13週目.牛タン定食
今日の俺はワクワクだ。
最近仕事もスムーズに納品までいけるので、疲れが身体に溜まっていなかった。
超兵器戦隊アームズがコラボしたアプリゲームが爆発的人気が出て、違うコラボのPR動画の発注を受けた。
その仕事がすごい良いお金で、楽な仕事だった。最高だ。
「今日はもう届いてるんだよね」
俺はキッチンに向かった。
「テールスープに漬物、そしてメインの厚切り牛タン。とろろもついて来たから最高すぎだ」
昨日届いたものを確認すると、重要なことに気付いた。
「麦飯ない…」
牛タン定食と言えばの麦飯を忘れてしまった。
「コータには申し訳ないが、白米で我慢してもらおう」
俺は米を炊く準備をした。
「テールスープは温めるだけ、牛タンは焼くだけ。よし!すぐ出せそうだな」
俺はどっちで呼ばれてもいいように、軽い準備だけ済ませておいた。
▽ ▽ ▽
タッタラー♪ダン!ダン!タッタラ―♪ダン!ダン!
音楽が部屋に鳴り響いた。
俺はタブレットを拾い、【スタート】をタップした。
[10秒後プレイ画面に移行します。プレイ時間は1時間。それでは良いバトルを]とディスプレイに表示された。
カウントが進んで0になると、スマホのバトロワゲームのような画面に切り替わった。
画面にはコータとユイとヤリネが映っていた。
「おっ!ヤリネ。久しぶり」
「お、お久しぶりです。ユーサクさんの声がしますけど本当にユーサクさんなんですか?」
ヤリネは不思議そうに銃を覗きこんでいた。
「近いよヤリネ!」
「あっ、すみません」
銃が俺って言われてもすぐには納得できないんだろう。
俺らの会話を見ていたコータが口を開いた。
「2人共、時間ないから行くぞ」
「え?ヤリネも?」
「なんかいろいろするためにレベルを上げたいんだと。一昨日くらいから一緒にモンスターを討伐してるから大丈夫だ」
「はい。コータさんに指導してもらってます」
よく見るとヤリネは頑丈そうなメイスを背負っていた。
「わかった。じゃあ行こう」
俺達は森の奥へ向かった。
2回目だが、俺はそこそこ戦闘がうまくなったと思う。
実はこの操作に似ているゲームをダウンロードして練習していた。
まあチャンピオンは一度も取れたことはないが。
バシュン!
バシュン!
バシュン!
撃ったゴブリンが倒れていく。
「ユーサクすごーい!」
ユイはもの凄く褒めてくれる。
「ありがとう。ユイもさっきの戦闘、強くてかっこよかったよ」
「うん。コータにいろいろ教えてもらってる!」
多分ユイとリアルに戦ったら負けるんだろうな。
ヤリネも不慣れながらもオークくらいなら余裕で倒していた。
「うーん。やっぱりディスプレイだと感覚が分からないから、モンスターがどれだけ強いかわかんないな」
バシュン!
バシュン!
