に明るくなる共に、女の大きな声がした。眠りを覚まされた綾音がもたもたと上体を起こし、薄眼を開けると、制服姿の女たちが机や棚やロッカーを早くも漁っている。女たちの腕には生徒会の腕章が巻かれていて、どうやら彼女らは、生徒会公安部の捜査員たちであるらしかった。

 時刻は五時前。ここは鵬泉女子高等学校の寮の一室の四人部屋。他の三人のルームメイトたちもそれぞれ、二段ベッドの自分の寝床の上に起き直って、やはり、捜査員らの様子を不安そうに眺めている。やがて、綾音たちは部屋の奥へと移動させられ、捜査員らは両のベッドの周りを探りはじめた。

「隊長、こんな物が」

 ハシゴに足を掛けて上段の寝床を調べていた一人が、抑制した静かな声で言った。カバーを外した枕の下から見つけたらしく、何かの紙片をかざしている。受け取った隊長はそれを広げて見るや、時刻かまわず大声を上げた。

「誰のベッドだ!」

「……私のです」

「名前は?」

「高辻綾音」

「クラスは?」

「一年二組」

 綾音はおずおずと答えたが、その紙片には何の心当たりもなかった。何が書かれているのか知らないが、いずれ、いらぬ誤解を受けぬためにも、すぐにそうと伝えなければと思う。しかし、隊長は、その暇を与えることなく、厳然と宣告した。

「一年二組、高辻綾音、校紀紊乱の容疑で逮捕する」

「ちょっ、待って、知らない。なんのことやら、わけがわからない!」

「話は全て、取調室で聞く」

「本当よ、私には何の心当たりもない。待って、どうして、なに、なんなの!」

 綾音の両手に手錠が掛けられた。左右から腕を抱え込まれ、部屋の外へと引きずりだされてゆく。

 廊下には、騒ぎを聞きつけて起き出てきた寮生たちが密集していたが、彼女らは、捜査員らが容疑者を連れて出てくるのを見ると、すべてその身を両の壁際にさっと寄せて並んで、道を開けた。恐怖に表情を引きつらせた綾音は寝間着姿のまま、誰もが緊張して黙って立っているそのあいだを、いつまでも泣き言を繰り返しつつ、みじめに連行されていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。