12週目.浜名湖のウナギ
ピピピ!ピピピ!
俺は携帯のアラーム目が覚めた。
特にやることが無い日こそ人間を保てるようにしないとと思い、今日はちゃんと朝に起きるようにした。
年の初めはこういう気分になる。長続きはしないが。
「注文したものが間に合うかな?」
俺はコータとユイの為に注文した物の到着時間が気がかりだった。
「年始だしさすがに届かないか?」
俺はベットに戻ろうとすると、机の上の資料が目に入った。
「うーん。使えるかわからんけど、これ見とくか」
俺は机の上の超兵器戦隊アームズの資料に目を通した。
超兵器戦隊アームズは昨年放送されていた実写のヒーローものだ。
レッドを担当した俳優が奥様や子供に大人気、ピンクを担当したアイドルは男性に大人気。
さらに敵の幹部役をしていたグラビアアイドルや味方のマスコットキャラの声優も大人気だった。
各方面からの人気者集めて出来上がった超兵器戦隊アームズ。
放送終了後もゲームアプリとのコラボやアニメ化やスピンオフなどで今現在も盛り上がっている作品だ。
「えーっとレッドホーミングの銃は…」
俺はパラパラ資料をめくり、目当てのページを見つけた。
「あーこれか」
○ファイアホーミングガン
レッドホーミングの専用武器。炎の力を込めた弾を撃ち出す銃。自動追尾機能が付いている。
銃の右側に大きな傷がついているが、これは生き別れの兄との戦いの際に付いた。
敵幹部のデーモンセイントに奪われた際の黒のカラーリングがある。
「炎の力か。てかなんか動画編集してる時も思ったけど、超兵器戦隊アームズってなかなか変な設定だな」
俺は使える情報がないか、パラパラと資料を見て時間をつぶした。
▽ ▽ ▽
タッタラー♪ダン!ダン!タッタラ―♪ダン!ダン!
謎の音楽が部屋に鳴り響いた。
「思ったより早いな。まだ届いてないんだけど」
俺はタブレットを拾い、【スタート】をタップした。
[10秒後プレイ画面に移行します。プレイ時間は1時間。それでは良いバトルを]とディスプレイに表示された。
カウントが進んで0になると、スマホのバトロワゲームのような画面に切り替わった。
画面にはユイが映っていた。
「ユーサク!見える?」
「見えるよ。ユイは今日もかわいいね」
「いつも褒めてくれてありがとー」
ユイは照れているようだ。
「ユイは最近いろんな人からかわいいって言ってもらえてうれしいよね」
コータの声が聞こえた。
「うん。ヤリネもラドニークさんも言ってくれるからうれしい!」
「そうだな。みんなユイの事が大好きなんだよ」
「私もみんな大好き!」
ユイは本当に天使だった。
「おーい、コータ。姿が見えないんだが」
「あー。今、俺が銃を持ってるんだよ」
手首を捻ったのか、画面ぐるっと回るとコータの顔が映し出された。
「それで呼び出したのは、この銃の性能チェックか?」
「さすがユーサク!だから今日はモンスターが居る森に来てる」
「え?先に試し撃ちじゃないの?」
「いや実践あるのみ!じゃあ移動の練習も兼ねて行くよ」
コータはそういうと銃から手を放したようだ。
「その銃って、どれくらい動けるの?」
「うーん。試してみる」
俺はディスプレイのボタンを押して、いろいろ動かしてみた。
左右前後はもちろん、上下の移動もできるみたいだ。
左側にあるボタンで移動、右側にあるボタンで視点移動ができた。
「どんなかんじ?」
「高さは3m位までの高さまで行けるみたい。あとは比較的自由に動いているように見えた」
「ユーサクすごいよ!」
「ありがとユイ。結構自由なのか、じゃあ撃ってみてもいい?」
「それはモンスターでやろう。じゃあついて来て」
コータとユイは森の奥に走り出した。
俺はタブレットを操作して追いかけた。
5分ほど移動した。
驚いたのはコータとユイの速さだ。
コータが速いのは納得できたが、ユイもしっかり横を走っていた。
異世界の人は身体能力が高いのだろうか?
「ユーサク、いるよ!」
ユイが指差す方向を見ると、そこに居たのは二足歩行のブタだった。
「モンスターだよね?」
「うん。オークだよ」
ユイは俺に説明すると、じーっとオークを見つめた。
「ユイ。どうだ?」
コータはユイに問いかけた。
「うーん。駄目だった」
「わかった。じゃあ倒すよ」
「うん」
ユイは残念そうにうなずいた。
「ユーサクじゃあ攻撃してみてくれ」
「え?俺が?」
「ああ。試し撃ちだ」
「わかった」
俺はオークに狙いを定めて、銃弾のマークをタップした。
ドシュン!
