第69話 先輩の本気
最終クォーター開始。
スコアは26対26。
完全な同点。
体育館の空気が一段と張りつめる。
「ここからだな」
凜空が小さく言う。
蒼も頷く。
「勝負どころってやつだろ」
コートに立つ5人。
悠真、凜空、蒼、遥斗先輩、湊先輩。
全員の表情が変わっていた。
ピーーーッ!
第四クォーター開始。
青嶺高校は最初からペースを上げてくる。
速いパス回し。
しかし崩れない。
むしろ精度がさらに上がっている。
「まだ上げてくるのか……」
蒼が息を呑む。
一瞬の隙。
ゴール下。
シュッ。
26対28。
「切り替え!」
高橋先輩の声が飛ぶ。
攻撃。
悠真がボールを運ぶ。
相手の圧が強い。
凜空へパス。
すぐにカットされそうになる。
「戻せ!」
その瞬間だった。
「こっちだ」
遥斗先輩が声を出す。
一歩前へ。
相手の視線がそちらへ寄る。
その“ズレ”。
湊先輩が見逃さない。
スクリーンで道を作る。
「今!」
悠真が判断する。
外へパス。
「蒼!」
迷いなくシュート。
シュッ!
28対28。
ベンチが一気に沸く。
こむぎが小さく跳ねた。
「入った……!」
だが青嶺高校は崩れない。
すぐにまた静かに攻めてくる。
また1点。
28対30。
時間が減っていく。
残り4分。
「行くぞ」
遥斗先輩が言う。
表情は静かだが、空気が違う。
悠真がボールを持つ。
今までより一歩前へ。
「凜空」
パス。
今度は戻さない。
凜空が仕掛ける。
一人抜く。
二人目が来る。
「遥斗先輩!」
パス。
遥斗先輩は止まらない。
そのまま一歩。
フェイク。
空いた。
シュッ!
ボールがリングを抜ける。
30対30。
「追いついた!」
桃華が声を上げる。
こむぎも拳を握る。
青嶺高校は少しだけ表情を変えた。
初めての“揺れ”。
しかし次の攻撃。
また1点。
30対32。
残り2分。
「ここだ」
湊先輩がつぶやく。
悠真がボールを持つ。
呼吸を整える。
「全員でいくぞ」
凜空、蒼、遥斗先輩、湊先輩。
全員が動く。
ボールが回る。
速い。
でも雑じゃない。
青嶺高校の守備が一瞬遅れる。
その瞬間。
遥斗先輩が空いたスペースを見つける。
「今だ」
パス。
シュッ!
ボールがリングに吸い込まれる。
32対32。
完全に並んだ。
残り1分。
体育館の音が遠くなるほどの緊張。
こむぎは息を止めて見ていた。
(ここから……)
(本当の勝負だ)




