35週目.vs傲慢③
「こ、ここまで差があるのか?」
私は2対1でデルザムンドにやられている現状が理解できなかった。
龍化した私と魔獣化したサイルバルタンが遊ばれるように倒された。
「本当に醜い獣だな」
魔獣化したサイルバルタンが蹴り飛ばされる。
「がああ!」
「サイルバルタン!」
魔獣化が解け、気絶して倒れてしまった。
デルザムンドは私にゆっくり近づいてくる。
「おい。そろそろ俺の下僕になる気は起きたか?」
「ふざけるな!」
「なら龍人族は皆殺しだ」
そう言いながら私を蹴り飛ばす。
「ラークトがやられたみたいだな。めんどくさい。このままこの島ごと破壊するか」
そう言ってデルザムンドが魔力を体内に貯め始めた。
両手を宙に向けると大量の魔力が空に放たれた。
「な、なにを」
「あ?手始めにこの諸島を破壊するんだよ」
空が光り、雷の槍が大量に降り注いだ。
まさかこんな大規模な魔法をデルザムンドが使えるとは。
私は諦めて目を閉じた。
すると心強い声が聞こえてきた。
「ユイ!魔法なら俺が止める!あのクソ魔王を頼んだ」
「うん」
コータは地面に両手を突き、ユイはデルザムンドに向かって行った。
「お、おい!コータ!ユイが1人で…」
「ああ。大丈夫だ。今のユイは俺よりも強い」
「は?」
「これが終わったら回復してやるから待ってろ」
そういうとコータが地面に魔力を込めてるのを感じた。
「俺だってこういうデカい魔法をバンバン使いたいんだよ!」
地面から大量の石の拳が飛び出して、雷の槍を破壊して行った。
「おお。やばい。魔力すげえ使うな」
ふらつきながらコータは私に近づいて回復魔法をかける。
「コータ。私よりもユイを…」
「あれを見てもそう言えるか?」
「え?」
コータが指差す方向を見ると、デルザムンドが膝をついていた。
「何をしたあああああ!!人族!!!!」
ユイに向かって叫ぶデルザムンド。
「え?パンチだよ?知らないの?」
ユイは素直に答えた。
ユイはデルザムンドを見ると何かを思い出した。
「そういえばさっき私にコータを殺させようとしたね」
「あ?それがなんだあああ?女あああ!!!あの男を殺すのが嫌なのか?では殺せ!!!!」
「嫌だよ」
ユイは小さな拳でデルザムンドに拳骨をする。
するとデルザムンドは地面にめり込んだ。
「どういうことなんだコータ」
「ユイは仲間の力を共有されるんだ。ん?てかサイルバルタンもいるのか?だからか。本当に今のユイは俺達3人でも止めれないかもな」
コータは嬉しそうに笑っている。
私は全然理解が出来なかった。
「ユイ!大丈夫そうか?」
「うん!!平気だよー。なんかすごいことできそう」
「ん?」
空気感が違う2人が現れたせいで、私の情緒がおかしくなりそうだ。
「んー。あ?これとこれかな?」
何かを考えた後、ユイの力が膨大になるのを感じた。
ユイの背中から翼が生え、両手足の獣のように変化した。
変化茶の効果は何日も前に切れていた。
私は何を見ているんだ?
私は説明が欲しくてコータを見る。
「ん?ん?」
コータも理解していないみたいだ。
「人族ガアアアアア!邪魔するなああああ!!!!」
デルザムンドが叫ぶがすぐに空を飛んだユイにかかと落としを食らわされる。
「グガアア!」
「邪魔なのはおじさん!!コータにこの姿を褒めてもらおうとしたのに」
ユイは頬を膨らませていた。
「ゴフェルさん。これは一体」
いつの間にかコータに回復されたサイルバルタンが問いかけてくる。
「私にもわからん」
私はゆっくりと立ち上がって口を開く。
「コータ、ユイ。手柄を奪うつもりはないが、とどめは私に任せてくれないか」
「いいぞ。ユイは?」
「うん。これって手柄なの?」
純粋なユイの質問に私も笑顔になった。
「ゴフェル。ユイに見せたくないから、ちょっと離れる」
「ああ。わかった」
コータがユイを連れて行こうとすると、ユイがコータを掴み空に飛んで行った。
「コータ。凄い?すごいよね?」
「あ、ああ。怖いから速度を落とそうか」
サイルバルタンはその様子を見て唖然としている。
▽ ▽ ▽
ゴフェルはデルザムンドをしっかり殺したようだ。
怪我人はユナダラが全員運び、魔王軍との戦いは終わった。
今回は色々とまずかった。
正直、この世界で苦戦するのは邪神関係だけだと思っていた。
しかし魔王にもラークトにもガシャダにも劣勢になってしまった。
ユイが勇者候補としての素質なのか、バカみたいに強くなってくれたおかげでどうにか倒せた。
俺も戦い方とかを考え直さないといけない。
「大丈夫か?」
「ああ。ユイは?」
ゴフェルは俺がおんぶしているユイを見て問いかけた。
「疲れて寝たみたいだ」
「ユイは本当に強いな」
「ああ。俺もあそこまでとは知らなかった。たぶん俺達負けるぞ」
「だろうな」
ゴフェルの顔が少し引きつっていた。
「とりあえず帰るか?」
「そうだな。ヤディ!」
「ゴフェル様。帰る前にご報告が」
「ん?どうした」
ヤディの声が少し暗いように感じた。
「イヅク様がお亡くなりになりました」
「な!」
「傷が深かったのと、私達の移動が遅れてしまったことに原因があると思われます。申し訳ありません」
「くっ。お前達の責任ではない。すぐに妖人族の集落に戻ろう。今後のことも相談しないといけない」
「はい。お連れします」
俺達はヤディの影に包まれて移動した。
▽ ▽ ▽
魔王軍との戦いから数日経った。
まだ妖人族達の空気は暗い。
妖人族の長であるイヅクの死もあるが、タカとシゲが元の世界に帰ったことも原因だろう。
魔王軍との戦いの翌日、影人族から鳥居が起動したと連絡が来た。
タカとシゲは少し怪我をしていたものの、あっさり帰って行った。
兄貴と慕ってくれていた妖人族に言葉をかけ、次の長になるであろうツルギには気合の入る言葉をかけてあげていた。
「コータ。今日は石の日だよ」
「あーたぶんそろそろあいつが来る」
「クシカーロちゃん?」
「そうだよー」
噂をしていたら本人が現れた。
「お疲れ!大変だったね」
「ああ。過去最高に大変だった」
「ユイちゃんがいてくれてよかったね」
「そうだな。そういえばユーサクは平気なのか?」
「あーうん」
「おい!」
クシカーロは何かをごまかそうとしている。
「その話はまた今度!」
「は?」
「お別れもあるだろうから、30分後に2人を元の時代に戻すよ」
「おい!」
そう言ってクシカーロは消えていった。




