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 ぼくはあまりスキルが重要だとは思わない。

 それには、メイドのルミによるものが大きい。



 ぼくは一年前雪山で遭難したのである。そのときはルミと二人きりで、もっと優秀なスキルの人と一緒ならなとがっかりした。

 ルミは【アイテムボックス】という無生物を異空間に収納できるだけの大した事ないスキルである。

 微妙なスキルというのは特別性がなかったり、地味なスキルだ。アイテムボックスは魔道具などで簡単に代用できてしまう。

 だが、アイテムボックスからでてきたスープは信じられないほど温かくおいしく、ルミの献身性や言葉の一つ一つがぼくの彼女への見方を変えたのだ。



 ルミは家族とは不仲で、一時期荒れるようなこともあったらしい。噂というのはどこからか広がる。スキルの不遇生もあいまって、メイドの中でルミの肩身は狭い。

 でも、ルミはぼくにすごく優しいし、いっそ王様になってもらいたいのになと時々思う。

 そういうことをルミに伝えたら「ありがとうございます。でもそれはアレン様が幼く純粋なのでそう感じただけなのです。大人というのはもっと残酷で、見た目でしか判断できないものなのですよ」という闇深い返事が返ってきた。

 確かにルミは若く美人で、胸も大きいので恋愛関係で疎まれたり悪い男に言い寄られたりしたことがあったのかもしれない。



 ぼくを囲むのは、兄弟と、父と、それから無言を貫く数人の使用人だけである。

 ゴチャラカ家の家族というのは、心置きなく話せる相手というより、ライバルで蹴落とすべき対象に過ぎない。

 ゴチャラカ家で出世していく使用人というのは、当主であるソードにどれだけ擦り寄れるかだ。



 唯一絶対的な理解者であるルミはこの場にはいない。

 執事やメイドは家族内のゴタゴタや貴族同士のトラブル、恋愛など、浅ましい話題が大好きだ。すぐに言いふらしてしまう。

 今ぼくを取り囲んでいるのはそういった連中だけであった。



「ねえ、お父様。アレンなんていらないわ。平民に戻してしまいましょう」



 そう言ったのは、ぼくと同じ銀の髪、蒼い目――だけど随分長髪で、背の高いメリーヌお姉様だ。



「それもそうだな⋯⋯」



 長女であるメリーヌの強気な態度にソードが満足気に頷いた。



「うーん、平民に戻すというのはちょっとやりすぎじゃないかな。あまり外聞もよくない」

「ふむ、ではラッキーはどうするべきだというのだ?」



 長男のラッキーお兄様が答えた。



「どこか辺境に飛ばすなんてどうだろう。俺達に必要なのは実力を示すことだ」

「それならあたしいい場所を知ってるわ」



 メリーヌがすかさず提案した。



「この前準男爵家が潰れて、あたし達の領地に併合されたでしょ。もらえるものはもらっとけって思ったけど、あそこは強力な魔物も多いし、森ばかりで管理も大変だし、余計な世話が増えたってお父様悩んでたじゃない? あそこなんてどうかしら」

「ふむ、メビウスの森とその一帯か」



 ソードが顎に手を当てて思案した。



「素晴らしいアイデアだ。森一つ治められる軟弱者はゴチャラカ家にはいらぬ。アレン、おまえを勘当する! メビウスの森へ旅立つがいい! このソードが許可するまで二度と城へ入ることは許可しない。さあ、出ていくのだ!」

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