34週目.オムカレー
コータからメッセージが来ていた。
1950年代の日本人が魔人領にいるらしい。
それに魔王軍との戦いが控えているらしく、料理は気合を入れるつもりだ。
前回の魔人領では時間のズレが凄かった印象がある。
なのでメッセージが来た日に、すぐに買い出しに行った。
メニューはカレーだ。
1950年代のことを調べたら、戦後で洋食の人気が出始めたみたいだ。
なのでトッピングはオムレツにして、オムカレーだ。
卵を大量に買ったので、もし呼び出しが後ろ倒しになったら最悪だ。
▽ ▽ ▽
火曜日、俺は仕事を処理する。
この間撮影したデータの仮編集をする。
これはできるだけ早めに終わらせたい。
現場では座ってるだけだったが、長時間拘束はさすがにきつかった。
そんなことを考えていると、少しずつ作業が乗ってきた。
タラララランラン♪タラララランラン♪
タブレットが鳴った。
「うわ。このタイミングか。やっぱりズレてるみたいだな」
俺は編集を切り上げ、レッドホーミングのマスクを装着した。
いつもの気絶をするような衝撃に襲われた。
「ディフィバースの世界にようこそ!」
聞きなれた女神の声が聞こえた。
目を開くと和室にいた。
目の前にはユイがいた。
いつもとは違い、龍人族みたいな姿をしている。
「ユーサク!」
「ユイ、なんで龍人族みたいな恰好をしてるの?」
「んーなんでだっけ?」
ユイは俺に質問に首を傾げた。
「コータは?」
「コータはゴフェルさんと訓練してる」
「そうか。じゃあ料理を作っておこうかな」
俺が料理を始めようとすると、ユイの影から何かが出てきた。
コンコーン!
「ソンブラ!?」
俺の目の前には大きくなったソンブラがいた。
お腹の傷が特徴的だったからすぐにわかった。
ソンブラは俺の顔を舐めてくる。
「な、何でソンブラがここに?」
「えーっと、ヤディさんが連れてきたって言ってた」
「ヤディさん?」
新しい登場人物だ。
まあ連れて来れるくらいだから、獣人が住んでいる場所と魔人領は近いのだろう。
「ソンブラ、料理作るから少し離れてて」
コンコーン!
ソンブラは素直に離れた。
「異世界調理!」
俺はすぐにカレーの準備に取り掛かる。
▽ ▽ ▽
稽古を再開していると、ほんのりカレーの匂いがしてきた。
ユーサクが作っているのだろう。
「ゴフェル、ちょっとユイの所に行ってくる。タカを頼んだ」
「ああ。任せろ」
俺はすぐにユイがいる家に向かった。
中に入ると、いい匂いがした。
ユーサクが『異世界調理』を使っているから、空中で大きな鍋をお玉がかき混ぜていた。
「今日はカレー?」
「うん。俺調べだと1950年代にはカレーとかオムレツが一般的になり始めたらしい」
「ほー調べてくれたんだな」
「まあな。まあただのカレーじゃあれだから、オムカレーだ」
ユーサクはそう言いながら、器用にオムレツを作る。
宙に浮いているフライパンも次々とオムレツを作っていく。
「ユーサク、出来るだけユーサクの姿は見せたくない」
「まあそうだろうね」
「だから料理が出来たら俺が預かるよ」
「わかった。次の呼び出しの時も、今回みたいに馴染みがありそうな料理を選んでおく」
「悪いな!」
「問題ないよ」
俺は風魔法で料理を受け取る。
「俺はそろそろ帰るかな」
「ありがとう」
「ちなみにこっちは火曜日。この感じだと次は金曜日に呼ばれる気がする」
「火曜日か。結構ズレてるな。仕事とか平気だったか?」
「そっちは問題ない。何かあったらメッセージを頂戴。一応届いてはいるから」
「わかった」
「じゃあ」
ユーサクはそう言って姿が消えた。
俺はユーサクの作った大量の料理をユイと運んだ。
▽ ▽ ▽
俺は[ログアウト]で戻ってきた。
「これでいいだろう。歴史を改変して、俺とか産まれくなるとか困るからな。あれ?でもコータは異世界の歴史を変えてる?ん?ん?」
タイムパラドックスはどれだけ考えても理解することはできない。
もし俺が日本人2人に会っていても、今いる時代の事象が変わることはないのかもしれない。
2人にタピオカミルクティーを飲ませたらどうなるのか気になったがやめておこう。
「もし次呼ばれたときも魔人領なら、戦闘でコータのサポートできたらいいんだけどな」
俺は数週間触っていなかったダンベルを持ち、筋トレをする。
「もし参戦するなら、『変身』は必須か?いやレッドホーミングの姿のほうが印象に残っちゃうか?」
俺はいろんなことを考えるが、答えは出ない。
「そこら辺はコータに任せるか」
俺はダンベルを置く。
やはりサボってたから続かなかった。
▽ ▽ ▽
カレーの鍋を運んでいると、妖人族達が集まってきた。
「妖人族の分もあるから、皿とかあるなら持ってきてくれ」
「本当ですか!」
「すぐ持ってきます!!」
妖人族達が嬉しそうに皿を取りに行った。
匂いにつられたのか、ゴフェルとタカとシゲがやってきた。
「これはカレーけ?」
「そうだね。オムレツを乗っけたオムカレー」
「オムカレー、初めて聞いたが!」
タカのテンションが少し上がったように感じた。
俺は3人のオムカレーをよそう。
ユイは皿を持ってきた妖人族にカレーを配っている。
タカとシゲが1口食べる。
「お!うめえ!」
「うめえな!」
2人は喜んでいる。
シゲが真剣な顔で俺に質問をしてくる。
「この米、どこの米け?」
「ん?米?さすがにどこ産とかはわかんないな」
「そうですか」
シゲは少し残念そうにカレーを食べ進めた。
俺はソンブラにもカレーを渡す。
コンコーン!
ソンブラは美味しそうに食べていた。




