2話 捜索 ~4階 死体安置室~
最初に向かったのは同じ4階の他の部屋だった。
4階には円卓以外には、もう一つしか部屋がなかった。
そこはだだっ広い空間に、何やら人が一人くらい入るような大きさのカプセル状のものが陳列されていた部屋だった。
心なしか部屋の温度も低い気がする。
「ねえコータ。このカプセルみたいなやつさ、なんか数がきな臭くない?」
「数がきな臭い?」
試しに数えてみると、カプセルの数は13個あった。
13。
その数は、僕達の人数と同じだ。
「まさかこれって……」
「死体安置室ですよ」
そう答えたのはクウギョだった。
いつの間にか部屋に入ってきており、ふよふよと浮いている。
「あ、クウギョだ~聞きたいことがあったんだ~」
「なんでしょう、猪瀬様」
「ここってどこなの? 現実?」
ピンポイントであの場で聞きたかったことをユウリくんは質問してくれた。
「まずここがどこなのか、という質問ですが、ここは宴を行うために皆様に集まっていただいた建物、としか言いようがありませんね」
「うーん。中途半端~。あ、因みに建物の見た目はどんな感じなの?」
「見た目については石造りの4階建ての建物、というだけで上手く言い表すことができないのですが……そうですね、皆様の概念に一番近いものだと、城、になるでしょうか。真ん中が中庭で吹き抜けになっていますので、そこから見てもらった方が早いかもしれません」
中庭があるのか。あとで行ってみよう。
「現実かそうじゃないか、という質問ですが、そちらについては微妙なラインですね。何せ皆様、能力なんて現実世界に起こりえないじゃないですか」
確かにそうか。
だったらこれは現実ではない、ということか。
「かといって仮想空間であるとか、そういうものではありません。皆様の肉体は存在しますし、能力にかかわるもの以外はきちんと現実の物理法則に従ったものになります。また痛覚もきちんとあります。何より――死ねば、死にます」
死ねば死ぬ。
その言葉が何よりも恐ろしかった。
結局、現実だろうが何だろうがそこが変わらないのならば何も違いはない。
「だから外に出ようなんて思わないでくださいね。扉は開かないですし、屋上越しに飛び立とうとしても外に出られ――ああ、すみません。
今、別の方が屋上伝いに外に出ようとしているみたいで、一番近くにいるこのワタクシが注意をしに行かなくてはいけないので、申し訳ありませんがこれにて失礼します。全く人手が足らなくて困りますね」
そう言いながらクウギョは部屋を出ていった。
人手じゃなくて魚手じゃないか、なんてくだらないことを思っていたら
「今の言葉でさ、クウギョが複数いるって分かったよね」
「え?」
ユウリくんが顎に手を当てる。
「最初にちょっと違うなー、って思ったのが、この部屋に来たことだったんだよね。だって円卓の死体処理って時間掛かるじゃない。それが終わる前にこの部屋に来るなんて、と思ってさ」
クウギョがどうやって清掃しているのかは不明だが、持ち場を離れてこの部屋に来るのは確かに違和感がある。
「まあここが死体安置室だからアユムの死体の置き場を確認しにきたのかな~とも思ったけど、でもさっきの言葉で『一番近くにいるこのワタクシ』ってのがあったから、複数いるのは確定したね」
「あ、確かに!」
一人、いや一匹だけだったら『一番近く』とはならないだろう。
「すごいなユウリくん……まさか、ここまで狙った質問だったの?」
「え? あー、うん。その通り!」
違うんだな。偶然に引き出しただけなのか。
だとしても結構有意義な情報を引き出せたみたいだ。
「じゃ、他に何もなさそうだし次行こうか」
「あ、うん」
僕達は死体安置室から去る。
「……」
ふと振り返り、僕は思う。
ここに入らないように――死なないようにせねば、と。




