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平成前期・チケ取りバトル!!  作者: 鑑光あみか


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16/20

チケット16枚目 最前列レポート

 コンサート当日がやってきました。

 運は使い果たしましたが、まだなんとか生きています。


 開場してグッズ購入をして、今は開演のその前。ぞくぞくとファンたちが自分の席に着いているときだ。


 音楽堂組の私たちは一列中に座っている。

 右に視線を向けるとJLサービスの人たち。ポップレコードに並んでた複数買いの専務もちゃっかりそこにいる。強い。

 左に視線を向ける。明らかにキョドりながら席に座る人たち。前列が慣れていないのがわかる。電話で取れた運のいい人たちかな?

 前に視線を向ける。なんの遮るものもなくそこに存在しているステージ。


 責任を感じる。

 この最前列の私たちがメンバーたちに、この県の印象を与えるんだ。

 今日までの命のつもりで、討ち死にする勢いでノらないと!!



 そして開演。

 前奏の大音量、ファンの絶叫、緞帳(どんちょう)が巻き上がり、光の中に等身大の彼らが現れる。


 彼らまで本当になにも遮るものがなく、その場で彼らは歌い、奏で、走る。

 すげえ、なんだこれ。

 でっかいテレビ見てるのかな……?


 なにが違うって、他のファンが見えない。

 二列目でも後ろのほうでも自分の前には自分よりも手練(てだ)れなファンがいて、この歌のここで拳をあげたり! ここで手拍子を入れたり! と、あー私今みんなとタイミングズレたわ、とかへーみんなここで拳あげるんだーとか……

 そんなふうに私はいつも呑気にノっていた。


 しかし今、参考に出来るファン仲間が全く見えない状態。

 今の私の拳のタイミングおかしくなかった? とか。

 ああ、新しい歌だ。静かな歌だ。じっとしてていいんかな……? とか。

 いや別に好きに聴いていいんだけどさ。

 

 私は今、はたして一列目として恥ずかしくない動きができているのか!!!???


 最前列のめちゃくちゃな感動と興奮。

 同時に私は今最前列のファンとして完璧な姿を背後の皆に晒すことができているのか、そんな葛藤。


 すげー楽しい。

 すげー興奮。

 でも、でも、私は今、大丈夫なのか??

 恥ずかしいタイミングで拳あげてない????



 無事、トラブルもなく大盛り上がりのまま閉演しました。


「凄かった! 楽しかったね!」

「初の一列目、どうだった?」

「はい……! 感動しました!!」


 音楽堂組のお姉さんたちと喜びを語り合う私。

 もちろんこの感動は嘘偽りのないものだ。

 中学生のときの体育館コンサートの、運良く取れた花道からの一列目のあの日からずっと持ち続けていた夢が叶ったのだから。


 夢は叶えた。

 自力で長年の夢を勝ち取った。

 だからこそ、私は心から、自身に恥じることなく言おう!


 二徹でええわ。

※ 一列目として恥ずかしくない動き


 そんなもんありません。

 別に座って聴いててもいいです。

 でも私のような席順にこだわるヤツは今まで一列目二列目でまったり座って聴いている人を憎しみの視線で見ていたので……その報いが来たと思ってください。

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