俺はそう言いながらスライムを倒した。
▽ ▽ ▽
俺とヤリネは休憩していた。
体力をまったく消費していない俺は付添みたいなもんだ。
「すみません。ユーサクさん」
「気にしないで。俺もずっと戦ってたら、眼精疲労になる」
「がんせいひろう?」
「目が疲れちゃうってこと」
「は、はあ」
ヤリネは戸惑っていた。
「そういえば最近はどうだったの?」
ヤリネは嬉しそうに口を開いた。
「ラドニーク様のところで勉強をしています」
「勉強?」
「仕事を手伝ったりだとか、お金についてだったりだとか」
「あーなるほど」
「あと相手になめられない方法や、嘘を上手くつく方法とか習ってます」
「ははは。まあ奴隷商をやるには必要かもね」
物騒な授業については詳しく聞かないでおくことにした。
「はい。それに一応ですが部下が出来ました」
「え?」
「まあ私が解放した元奴隷です。私のやりたいことに賛同してくれるものが数人残ってくれました」
「それは良かったね。じゃあだいぶ頑張らないとね」
「はい!」
ヤリネの目はやる気に満ち溢れていた。
「じゃあそろそろ復帰するか」
「はい!」
俺とヤリネはコータの元へ向かった。
▽ ▽ ▽
「うわ!なにそいつ!」
俺はコータとユイの目の前にいるモンスターに驚いた。
「ミノタウロスってやつ?」
「そうだな。なんか肉がうまいらしい」
「え?喰うの?」
モンスターを食べると聞いて俺は驚いた。
「当たり前だろ。この世界の動物はほとんど絶滅してるんだぞ。だから家畜もモンスターなんだよ」
「え?そうなんだ」
「今日は牛タンだし、明日こいつのタンを食って比べてみたいな」
「コータ!私がやってもいい?」
「おう!いいぞ」
ユイは2本のナイフを構えて、ミノタウロスに突っ込んでいった。
「大丈夫なのか?」
俺は心配になりコータに詰め寄った。
「大丈夫見てみな」
ユイを見ると斧を持ったミノタウロスを圧倒していた。
「す、すごい」
「ユイはモンスター相手ならそこそこ戦えるからな」
コータの言い方に違和感を感じた。
「ん?モンスター相手なら?」
「ユイは意思疎通が取れる相手との戦闘がうまくできないんだよ。盗賊とかな」
「え?」
「スキルのせいなのか、過去が原因かわかんないけどな。だからモンスターでも意思疎通が取れるやつは、極力戦わない様にしてるんだ」
「なるほど。そういう理由だったのか」
そんなことを話しているうちにユイはミノタウロスに膝を付けさせていた。
「俺と居てそこそこ強くなっているから、弱い盗賊相手だとなおさら戦えないんだよな。敵意丸出しで、ユイとやり合えるくらい強い奴なら戦えるみたいなんだけどな」
「そうなんだ」
ドゴーン
大きな音が鳴り響いた。
ユイと戦っていたミノタウロスが倒れていた。
「倒したよ!」
「おーすごいよ!」
俺がユイに声をかけた瞬間、タブレットの画面が切り替わった。
[ゲームが終了しました。キル数12]と表示された。
「うわ。時間見てなかった」
俺は次の連絡が来るのを待った。
▽ ▽ ▽
時間は18時を回っていた。
俺はスマホゲームで練習していた。
トゥントゥルルン♪トゥントゥルルン♪
タブレットが鳴った。
「やっとだー」
俺は緑の受話器マークを押してビデオ通話にした。
ディスプレイに映っていたのはヤリネだった。
「ユーサクさん。すみません」
「ん?」
「コータさんとユイちゃんは上位種と戦ってます。なので飯を受け取っておいてくれと」
「なるほど。じゃあ準備してくるね」
「はい。お願いします!」
俺はキッチンに向かった。
テールスープを袋から小鍋に出して加熱。
牛タンは冷蔵庫で解凍していたので、フライパンに入れて焼く。
「すごい分厚いなこの牛タンは。だいぶ買ったから、みんなの分は大盛りだ」
俺は調理が終わったものを器に盛ってテーブルに並べた。
「転送!」
テーブルの上のものが光ってなくなった。
カウントダウンが始まった。
「ヤリネ。どう?美味しそうでしょ」
「はい!これは何の肉ですか?」
「牛の肉だよ。しかも舌」
「え?舌?牛は見たことないですが知っています。美味しいんですか?」
「びっくりすると思うよ」
「楽しみです」
ヤリネはニコニコしていた。
「ヤリネはこれからもレベル上げするの?」
「もう少しレベルが上がったら、いったん止めます」
「奴隷商を作らないとだもんね」
「はい。ラドニーク様に場所は決めてもらい、色街の構想も形になりそうです」
「よかったね」
「部下もとても優秀で、女性も居ますし戦闘できる者も居ます。ですので色街の管理もできると思います」
「ヤリネが奴隷を救っていく姿を早く見たいよ」
「がんばります!」
ヤリネは少し照れくさそうにしていた。
ヤリネと話しているとコータとユイが帰ってきた。
「お疲れ!ご飯は転送しといたから」
「おう!いつもありがとな」
「ユーサクありがとー!」
ディスプレイは真っ暗になった。
「まあそうだよねー。来週何食べるか聞けなかったな」
俺は自分用のテールスープを飲んだ。
「次は麦飯を用意しよ」




