339話
なんだか少々、気が削がれた結果になったカッチャだが、とりあえずひと口。うーん、美味い。
「で、話の続き。なんで話があると思った?」
甘いコーヒーを挟んで苦めの会話。喉を通過する熱い液体の味。
同様にシシーもラテを飲む。ゆったり。この時間を楽しむように。
「なに、ただの勘だ。間違っていたらすまないね。だが、結構当たるんだよ俺の勘は。そうだね、アニエルカさんのように俺は嘘を見破ることはできない。身構えなくてもいいし、なんだったら嘘を答えてもらってもいい」
最初は緊張に支配されていたカッチャだったが、少しずつ怒り、のような濁った感情が混じってくる。
「随分と自信のありそうな勘とやらね。残念ながらハズレだわ。それにあったとしても、あんたにメリットはないはずよ。優等生は他校の知らない生徒にまで手を差し伸べてくれるっての?」
同じくらいの、というかたぶん、同じ年の。そういう人物になにもかも操られているような、粘ついた水の中を泳いでいるような気持ちの悪さ。怒りで中和しないとやってられない。
至極真っ当な意見に対し、シシーは……肯定。
「あぁ、それが俺にとって面白そうならね。デメリットしかなくても、興味を惹かれるならそちらを選ぶさ」
より危険で。より妖しくて。よりヒリつく選択肢。それこそが『生きている』証拠。
ケーニギンクローネでは。誰もが自分に対して伺いを立てるような物腰で。でもそれはつまらなくて。こういった、対等にぶつかってきてくれる人物には。自分自身を委ねてみたくなる。
相手の、その妙に気品のある飲み方をひと通り眺め終わって。カップがソーサーに置かれたタイミングを見計らってカッチャが結論づける。
「退屈、なのね。天才さんには。現実も。勝ったことしかなさそうだもんね」
嫌味を付け足して。別にこの人物が悪いわけじゃないけど。それでも、上から見下ろされてるような。見下されているような態度。たぶん。嫌い。苦手ってか嫌い。




