4話 捜索 ~3階 カフェテリア~
屋上を出た僕達が向かったのは3階だった。
手近な部屋に入る。
そこはカフェテリアだった。
「あ、いらっしゃいませ……あ……あの、えと……なんつ、って……ね?」
入った途端にそう声を掛けてきたのは、兎沢マシロだった。
彼は最初は飛び切りの笑顔だったが、すぐに引き攣ったような顔になり、そのまま僕達をじっと見て固まっていた。
「マシロくん、どうしてここに?」
「あ、その、えっと、なんか休憩したいなー、飲み物飲みたいなー、って思ってね。み、みんなも飲む?」
おずおずとした様子でマシロくんはそう訊ねてくる。
「飲む~」
「俺っち大人だからカ―フィーね」
「発音が変ですよ猿っころ」
「猿っころって初めて聞いたな。なにがころなんだろうか」
「とりあえず何か頂こうよ。僕も手伝うよ、マシロくん」
「あ、うん。ありがとう、コータさん」
「で、結局みんな何を飲むの?」
騒がしくしている4人に何が飲みたいのかを聞く。
「かーふぃー」
「果実系のジュース~」
「普通のお茶が欲しいかな」
「紅茶があったら頂きたいです」
「りょーかい」
後ろでわちゃわちゃしているのを遠くで聞きながら、僕はマシロくんとカフェの奥のキッチンに向かう。
「というかマシロくん、カフェの店員似合うね、ここに来る前にバイトとかしていたの?」
「え? あ、そうだよ! すごい! 名探偵かな?」
「自称名探偵は他にいるけどね」
そうなんだーと笑うマシロくん。
最初のビクビクした様子は今は全く見られない。
「条件反射でいらっしゃいませー、って言うくらいにはバイトしてたんだよね。だからどこか懐かしいというかなんというか、落ち着くんだよね、ここ」
「そういうものなんだね。というか食堂もありそうなのに、カフェテリアがあるんだね」
「そこはかとなく、それは現代っぽいよね」
確かに言われてみればそうだ。
駅前のビルの中とかにカフェテリアがテナントとして入っているような、そんな感じだろう。3階にあるということもあるし。
僕達は厨房に入る。
「さっきクウギョに訊いたら、ここにあるものは勝手に使っても処刑されないってさ」
「処刑って……」
そんなことで処刑されたらたまったものではないな、と思いながら辺りを見回す。
「へー、軽食もあるっぽいね」
「さすがに本格的な料理を作るような設備ではないみたいなんだよね。それは食堂の方なのかな」
「マシロくんはもう食堂に行ったの?」
「いや、まだだよ。コータさんは?」
「こっちもまだだね」
そう言いながらてきぱきとマシロくんは飲み物を準備する。
「えっと、コーヒーはドリップしたのでよくて、お茶と紅茶も本格的じゃなくてもいっか。果実系のジュースは冷蔵庫の中にあったはずだし……あ、コータさんは何にする?」
「僕はお茶か紅茶にしようかな」
「じゃあお湯沸かしてください。茶葉とティーセットを用意するね」
「りょーかい」
マシロくんの指示で動く。
数分後。
あっという間に準備が出来た。
「棚の中にあったクッキーとかも一緒に持っていこうか」
「そうだね。小休憩しようよ、マシロくんも」
「え?」
マシロくんが目を丸くする。
「ぼ、ぼくも一緒にお茶していいの?」
「もちろんだよ。むしろ逆にマシロくんだけ省いたら美味しい飲み物も美味しくなくなっちゃうよ」
「あ、ありがとうございます!」
マシロくんは頭を下げる。
「ぼく、知らない人がいっぱいでどうしていいか分からなくって……でも独りは嫌だったので……めっちゃ嬉しいです!」
顔をぱぁっと明るくさせる。
やはり兎だから寂しいと死んでしまうのだろうか。
なんてことは口にはせず僕達は騒がしい4人の元へと戻り。
しばらくの間、飲み物を飲みながらゆっくりと雑談に花を咲かせたのだった。




