4話「スライムの効率的倒し方【改】」
学校が終わり、家に帰って来た俺は早速地下ダンジョンに潜る準備を始める。
そういえば昨日は楽しくてつい他のことを考える余裕がなかったが、スライムを倒すのにわざわざ鉄棒を熱して攻撃する必要はないのだ。
いや、長さがあるからスライムの攻撃を安心して避けるのには最適だって昨日考えたけど、時間に無駄が生じるわけ。
それを踏まえてスライムの倒し方を改善しようと思う。
昔テレビで見たのだが、ジェット噴射型スプレー缶にライター等の火を近づけることで、反射する仕組みがある。ただ実際火災等の危険性があるのだ。
それを踏まえ、ジェット噴射型スプレー缶に細いストローを付け、その出先でライターの火を近づける。結果、反射していたスプレーに火が引火して、火炎放射のように変化させることが可能になるわけだ。
一度試したのだけど結構危険だった。手袋をつけても若干熱い。
しかし試した結果、鉄棒で戦うよりも簡単にスライムを倒せることに至れた。
鉄棒の場合は数十回叩くところを、スプレー缶火炎放射だと約3秒もかからないという。
体力を温存することで次のスライムを倒すことにも繋がり、それがお金を稼ぐことにも繋がるので効率的にスライムを倒せると思ったわけだ。
けど、スプレー缶の消費も激しく50体ほどで無くなってしまう。計算はしてないが、ざっくり計算でスプレー缶が500円だとしても、50体で5000円になるので儲けてはいると思う。
何度も計算し、じっくり計算し、俺は改めて理解する。よし、マイナスにならない。
準備が終わり、皮袋にスプレー缶とライターを数個入れた俺は、今日もまた自宅のトイレからの地下ダンジョンへと入ることにする。戸締りは完璧だ!
1階層の地図を見らながら敵マークを探す。近場で数個の敵マークを見つけた俺は、近い方から倒すことにする。
足跡を立てないようにスライムに近づき、スプレー缶を噴射すると同時にライターを点火し、火炎放射へと変化させる。
ーーブウォォォォォォ
凄い勢いで火が炎へ変化し、スライムは跡形もなく無くなり魔石になった。
「完璧だな」
それから俺は順調にスライムを倒しは見つけ倒しは見つけを繰り返していき、倒した数が50体目に到達した。
昨日と今日とでなので、探してから倒すまでに必要な時間がどのくらいかの比較は出来ないものの、開始してから1時間ほどで50体を倒しているので、問題ないと思っている。
1時間で50体倒して、日本円換算だと5000円になる。バイトじゃ1時間にこんな大金を稼ぐのは不可能だ。
なんといっても身体がしんどいと思うことがないので、このまま何時間でもスライムを倒し続けられそうだと身体が思っているわけで。まあ、休憩も大切なのでここらで休憩はするのだが。
1階層で休憩するのは流石に落ち着かないので地下ダンジョンホームに戻った。ただ、スライム50体分の魔石は換金しなかった。
理由としては、しっかり100体倒した上で100個一気に換金したいだけだ。単なる自己満だな。
そういえば学校の帰りに銀行に寄って通帳を更新して来た。更新直後にも貯金額は確認したんだが、改めて確認してみると夢なんじゃないかと疑ってしまう。いや、夢なのかもしれない。なんせ今日はクリスマスだし。
そもそも今の状況を受け入れてしまっている俺も結構やばいと思う。非日常ではあるが、妙に安定しているというか。頭や身体が拒否していないというか……いや考えるのはやめておこう。
手に持った通帳に記されている、7万円という貯金額。世の一般で考えれば全くもって大金じゃないだろうが、学生でお金も碌にない俺からすればもの凄く大金だ。
仮にも毎日1万円稼ぐとして、それを1週間続ければ7万円、1ヶ月なら30万円近くに上る。その日の体調や地下ダンジョンに使う時間でもある程度の差は出てくると思うが、基本的に5000円から1万円が安定して稼げるわけだ。
