第136話 奇妙な名前
翌日の放課後。
教室の黒板には、昨日の話し合いで出たお化け屋敷の名前がいくつか残されていた。
『恐怖の館』や『呪われた教室』など、さまざまな案が並んでいる。
その中には、こむぎが提案した『真夜中の教室』もあった。
「昨日の続きだけど、今日は名前を決めちゃおうか」
凜空が黒板の前に立ち、クラスメイトたちを見渡す。
「候補は結構出たけど、どれにするか迷うね」
「どれも悪くないんだけどなぁ」
何人かが黒板を見上げながら考え込む。
こむぎも桃華の隣で、並んだ候補を眺めていた。
「うーん……」
なかなか決め手が見つからない。
そんなとき、桃華が何かを思いついたように手を挙げた。
「はい!」
「お、桃華。何かある?」
凜空に促され、桃華は少し身を乗り出す。
「『世にも奇妙なお化け屋敷』っていうのはどう?」
一瞬、教室が静かになった。
けれど、すぐに何人かが反応する。
「おお、なんかいいじゃん!」
「ちょっと長いけど、覚えやすいかも」
「普通のお化け屋敷よりインパクトあるね」
桃華は周りの反応を見て、満足そうに頷いた。
「でしょ? ちょっと不思議で、怖そうな感じもするし!」
「確かに、今回の出し物には合ってるかもな」
凜空も黒板を見ながら考える。
「じゃあ、これを新しい候補に入れようか」
チョークを手に取り、黒板の空いている場所に大きく書き込んだ。
『世にも奇妙なお化け屋敷』
ほかの候補と比べても、ひときわ目立つ文字だった。
「これで候補はそろったかな。みんなはどれがいい?」
凜空の声を合図に、教室のあちこちから意見が飛び交う。
「俺は桃華の案!」
「私も!」
「『真夜中の教室』も雰囲気あって好きだけどな」
こむぎの案を挙げる声もあった。
「こむぎのもいいよね!」
「えっ、ありがとう」
少し照れたように笑うこむぎ。
最終的には、桃華の案を推す声が多く集まった。
「じゃあ、これで決定にしようか」
凜空がそう言うと、教室から拍手が起こる。
「やったー!」
「名前決まったね!」
桃華は嬉しそうに笑い、こむぎの方を振り返った。
「採用されちゃった!」
「おめでとう、桃華」
「ありがと!」
黒板に残った『世にも奇妙なお化け屋敷』の文字。
ようやく出し物の名前が決まり、文化祭の準備も一歩進んだように感じられた。
「これからは、この名前で企画書にも書いていこう」
「はーい!」
凜空が黒板の文字を囲むと、クラスメイトたちはそれぞれ次の準備について話し始めた。
自分たちの出し物に、ちゃんとした名前がついた。
それだけのことなのに、こむぎには少し特別なことのように思えた。
まだ何も完成していない教室。
けれど、文化祭に向けて少しずつ進んでいることは、確かだった。




