35週目.記憶の修繕
目を開くと見慣れた景色だった。
「あれ?なんで俺はベッドで寝てるんだ?」
記憶が曖昧なせいで、すぐに思い出すことができなかった。
「ユーサク」
「ん?」
声がする方を見るとエプロンを付けた女神がいた。
「え?クシカーロ様?ん?クシカーロ?」
頭が痛くなった。
「ユーサク、無理しないで。記憶を修繕したばかりだから」
「記憶の修繕?」
「うん。魔人領で何か思い出したでしょ?」
「…そういえば」
俺は魔人領でのことを思い出した。
「ガジャダとかいう鬼人族とコータの戦いを見て、恐怖を感じて…」
そこからは全く思い出せなかった。
「その後、ユーサクはガシャダを倒したんだよ」
「え?俺が?どうやって…」
「それは…」
クシカーロは困った表情をしている。
「聞きたいことがあると思うんだけど、少しずつ話させて」
「はい」
俺は頷いた。
「まずログアウトしてから丸2日が経ってるの」
「ずっと寝てたんですか?」
「寝てたというよりかは意識が無かった。詳しく言うと記憶を修繕するために意識を無くさせてた」
「その記憶の修繕っていうのは?」
「ゆっくり思い出して。魔人領でのこと」
そう言いながらクシカーロは俺の額に手を当てた。
「えーっと俺とコータがいた。それにクシカーロ様の名前を聞いた…」
「そうだね」
「それとフレイグ?」
俺は初めて聞く名前に心が痛くなった。
「あれ?なんでだ」
何故だかわからないが涙がこぼれてきた。
「うん。少しだけ記憶が戻ったみたいだね」
「俺が忘れてることがあるんですか?」
「うん。少しずつ私が修繕してあげるから安心して」
「はい」
「少しずつにしないとユーサクがつらくなるから」
「わかりました」
「じゃあ、イマルシア王国に聞き覚えはある?」
「イマルシア王国……」
俺はその言葉を聞いて、意識が薄れた。
▽ ▽ ▽
清水さんがやってきた。
「おーい。そこの2人!面白い作戦思いついたってさ」
「お!待ってました」
俺達は仲間が集まっている所へ向かった。
▽ ▽ ▽
「よろしく、優作」
「ああ。どうも」
俺は笑顔で挨拶してくるフレイグに少し苛立ちを覚えた。
「優作は料理得意なんだよね?」
「ああ。まあ趣味程度なら」
「僕は食の神なんだ。優作とはいい相棒になれると思うよ」
「そう?」
「そうだよ!まずは異世界にどんな食材があるか教えてあげるよ」
フレイグは俺の手を引っ張っていった。
▽ ▽ ▽
「おーい!フレイグ!この水を汲んで帰ろう」
「え?なんで?」
「これは多分アルカリ泉だ。これはかん水の代わりになるはず」
「かん水?」
「いいから!あとで美味い異世界料理を食べさせてやるから」
「本当に?」
俺とフレイグは嬉しそう水を汲んだ。
▽ ▽ ▽
「おーいいね」
「だよね。いい物件を買えてよかったよ」
フレイグは自分のことのように喜んでいた。
「すぐに開店するの?」
「いや、今日はパーティで依頼を受けるらしい」
「そっか。じゃあ僕はどうしようかな」
「みんなを呼んで、お店でご飯食べてもいいよ」
「本当に?」
「うん。クシカーロとか浩太がいなかったらやること無さそうだし」
「ははは。そうだね」
フレイグは笑顔で答えた。
▽ ▽ ▽
「優作、無理するなよ」
浩太は俺に気を使って声をかけてくれる。
「大丈夫。宇佐美さんと清水さんと後衛で支援するから」
「うん!任せてよ」
宇佐美さんの笑顔に俺と浩太は見惚れてしまった。
「宇佐美がそういうならいいけど。優作、あんまり宇佐美に迷惑かけるなよ」
「無理言うな。俺の武器これだぞ?」
俺は持っているフライパンを肉叩きに変えてみせる。
「この肉砕の槌でモンスターと戦おうとも思えないよ」
「でもそれって包丁とかにもなるだろ?」
「なるけど、モンスターを倒した包丁で作った料理食べたい?」
「いや。マジで無理」
「だろ」
「ふふふ」
宇佐美さんは俺と浩太の会話を聞いて笑っていた。
俺達は急に恥ずかしくなった。
▽ ▽ ▽
「どう?思い出した?」
「少しだけ。俺とコータはクシカーロと知り合いだったの?」
「……うん」
クシカーロは少し寂しそうに答えた。
「じゃあコータも記憶が無くなってるの?」
「そうだね。コータは自分で思い出さなきゃいけないんだ」
「え?じゃあなんで俺には教えてくれたの」
「それは……」
クシカーロは少し黙った。
「ユーサクに教えなかった未来があまり良くなかったんだ」
「え?」
「ユーサクは記憶を思い出そうと色々行動しちゃうんだ。それが悪い方向に進んじゃって。だからそうならないように少しずつ思い出させることにしたんだ」
クシカーロ様は物凄い数の未来を見たと言っていた。
そのうちの何個かが俺の行動で悪い方向に行くなんて想像もしてなかった。
「その話を聞いてなかったら、俺は宇佐美さんや清水さんに連絡を取ったりしていたと思う」
「だよね」
「2人も記憶が?」
「うん。ないよ」
まさか高校の同級生も関係者だったとは。
「とりあえず今日はここまでね」
「わかった」
「コータには記憶のことを話さないでほしい。多分きっかけがあればすぐに思い出すと思うから」
「わかった」
「偉いね」
クシカーロ様は笑顔で言った。
「お粥作っておいたから」
「え?クシカーロ様が作ったの?」
「そうだよ。私は食の神様でもあるからね。あ!次の金曜日は元の時代に戻ってるからね」
そう言ってクシカーロ様は消えていった。
▽ ▽ ▽
明日は金曜日。
何を作るか悩んだ。
「かん水…」
修繕した記憶でフレイグと話してた。
「かん水ってことはラーメンか。俺って麺からラーメン作ってたの?」
自分の料理知識が想像以上で驚いた。
「作ってみるか」
俺は次回の料理を決めた。




