第1話 ケモ耳JK転校してきました!
この世界に獣人は存在しない。
少なくとも、公式には。
そして私は——暁月こむぎ。
たぶん、この世界で唯一の獣人だ。
転校初日。
校門の前で、私は一度だけ深呼吸した。
「よし、いつも通りいける」
そう自分に言い聞かせる。
猫耳と尻尾。
それ以外は、普通の女子高生と変わらないはずだ。
……いや、尻尾がある時点で十分普通じゃないけど。
教室の扉を開けた瞬間、空気が止まった。
「転校生の暁月こむぎさんです」
「はーい、よろしくー!」
私はいつも通りのテンションで手を振る。
できるだけ明るく、自然に。
数秒の沈黙のあと、ざわつきが広がった。
「え、なにあれ」
「耳と……しっぽ?」
「コスプレじゃないよね?」
「本物だよー、多分!」
軽く返すと、さらに騒がしくなる。
視線が痛いほど集まる。
珍しい、じゃない。
“初めて見る存在”として見られている。
(やっぱり、全部見えてるよねこれ)
猫耳だけじゃない。
尻尾まで、しっかり注目されている。
席に着こうとしたとき、後ろから声がした。
「それ、本当に生えてるの?」
振り向くと、男子が一人。
好奇心と戸惑いが混ざった目をしていた。
「獣人って、ほんとにいるの?」
「いるよ。ここに」
私は笑って答える。
その瞬間、尻尾が勝手にふわっと動いた。
「あ、今の見た」
「尻尾動いたぞ」
「やば、本物だって」
クラスが一気にざわつく。
私は机に肘をついて、軽く笑った。
「まあいっか。隠せるもんでもないし」
そう言いながらも、心の中では少しだけ思う。
(どうして私だけなんだろう)
でも同時に、もう一つ。
(ここ、思ったより面白くなりそう)




