10話 捜索 ~1階 プール~
その後。
一通り娯楽室を調べ、僕達は部屋を退出した。
その後、僕達が次に入った場所は、室内プールだった。
「大浴場だと思ったらまさかプールだとはねー」
ユウリくんの言う通りだった。
部屋の入り口には何も書いておらず、中に入ってみたところ脱衣所がそこにはあった。
とりあえず中を覗いてみようか、ということで服を着たまま中に入ってみたのだ。
更衣室から先の扉を開けた途端に、独特の塩素の匂いが鼻を突いた、というのが今の状態だ。
かなり大きな面積のプールがあった。
まるでテレビで見た競技用のように。
と、僕達はすぐに、プールで泳いでいた人物に気が付いた。
その人はこちら側に泳いだ後、プールから上がってきた。
「あ? 何しているんだお前ら?」
龍崎チハヤだった。
粗暴なことをしそうな風貌と、実際にクウギョに反発していた様子も見せていたことで、僕達は委縮する。
だが1人だけ、物怖じせずに答える人がいた。
「建物の捜索だよー。チハヤはなんで泳いでいるのー?」
「泳ぐのに理由が必要なのかよ」
ユウリくんをチハヤくんは睨みつける。
だが臆せずユウリくんは続ける。
「だってさっきあんなことがあったばかりじゃん。プールがあっても、よし泳ごう、ってならなくないんじゃないー?」
「……」
チハヤくんは目つきを鋭くする。
が、すぐにため息を吐いて、頭を掻く。
「……ナギサのやつに言われたんだよ。『クウギョに無駄に逆らって処刑されたら困るし、少しは頭を冷やしたらどうだ』ってな」
「ナギサって、蛇見ナギサくんのこと?」
「それ以外にナギサってやつはいねえだろうがよ」
思わず問うてしまった僕にも、チハヤくんは答えてくれた。
案外いい人かもしれない。
……これでいい人だと思うのは早計か。不良が犬を助けるバイアスみたいなのかもしれない。
「ねえねえ、円卓でもそうだったけど、チハヤとナギサって友達なの~?」
「ん、ああ、ダチだな。昔からのな」
照れもせずにチハヤくんは言う。
「ということは、ここに来る前から知り合いだったってことなんだねー。他に知っている人っていた?」
「俺様はナギサだけだな。つうかお前らはどうなんだよ?」
そう問い返されて僕達は答える。
「僕は根津くんだけだよ」
「ユウリは誰もいないよ。みんな初見だねー」
「残りのお前らは?」
ずっと黙っていた3人もそこで声をあげる。
「お、俺っちは誰もいないっす」
「自分も皆さんとは初めまして、ですね」
「ボクも知り合いはいなかったよ」
「じゃあ俺様とナギサ、コータと根津……名前なんだっけ、忘れたな。それの4人だけしかいねえってことか」
今のところは、というのが頭につく。
ただ、見た感じは残りの人達が知り合いがいそうな態度には見えなかった。
というかサスケくんとヒナタくんが知り合いじゃなかった方が意外だった。
「まあそれは置いといて、そういえばさー」
話をぶった切ってユウリくんが再び問う。
「チハヤって今、パンツで泳いでいるの?」
「……あ?」
「な、何を言っているのユウリくん!?」
唐突な変な質問に僕は焦る。
ユウリくんは、にへら、と笑う。
「だってさー、ユウリ達、急に連れてこられたんだから水着なんて持ってきていないじゃん。だったら今着ているのがパンツとしか考えられないじゃないか」
「おめーにはこれがパンツに見えるのかよ」
そう言われてチハヤくんの履いているものを見る。
撥水もしているし、普通のトランクス型の水着に見えた。
「これは倉庫にあったんだよ。そこから持ってきた普通の水着だ」
「倉庫があるんだー? どこにー?」
「地下だよ。因みにクウギョに中にあるものは持っていっても問題ねえって聞いてるから盗んだわけじゃねえぞ」
拳を握って骨をぽきぽきと鳴らしながらそう言うチハヤくんに
「そ、そんなこと思っていないっすよ」
と、サスケくんが否定する。
……口にするってことは、ちょっと思っていたってことだぞ……
「倉庫があるんだね。じゃあ次はそこに行ってみるよ。ありがとねー」
ユウリくんがそう言ってプールから出ていく。
その場に留まり続ける意味もなかったので、僕達も彼についていく形で、プールから退出していった。