銃声が鳴り、発砲の反動があったように画面が揺れた。
俺はオークを見るが、倒れていなかった。
「なかなか強そうな音と反動だったけど全然効かなかったみたい」
正直、少し悔しかった。
コータとユイの手助けを少しでもできればよかったが、これじゃ無理みたいだ。
「ユーサク?何言ってんの?」
「ん?」
「ユーサクすごーい!」
「え?」
コータがオークのもとに行った。
「すごいよ!」
オークに触れると、オークは倒れた。
近づいて見てみると、オークの眉間に穴が開いていた。
穴の表面は焦げていて、弾は貫通していた。
「弾も貫通してるし、だいぶ威力があるみたい」
「すごーい!」
「当てた自信はあったけど、オークが倒れなかったから威力が弱いのかと思った」
「いやいや。充分威力も強いよ」
「よかったー」
俺は少し安心した。
「じゃあ、ここらへんにいるモンスターをユイとユーサクが交互で倒していこう」
「うん!」
「わかった」
俺はコータについて行った。
▽ ▽ ▽
「コータ。もう時間だ」
「そうか、早いなー。じゃあ夜になったらまた呼ぶから」
「うん。飯はヤリネの分も?」
「ヤリネはラドニークのところだから、俺とユイだけでいいぞ」
「わかった」
「またあとでねー!」
手を振るユイはかわいかった。
タブレットの画面が切り替わった。
[ゲームが終了しました。キル数6]と表示された。
「異世界凄かったなー」
今日はオーク3体・オーガ2体・スライム1体倒した。
ファイアホーミングガンは原作同様の効果があるようだ。
あえて狙いを外してもしっかり当たっていたので追尾効果もあり、炎の力があるから銃痕が焦げていたみたいだ。
威力はオークは1発。オーガは2発で倒した。
コータ曰く、オーガの方が体が硬いらしい。
ユイは毎回、戦闘前にモンスターにテレパシーを送っていた。
意思疎通が可能なら、出来るだけ戦闘をしないのが2人の方針みたいだ。
俺も2人の方針にちゃんと合わせた。
ユイの戦闘能力は思ったよりも高く。
2本のナイフを巧みに扱って戦っていた。
ピンポーン
インターホンが鳴った。
「おっ!間に合ったか」
俺はインターホンに出て、玄関へ向かった。
▽ ▽ ▽
トゥントゥルルン♪トゥントゥルルン♪
タブレットが鳴った。
「待ってました!」
俺は緑の受話器マークを押してビデオ通話にした。
「ユーサク!」
ディスプレイに映っていたのはユイだった。
「お疲れ。あれからモンスターとずっと戦ってたの?」
「うん。何体かお話しできて、仲良くなったよ」
「え?ほんとに」
「うん!」
ユイは嬉しそうに話した。
「コータはそろそろ帰ってくる?」
「うん!」
「じゃあご飯の準備しちゃうね」
「はーい!」
俺はキッチンに向かった。
「今日はわざわざ取り寄せた浜名湖のウナギだ!」
俺は今日届いたウナギの蒲焼を湯煎で温める。
その間に一緒に買った肝焼きをフライパンで炒めて、味付けをする。
ちゃんと肝吸い用にお湯も沸かしている。
「うわーだいぶ肉厚で美味そうだぞ」
出来上がったものを皿に持って行く。
「たれは少しかけて、あとはお好みでだな」
テーブルの上にはうな丼と肝焼きと肝吸い。
そしていつものお茶のペットボトル置いた。
「ユイ!コータ帰ってきた?」
「うん!」
「じゃあ送っちゃうね」
俺はテーブルとテーブル周りにある料理を見た。
「転送!」
テーブルの上のものが光ってなくなった。
カウントダウンが始まった。
「わーいい匂い!」
ユイはウナギの匂いにやられていた。
「タレも送ったから、足らなかったらかけてね」
「うん!コータに言うね」
ユイはよだれが出ていた。
ウナギの匂いの能力はすごい。
「ユイ。来週の金曜日、何食べたい?」
「うーん。食べたことないお肉がいい!」
「食べたことないお肉かー」
俺が悩んでいるとコータがやってきた。
「おー。今日はウナギか!ユーサクのセンスは最高だな」
「良かった」
「来週はあれが食べたいな」
「いや、来週はユイの要望を聞くんだよ!」
「え?どんな?」
「ユイが食べたことないお肉だよ」
「ちょうどいいよ!俺牛タンが食いたい!」
「あー牛タンか。俺も久しく食ってないな。じゃあ牛タン用意しとくよ」
「ほんとか?」
「ああ」
コータは嬉しそうだった。
「冷めないうちに食ってくれよ!」
「おう。いただきまーす!」
「いただきまーす!」
ディスプレイは真っ暗になった。
「あっ。反応見れなかった」
俺は自分用に盛っていたうな丼を食べようとキッチンに向かった。
「やばい。タレ全部送っちゃった」
俺はウナギに元々ついていたタレだけでうな丼を食べた。
「うん。これだけでもうまい」