これなら、時間がかかりそうだった施設へのお金の返済もすぐに可能になりそうだし、なんならお世話になった分として施設の改装、俺の家の改装だって夢じゃなさそう。あ、でも、トイレを見られるのは流石にまずいから家の改装は不可能そう。
自分でやるしかないのかもしれないけど……まあいつかは地下ダンジョンで使うものを自分でDIYする日が来るかもしれない。分からないけど。
そんなことに胸を躍らせつつも、休憩を終わらせた俺は再び1階層へと足を踏み入れる。
地図を見ながらスライムはどこだと探していると、急に目の前にスライムが現れた。
今までにないパターンだったものの、復活したばかりのスライムは俺に気が付いてない様子でプリンのようにポヨンと動いている。
俺はその先を逃さずに、前半戦と同様の倒し方でスムーズにスライムを倒すことに成功した。
「ん? なんだこれ」
スライムの消滅と同時に現れたのはいつものように魔石(極小)ではなく、四角い形をしたよく分からないものだった。色はスライムのような青色で、スライムそのものをイメージしてしまう。
丸くはないが、青色なのでイメージしてしまうだけ。ものはしっかりと四角い。
「どうしようかな」
魔石だったら何回も触り慣れてるから何も気にせず触れるのだが、目の前にあるのは得体の知れない四角い物体。透明でもないので、物体だとは思われるものの、実際は分からないのが現状だ。
そういえば、
「最初のチュートリアルみたいに説明とかしてくれないのかな」
そう。地下ダンジョンに足を踏み入れた時に出てきた文字。詳しく言うと透明な板の様なものに書いてあったのだが。ただ触れようにも透過しているのか貫通してしまうのだ。
あの文字自体、地下ダンジョンのホームでは出るものの、1階層で出たのは初めてスライムの魔石をゲットした時だけ。初めてで限定すれば、この四角い物体だって初めての部類に俺は入ると思うんだが、どうなるだろうな。
そんなことを考えながら文字が出てくるのを待つが、出てくる気配が無い。
「……持っては帰るか」
決断し、恐る恐る四角い物体に手を近づけていると、俺が求めていた文字は突然現れた。
【失礼。これはスライムジェルです。基本的にモンスターが落とすのは魔石とされていますが、これは素材に分類されるものになります。最初に説明した通り、魔石は換金、素材は武器等の作成に使われます。なので、持ち帰るのが最善でしょう。またモンスターが落とす素材は1種類しか存在しない為、根気強く集めてもスライムはスライムジェルしか落としません。他も同じです】
めっちゃ長いな。しかもなんだろう、日本語が流暢になっている気がする。
そう錯覚するも、文字だからと理解した。喋るわけじゃないし。日本人と外国人が喋る日本語には聞き取りやすさとかが変わるし、外国人と日本人での外国語の聞き取りやすさも変わる。そういうもんなのだと理解しとく。
しかしスライムジェル、か。武器っていう部類の中でイメージされるのは剣や盾、槍等ファンタジー世界特有のものなのだが、それらって鉄等で作られるてるイメージがある。いや、基本は鉄で作られるだろう。
だが、スライムジェル。見た目、めっちゃスライムなんだが、これを部活の素材に使うことは可能なのか?本当に持った帰る必要があるのか?と疑問に思ってしまう。
とりあえず手に取った俺は考えることをやめ、皮袋に放り込んだ。
今日のノルマの残りはあと30体。時刻も18時30分と時間に余裕がある。いつもなら苦に感じるバイトの時間も、地下ダンジョンでは何とも思わないでいる。それよりも、楽しいのだ!
過去に思ったこともない気持ちに心踊らせ、俺は残りの30体を倒し終えた。
そして今日もまた、スライムの魔石(極小)×100個を1万円に換金する。
貯金が潤う。嬉しい気持ちだ!




